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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 前
57/520

魔法とは

 ……


 アールカエフの家に向かう途中、市で食料品を買い、雑貨店を覗いたり。傍から見たら美男? 美女? の逢引デートのようだ。今はテラス席のあるお洒落な食堂で昼食を楽しんでいるところだ。

 

 「……しかし、銭湯、あれで金を取ったら詐欺じゃな」

 どうやら、また風呂の話らしい。風呂好きのカンイチ、どうにも許せないようだ。

 「そりゃ銭湯云々よりも、冒険者共のモラルの問題でしょ? 下品で、臭いし、小汚いし。最低でも門で水浴びてから町に入って来るべきだね!」

 フォークをブンブン回しながらアールカエフが悪態をつく。逢引の話の内容とは少々……

 

 近くのテーブルでそれを聞いた冒険者も視線を向けるが、すぐに逸らす。

 また、文句を言おうと立ち上がろうとする仲間を引き戻す。そう、相手はこの町の”英雄”様だ。圧倒的な力を持つ魔法使い。その頂点に近しいものの証、”翡翠色の髪”魔力と長く生きた知識の証……エルフ族の進化系、ハイエルフと言われる存在。

 

 「アールにも見せたいものよ……。そうすりゃ納得するじゃろ」

 方や、いきなり”銀”ランクの逸材。期待のホープ。ジーンを叩きのめした新人だ。心を折るほどに。

 

 「御免被るねぇ! そうそう、もっと町の中の銭湯に行ったらどうだい? 貴族街の方とか。きっと少しはマシだろう?」

 「う~~ん。風呂釜できるまで我慢じゃな。アールは風呂桶も作れるのかの?」

 「風呂桶もいいけどさぁ。どこで入るんだよ……ギルドの鍛錬場の真中で? カンイチ。精々、樽で我慢するのだね。そうそう、半裸で街に飛び込んできたって本当かい?」

 「そうよなぁ。半裸? まぁのぉ……」

 とまあ、こんな塩梅だ。双方、中身は枯れてるのか、そんな色恋などなし。伊達に、100年は超えていない。が、楽しそうにも見える。

 ……


 アールカエフのガラクタ屋敷に到着。ガラクタ山を二つ切り崩し、お茶休憩に。

 「良し、魔法だったね。イメージが肝心だよ。理を知ってればなおよし! 難しく考えないでもいいよ? ザックリで。『火種』だったら、マッチが燃えるイメージ?」

 「うん? 酸素がどうのは?」

 「さんそ? 何それ?」

 「酸素……この空気中にある燃える気体? じゃ」

 「へぇ~~」

 「ええかの。蝋燭とコップあるかの?」

 「うん。これでいいかい?」

 良くある、燃やしたローソクをコップで蓋をする実験だ。


 「消えた……なるほど。その燃える気体が尽きた……という事かふむ。ひょっとして、呼吸で取り入れてるものかい?」

 「そうじゃ。ワシ等も酸素が無いと死んじまうの」

 指先にぽっ! と火を灯すアールカエフ。

 「で、空気中の酸素とやらを集めるイメージ…… ”ぼぼぼおぉ!” おおお?! 凄いな! カンイチ!」

 「のぉ、アールよ。ワシが教えてもらいたいのだが。じゃが、結構ザックリしておるのぉ。どれ……『火種』……”ぽっ!” お? おお! ついた! ライターのイメージで……”ぼぼぉ!” ふむ。便利じゃな」

 「うん? カンイチ、風呂の魔道具要らないと違うのでは? 魔法で沸かせるのでは?」

 「いや、風呂は道具に任せたいのぉ」

 「そんなモノかねぇ。ま、人それぞれだし。じゃ、簡単に説明するよ。魔法とは、魔力を燃料に……」

 一時間ほど魔法についてアールカエフに学んだカンイチ。聞きなれない言葉ばかりでいささか理解に苦しんだが……。

 もう少し魔法について知りたかったが、犬の散歩をせねばと続きは次の機会にと寮に帰る。

 ……


 「待たせたのぉ。今日は南の方に走りに行こうかの。なぁに、餌は大猪の肉がある! 楽しみにしちょれ」

 ”ぅうおふ!” ”わぉふ!”

