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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 前
56/520

秘密

 …… 


 「いやぁ~~本当にすごいねぇ。カンイチ!」

 

 ――いや、アールこそじゃ……わざわざ魔石を取りに来るとは

 と心の中でつぶやく。

 カンイチが大物を仕留めたのを何処からか聞きつけて、そのメインの素材”魔石”を取りに来たのだから。

 

 「そりゃどうも。じゃが、本当に精霊様が?」

 不思議でしょうがないカンイチ。一応聞いてみる。

 「さて……。ね。ふふふ」

 アールカエフは楽しそうに笑うのみ。

 こりゃ、聞いてもこれ以上の回答は無いなと諦めたカンイチ。

 

 「しかし、カンイチ。お風呂かね?」

 「うむ。ここらの銭湯は、金をとるくせに汚くてのぉ。あの湯舟は我慢ならん」

 「そうなんだぁ。僕は入らないからなぁ」

 「え!?」

 信じられない……そういったカンイチの視線に。

 「あ? ああ? 汚くないよ! 僕は! ちゃんと”洗浄”の魔法で綺麗にしてるしぃ! 心外だな! もう!」

 「なるほど、ここでも魔法か。アールよ。ワシにも教えてはくれんか? そいつを」

 「構わないよ。うちに来るといい! 代価は……そうだなぁ、掃除だな!」

 「了解した。よろしく頼む」

 

 ――うん? ”洗浄”でどうにかできんのか……”清掃”がないのは残念じゃな。

 

 「なんだい? カンイチぃ~~」

 にこやかに詰め寄ってくるアールカエフ。

 「いやのぉ……なんでもない」

 ……

 

 「お帰りなさい、カンイチさん。あれ? アールカエフ様?」

 リストとの契約書を握り、解体部屋にやって来た。ここで資材の引き渡しが行われる。

 「久しぶりだねぇ! ルック君! ドル君も元気そうで何より! うん? 随分萎んだねぇ、ははははは!」

 「良くおいでくださいましたな。ルック、茶。 「はい!」 で? いかがされました? アールカエフ様?」

 「ああ、ドルさん、アールが何処からか聞きつけて来てのぉ。ギルド長に魔石を取られないか心配でわざわざ来たそうだ」

 「まぁ、仕方ねぇか、アールカエフ様だし」

 「はっはっは! そういう事! 早速、今回の魔石、見せてくれるかな! カンイチが風呂釜にとご所望だ!」

 「風呂釜……ですか?」

 「だろう! カンイチ!」

 「ええ、まぁ。そうそう、アール。トンボの羽ってこれで良いかな?」

 「うむうむ! 上出来だ! ほう! 中々いい魔石じゃないかね!」

 

 ドルの親方が金属のトレイに乗せて持ってきた物、少々歪だが、大きさはハンドボールくらい。色は例えるならば、赤と黒の飴で何層もコーティングしたような深い色味。

 

 ――こんなものが体内で作られるのか……。うん? 尿結石や胆石みたいなものかの……

 カンイチの認知としてはこの程度のモノだが、誰もが欲しがる大きな魔石だ。領主が見れば、接収! 接収! と騒ぐかもしれない。

 

 「……違うよ……カンイチ。作られる場所も心臓付近、臍の下、脳内とかさ。こんなのが詰まったら死んじゃうぞ?」

 呆れた表情でぼそりとアールカエフ。

 「……」

 またもやアールに思考を読まれたようだ。しかも少々恥ずかしい内容の。

 

 「ふむふむ。こいつを圧縮すれば、恐ろしい出力が出るな……。大樽くらいの水は一瞬で沸騰するだろうな」

 「……アールよ。それじゃ風呂にならんが……」

 「それだけ良い魔石ということさ。出張ってきた甲斐があったよ! よし、こいつは研究資材でいいな? 後々、出力の高いものの為に取っておこう。数個集めりゃ、空飛ぶ船も作れそうだ! なぁ~~に。心配するな、カンイチ! 風呂釜には僕の手持ちの魔石でこさえよう!」

 そういうと。布で包んでさっさと彼女の”収納”? に入れてしまった。 

 

 「そうそう、風呂釜には、この前書いたカエルの素材が必須だ。ギルドじゃ無く、僕の所に持ってきてくれたまえ。特別な加工が必要だ。鞣し師のフルンゲル君にやらせるからさ。じゃ、行こうか! カンイチ! 掃除しに!」 

 

 肉の収納もあるので時間を少々頂く。もちろん、ドルの親方たちにもお裾分け。アールもしっかり受け取った。リストとハンスの分をルックに託し、ギルドを出る。

 ……

 

 「で、カンイチ。キミって神様か何かかい?」

 二人並んで道を歩いていたアールカエフが唐突にカンイチに尋ねる。さらりと。

 「ワシがか? ははは。まさかな」

 「そうかい? 気の在り方が、他のとまったく違うのだがねぇ」

 「神なら、風呂一つでこんなに騒がんじゃろ?」

 話の内容はこの世界にとっても重大な事……が、並んで歩く姿はごく自然。恋人一歩手前の微妙な距離感だ。

 「はっはっは! そういえばそうだね。う~ん。じゃ何者だい?」

 「そうじゃなぁ。この星の異物。よその世界の人間。……というのはどうじゃ?」

 信じる信じないは別にしてアールならばいいかと話す。自分だけの秘密……誰かに聞いてもらいたくもある。

 「ふ~~ん。空想の話だなぁ。面白いねぇ。なるほど。なるほど。納得だね」

 「へぇ? 納得するのかよ? アールよ」

 「そうだねぇ。突飛な話だけど、信じるに足る確証もあるしね。なにせ、精神と肉体の齟齬。身体能力。加護持ちだし。”収納” ”鑑定”だって持ってるんだろう?」

 「なんじゃ、”鑑定”って?」

 「うん? 知らないのかい? 物体などの真意、特性を知ることができるよ。ま、帰ったら説明するよ」

 「……なんでわかるんじゃ?」

 「僕も”鑑定”持ってるし?」

 「じゃ、アールも ”収納” ”鑑定” 持ってるのじゃろ、他の世界の人間かの?」

 「まさか。僕は正真正銘、この星、世界の人間だよ? 長く生きてるから色々と受け入れられるんだと思うよ? 伊達に1000年生きてないしぃ?」

 「すごいのぉ……ワシの10倍か?」

 「ふふふ。まだまだ若造君だねぇ。カンイチ君。ふふふ」


 ――そうだ……ワシは、アールの本質に”母”の姿を見たのかもしれない……のぉ

 お互い見た目は青年だが。


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