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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 前
60/520

西の沼

 ……


 毎度の如く南門を抜け、駆け出すカンイチ。犬達も本来の姿を取り戻したように駆けだす。

 もちろん、スラムのわきを堂々と通っていく。スラムの連中も我関せず。チラリと視線を向けるがいつもの事かと特に関心は無し。


 とりあえず魔猪と遭遇した林までやってきた。ここを拠点にするつもりだ。

 木漏れ日の中、周辺を散策。特に大猪の足跡を探す。彼らの通り道であれば”休憩所”として使用できないからだ。ドラゴンフライの避難場にも都合がいい。

 

 「変わったことも無し。この前の大猪は偶々近くにおったのか……いや、あれだけ大きな音やら振動(ドラゴンフライが空中分解したときの)させて、餌撒きゃ様子見にも来るだろうさ。……普通は逃げるんじゃがのぉ」 

 地球の常識は通用しない。この世界。あまりにも人は非力だ。猪、トンボ対策に投げ縄ボーラを設置し、狩猟へと向かう。


 そろりそろりと沼に近づくカンイチ。今の所、上空にドラゴンフライはいないようだ。

 「さて、カエルはどこにいるんじゃか……」

 と、カエルを探す。が、”プ~~~~ん” そう、カンイチの周りには、やぶ蚊、しかも大きさは500円玉くらいはあろうか。隙あらばと狙っている。

 「うぉお! 何じゃこれは! 蚊か? お! そういえば丁度いいものが……」

 ”収納”からヨモギを出し、揉んで露出部に塗りたくる。思惑通り、蚊はカンイチの周りから離れていく。

 「おほぅ! いい香りじゃなぁ。これはいい。帰りも刈って行こう。差し穂にもなるの。庭先に作るのもありかもしれん」

 

 沼に沿って歩く。葦やらが生えてるところもあるが、概ね、視界は良い。

 沼を覗く。異臭はしないが、水の色がすごい。墨のように黒い。

 

 「確か、”黒沼”とか言っておったな。納得の黒さじゃ。こりゃ湧き水か? 堆積物からの抽出か? 凄い色じゃのぉ。ぅうん?」

 

 10mくらい先にいた!

 「これまたデカいのぉ。この世界の生物は皆デカいのかの?」

 カンイチの視線の先には1m四方の物体が。もちろんカエルだが足を延ばせはどれだけあるか。

 「さて……どうやって狩るかな。!」

 カエルの近くの水面が泡立ち、

 ”ざばぁああ!”

 これまた5~6mはあろう大ナマズが大口を開け水中より飛び出してきた。その勢いのままカエルに肉薄する。

 カエルもナマズの気配を察してか驚異的なジャンプで躱す。

 今回は空振りだったのか、ずるずると体をくねらせ沼に戻っていく大ナマズ。

 

 「あれが鎧ナマズじゃったか? なんじゃか……のぉ」

 周りは化物ばかり。もうカンイチはうんざりだ。

 先ほどのナマズのアタックにより、何匹かのカエルが池から離れた。

 

 「狙うのなら……あれかの」

 沼から遠い一匹のカエルに狙いをつけ、じりじりと近づく。キングフロッグ、日本で言うところの特大トノサマカエルだ。

 銃剣を取り出し、気合一発とびかかる! ”ブスリ!” とはいかず、弾力のある皮と筋肉で弾かれる。

 「む! 刺さらんぞ! くそ! もう一発! うん?」

 カエルは逃げると思ったが、カンイチをその感情のない瞳で睨みつける。

 ”げこぉ”

 と一鳴き! 高く飛び跳ね、大口を開け、カンイチの頭上から降ってくる。

 「な! ワシを食うつもりか! この!」

 

 ”ずぅどん!”

 

 放ったスラッグ弾がカエルの額に当たり、その巨体を吹き飛ばす! が、流線形の体形か、スベスベな弾力のある皮膚か、体表を覆う粘膜か。ずるりと弾丸を後方に逸らす。

 

 ”げごぉ!”

 痛かったのか、熱かったのか、その感情の無い目ではわからないが、踵を返し、池の方に跳ねていった。

 

 「逃したのぉ。しっかし弾も効かんとはな。さて……どうしたものか」

 

 ”ぅぅおふ!” ”わぉふ!”

 クマとハナが、一匹のキングフロックに狙いをつける。

 

 「うん? 行くのか? よし! 任せた!」

 ””ぅうおふ!!”

 新たな標的の一匹にクマたちが襲い掛かる。

 ”げこ!”

 カエルの大口を開けた食らいつきを、さっと躱し、カエルの足首に食らいつくクマたち。

 ”ぼきり!” ”ばきり!”