 頭を撫でて、首輪にリード替りのロープを結ぶ。

 「良し! 出発じゃ!」


 南門から出て、街道を真っすぐ走る。そう、カンイチがこの星に降り立ち、最初に歩いてきた街道だ。

 何台か町に急ぐ馬車とすれ違いながら、数キロ。クマたちの気の済むままに南下、ひた走る。

 

 「ふぅ。気持ちいのぉ!」

 ぐいと汗を拭い、犬達に水を与える。

 「良し。お前たちが倒した、猪の肉じゃ。食え」

 大きなモモから切り出したブロック肉を放る。その肉塊に目の色を変えて食らいつく犬達。

 「そんなに美味いか。ふむ……アールにホットプレートでも頼むかの。魔導コンロの大きいのになるのかの?」

 そんな事を思いながら、犬たちの様子を見守るカンイチ。ふと、犬たちの変化に気づく。

 「うん? 毛色が濃くなったかの? 本当に狼にでもなるのじゃろか……。ま、物騒な世界じゃて。ええがの」

 草原でクマたちとじゃれ、大いにモフり。帰路へとつく。

 「さて。戻ろうかのぉ!」

 ……

 

 「おう! どうだった?」

 「うん? ハンスさん、特には。南の街道を、林のある所まで行ったが特に変わったものは無しじゃな」

 「相変わらず速ぇえな……。どうだ、カンイチ、飲みにいかんか! 飲みに!」


 ――たまにはいいか……世話になってるしの

 

 「ええ。良いですね。じゃ、早速?」

 「おう! 10……5分くらい待っててくれ。着替えてくるわ。ヨルグも来るか?」

 「俺、今日、宿直だわ!」

 「そりゃ残念。じゃ、待っててくれ」

 ……

 「なんかすいません。ヨルグさん」

 「うん? 構わんよ。これで飯食ってるからな」

 「そういえば……何かあったのかの……あったんです? ハンスさん。南行くっていったら」

 「ん? ああ、ゴブリンの目撃例があってな。まだ被害は出ていないようだが……。近日、町から発表されると思うがな。一応、警戒するようにとな」

 「ゴブリン? ですか……」

 「まぁな。一匹の力はそうでもないが、数が集まると面倒だ。偶に魔法使う奴もいるしなぁ」

 新たな”敵”の出現、初めて聞く”ゴブリン”。

 「ん? カンイチの村にはでなんだか? どこにでも湧いてでるがなぁ」


 ――ふむ。身近な敵……というわけか? 後で調べてみるか。ゴブリンのぉ……

 

 「さぁ。どうだか……どうでしょう。呼び名が違うのかも?」

 「ふ~~ん」

 「おう! 待たせたな! じゃ、行くか!」

 「はい。じゃ、ヨルグさん。失礼します」

 「ああ、またな」

 ……

 

 「ゴブリンが出たそうですね」

 「うん? ああ。目撃例だがな。山から下りて来たんだろうさ。小規模なら良いがね」

 「退治に行ったりするのかの?」

 ゴブリンが何だか不明だが、ハンスに話を合わせるカンイチ。この辺りも年の甲と言える。

 「先ずはギルドの斥候職に依頼が出るはずさ。その報告をもって方針が決まる。小規模なら、ギルドに依頼。中規模ならギルドとこの町の領主の領兵。大規模なら国軍……そんな感じだな」

 「ふ~ん。大事じゃのぉ」

 「まぁな。人間と魔物の住むところを賭けた戦いだ。それにこの町は、魔物たちのテリトリーに入ってるからな。前線基地と言ってもいい」

 「そうか……それだから”冒険者”の町なのじゃな」

 「そういうこった。そういや、カンイチの犬ってつがいか? 子供出来たらうちに分けてくれんか?」

 「うん?……そうさなぁ。ハンスさんなら良かろうが。ま、その時だな。っと、ちょっと繋いでくるわ」

 「おうよ!」

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