表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 前
54/520

農業EX

 …… 


 「……ほぅ。ダイインドゥさんの紹介状? 珍しいねぇ。人族だろう? 君?」

 ダイの地図通りに来たところ。町の外れにあり、鉱石やら薪、木炭。コークスまである鍛冶用資材の卸問屋。薪やら木炭は、普通の町人もストーブや、オーブン用に買いに来るらしい。

 

 「は、はい。カンイチといいます。一応冒険者です」

 鞄から身分証を出す。もちろん、”収納”から。

 「なるほど。冒険者……しかも”銀”ね。良い関係を築けているようだね。で、『瓶を売ってやれ!』と書いてあるが……どういった事かな?」

 「そうですね……親方の処で使っている火水の入ってる大きなガラス瓶。出来れば新品を20ばかし譲ってほしいのだが?」

 「ふ~ん。何に使うんだい?」

 「果実酒のような?」

 果物ではなく、入るのは毒蛇だが。

 「ふ~ん。果実酒用の瓶もあるが?」

 「ならそちらも欲しい」

 「わかりました。準備しましょう。何処に運べば? そうそう、このラベルと書類。ラベルは必ず瓶に貼ってくれよ。うちのだと思って回収しちまう可能性があるからな。揉めたときはその書類を。売買譲渡書だよ」

 「ありがとうございます」

 「いえ、こちらこそ。毎度どうも」

 ……

 金子を払い、配送先はギルドの寮に。これで蛇も窮屈な袋から解放されるだろう。代わりに死に一歩、近づくことになるのだが。

 ……

 

 順調に予定をこなし宿舎に。犬達の散歩に連れて行くつもりだ。

 「あら、カンイチさん今日はお休み?」

 犬達と戯れていた受付嬢の一人だ。毛も長くなってきたし。モフり心地も良いのだろう。

 「ええ。まだまだ足りないものがありますから。今日は買い物に。で、今からクマたちを散歩に連れて行こうかと」

 「あら、散歩。良いわねぇ」

 ”ぅぅおふ!” ”わぉん!”

 「本当に賢い子達ねぇ。ふふふ」

 撫でられても嫌がる素振りはない。普段から受付嬢達に癒しを提供してるのだろう。

 

 この日は東門から出て、犬を遊ばせ、ついでに兎を山ほど狩る。

 農民に『野菜もってけぇ~』とも言われたが

 「依頼になっちゃったんですよ。なんでも予算確保のためだとか?」

 「ああ……なるほどのぉ。リストさんも頑張ってたものなぁ」

 「ま、関係ねