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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 前
55/520

魔石の行方。

 …… 


 「おはようございます。ドルさん」

 「おう。カンイチさん」 

 言葉少なくドル親方登場。疲労の色が濃い。

 「なんか悪いの……。手間かけさせての」

 「いや、はっはっは若い物にも良い経験が出来たわ。あれだけの大物、そうそうバラすことも無いからのぉ。一応、素材の引き渡しはギルド長との契約後での」

 「了解した」

”むくり!”

 「うん?」

 「はふぅ~~い。カンイチさん、おはようさんですぅ」

 解体台に寝ていたようだ……

 「お? おお。居たのかルックさん。泊りか。ご苦労じゃったな……」

 「いえいえ。今、お茶淹れますね。少々お待ちを。来客用のかっぱらってきますんで……」

 そう言いながら、解体部屋を出て行くルック。

 「やれやれ……よくもまぁ、解体台あんなところで寝れるもんじゃ」

 さしもの親方も呆れ顔だ

 「違いない……」

 「で、カンイチさん、つぶてと言っておったが、体の中には何もなかった」

 と、小声でドル。

 「そうか……。魔法で生成されているのか、役目を終えると消えるのかもしれんな」

 と、頷くカンイチ。

 「魔道具か何かかい? おっと、手のうちじゃな」

 「構わんよ。ドルさんならの。”あーちはくと”?  じゃったか?  それが礫を撃ちだすんじゃ」

 「アーティファクト……か。なるほどの。心臓に見事に達しておった」

 「ああ。普通じゃ無理じゃろ。犬達がの。ガッチリ押さえつけてくれたんじゃ」

 「あ、あの大猪をかの」

 「最近また大きくなってるようじゃし。狼にでもなるのだろうか?」

 「……元は一緒とは言うがのぉ」

 ゆっくりと茶を呼ばれてから、一旦ギルド長の所にいくことに。

 またあとでと小屋を出る。

 ……


 その時、中庭経由で行く。未だテントが張られたまま。覗こうと思ったが追い払われた。しょうがない。秘密での作業。カンイチが仕留めたと知ってる者も極一部だから。


 「やぁ、おはよう」

 いつもの執務用の椅子ではなく、ソファーにだらりと腰掛けるリスト。

 ギルド長も寝不足のようだ。

 「ご苦労じゃったな」

 「いや、この”手数料”と”販売益”で食わせてもらってんだ。問題ない。もっとジャンジャン狩ってきてくれ」

 「……偶々じゃぞ。今回上手くいったのも」

 「わかってるさ。あんな大物。よくもまぁ、生きていたもんだ。それに言うだけは只だからな。で、引き取りだな。魔石売る気は?」

 「無い。今は風呂釜が欲しいでの。沸かせる魔道具があればどこでも風呂に入れるしの」

 「はぁ、風呂だって?」

 「うむ……。ここの不満は風呂と緑茶がないことじゃ」

 「……なんてこった。りょくちゃ?  というのは知らんが、風呂かぁ。あ、そうか……魔道具があればどこでも入れるな。”収納”持ちだからなぁ。くそ」

 

 風呂となると、そうそう用意はできない。魔力にしろ薪にしろ高価だ。

 今回取れた魔石自体は大きく、風呂の魔道具には勿体ないが、代わりに魔道具で補填しようにも、魔道具自体が恐ろしく高価だ。小さい魔石でも。

 それでも販売益が出ようが、アールカエフが黙っちゃいないだろう。必ず抗議の声を上げるだろう。彼女の研究にも必要な物だろうから。

 

 「そういう事じゃな。もう少し、銭湯がきれいじゃったら良かったんじゃがのぉ。ありゃなぁ」

 垢の被膜に覆われた湯舟を思い出すカンイチ。リストは、風呂を沸かすのをケチったばかりにと臍を噛む。

 「ふぅ……今後に期待だな。次は回してくれよ?」 

 「さて。まだまだ欲しい物があるでの。アールの腕次第じゃな」

 「女はがめついからな……」

 「ほっほ。伝えておこう」

 「ちょ、チョイ待て!  カンイチ!」

 

  ”こんこん”

 

 「うん? なんだ?」

 『ギルド長。アールカエフ様が急ぎの用事と……』

 「へ? アールカエフ様ぁ? ……カンイチ?」

 ちょうど、彼女の話をしていた所、面食らうリスト。

 「はて? ワシは何も知らんぞ。あれから会っておらんし。知らせてもおらん。この後、魔石を持って行こうと思っていたがの。別件じゃなかろうか?」

 こんな時にと、顔を見合わせる二人。

 「そうか。なんの用だろうか……」

 「さて、じゃ、ワシは席を外そうかの」

 「悪いな。頼む。すまんな。カンイチ」

 「いえ。では失礼するで。また後での」

 ”ぎぃいいい”

 扉を開けるとアールカエフがするりと部屋に入って来た。

 「いやぁ~~聞いたよ! カンイチ! 期待通りだねぇ!」

 そういって、カンイチの両手を取り、ぶんぶんと上下に振るアールカエフ。

 「は? 何のことじゃな? アール?」

 「とぼけちゃいけないなぁ。僕達、共同開発者だろ。猪だよ猪。でっかい魔猪!」

 驚きのリストと、カンイチ。

 あれだけ朝も早くからコソコソやっていたのにと。

 

 「ア、アールよ、何処で聞いてきたんじゃ?」

 「うん? エルフ族に隠し事はできないよ! 特に面白いことや、あっ! と驚くことはね。”精霊”様から聞くんだよ? その顔……信じてないなぁ~~カンイチ!」

 「い、いや、精霊様……というより、木や草やらにも”神”はいらっしゃると信じてるが……」

 「良いね! 良いね! そうそう、それだよそれ。良い心構えだ!」

 「ちょ、ちょっといいかな、カンイチ。アールカエフ様、本当に今回の件どこでお聞きに?」

 「だから言っただろう、リスト君! 精霊様にだって。マジだよマジ。僕が精霊魔法の使い手って知ってるだろう? 索敵の魔法だってあるんだ! ま、僕の場合は敵を探るより面白い事を探る専用だがね!」

 

 ――面白いこと? そんな事に使わないで、精霊様に掃除に力を貸してもらえばよかろうに……

 と思うカンイチだった

 

 「それじゃつまらんだろう! カンイチ! 掃除はカンイチが手伝ってくれるのだろう?」

 心の中を見透かされ驚くカンイチ。満更、精霊も嘘ではないのかと

 「わかりました……。それで、アールカエフ様。急ぎの用事とは?」

 「ワシは席を外そうか」

 「いいよ。カンイチ。キミにも関係ある事だ。手八丁口八丁なギルド長に説得されて、魔石を手放すかもしれないと心配に思ってね。態々こうしてやって来たんだ。この出不精の僕がね!」

 「……」

 「……」

 どうやら、魔石を取りに来たようだ

 「何かね? その表情。うん? 杞憂だったかね?」

 「う、うむ。風呂釜が欲しいでの。で、アール作れるかの?」

 「風呂釜かね? ふぅむ。問題なかろう! じゃぁ早速行こうか、カンイチ! ”魔石圧縮”を試してみよう! 吹っ飛んだら勘弁な! なぁに、傷が無けりゃ大丈夫だろう! じゃぁ、リスト君。失礼するよ。そうそう。カンイチの魔石は僕のモノ。手出し無用で願いたい。では!」

 

 ――ワシのモノじゃが……

 と独り言ちるカンイチ

 その様子をぽかんと見送るリスト。

 カンイチの手を引き、さっさとギルド長室を出て行ってしまった。


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