 と、足首が砕ける音が響く。慌てて池の方に逃げようにもクマたちの力でズルズルと引き摺られれる。地面を蹴ろうにも力が伝わらないようだ。昔のポンプで遊ぶおもちゃのゴム製のカエルようにピコピコするのみ。

 逃げられはしない。が、とどめを刺さねば”収納”にも入らない。どうしたものかと思案。

 

 「よし、そうじゃ! こいつなら」

 ”収納”から鶴嘴つるはしを取り出し、カエルの頭部に叩きつける。

 ”すこん!”

 ”げっこぉーー!”

 何の抵抗も無く頭部を貫き、大カエルを地面に縫い付ける。

 「なんとまぁ。こんなに容易く刺さるとは……”農業EX ”の効果かの」

 そもそもが、鶴嘴は”農具”なのかという話もあるが、開墾やら、放置された田畑を耕すにはこれ以上便利な道具はない。なら、”農具”だなと納得するカンイチ。

 耕したのは大地ではなく、大ガエルの頭頂だったが

 

 ”ずっぽ!”と鶴嘴を引き抜き、カエルを”収納”にイン。

 「よし! この調子で行くかの!」

 ”ぅぉふ!” ”わふ!”

 

 ……。


 「ふぃぃ……。調子に乗って少々、張り切りすぎたかの」

 収納の中には大ガエルが32匹。十分以上の数だろう。

 少し離れた林の休憩所に移動。休憩にする。水筒の水を飲み、軽く腹に入れる。クマたちには魔猪肉を。

 

 「本当に美味そうに食うのぉ。よし、よし。これだけ獲れば大カエルはもうよかろう。折角じゃし、あのナマズも捕りたい所じゃな……水中や力比べじゃ敵わんじゃろが。ふむ……試してみるか……」


 死んだカエルの足首をロープで括り、木と繋ぐ。そしてナマズが這摺った最高到達点付近に設置。

 「これで良いじゃろ。後は待つのみじゃな!」

 暫くすると他のカエルたちも再び集まり、ナマズが襲う前の状況に。

 

 ”ざばぁ!”

 「きた!」

 大口を開けたナマズ。慌てて逃げるカエル。今回も空振り。が、目の前に逃げないカエルが。ずりずりと近づき、食らいついた。

 

 「大した食い意地じゃな。おっと、感心してる暇はないな」

 食いつき、池に帰ろうと方向転換。が、ロープのおかげで釣り上げられた状態だ。直ぐにロープが切れるとは思わないが、ここは異世界。鋭い歯が付いているかも知れない。

 急いでナマズの下へ駆け寄るカンイチ。

 が、途中、蛙がとびかかって来た。鶴嘴で迎撃、地面に縫い付ける。とりあえずそのままに、新しい鶴嘴を出してナマズの下に。

 

 「おう? 鎧ナマズとはよくいったものじゃ! どれ!」

 

 目の前のナマズ。レッドテールキャットとプレコを足して2で割ったような形状だ。まさに、ナマズが鎧を着ているようだ。鱗が進化したのであろうが、大きな殻、甲殻といって良いだろう。つなぎ目も重なっており、並の刃物では歯が立たないだろう。

 

 ”すこぉん!”

 

 ここでも”農業EX”のおかげか、鶴嘴が奇麗にナマズ頭部を捉える。甲殻ごと難なく貫く。

 ”……!”

 ”ビチビチ”と跳ね、尻尾を振り回すもだんだんと力が失せ。息絶える。

 

 「よしと。これでよかろう。とりあえず一匹。ふむ、今日はトンボはおらぬな。獲物はこれでよかろう。周りの散策でもしようかの」

 

 先ほど、とどめを刺したカエルを回収。これから池をぐるりと一周するつもりだ。

 池の端、湧水の出ているところ、沼に注ぎ込む小川……

 

 「面白いのぉ。なんで黒くなるんじゃろか……恐らく堆積物や落ち葉等のタンニンのせいだろうが」

 そんな事を考えつつも、食用になりそうなものを探す。

 認識の範囲ではクレソン、セリ。他に見たことも無い草の実、青い木イチゴ、アケビに似たつる植物を見つけた。

 それらを採取し、”収納”に。帰って調べてもらうつもりだ。完全に”鑑定”云々は失念しているカンイチ。ゲームなんかやったことの無いかんいっつぁんだ。誰かが、使い方を一から教えないと進まないだろう。

 

 「さてと。そろそろ戻ろうかのぉ」

 設置したボーラを回収。今日も大漁! 速足で帰途に就くカンイチであった。


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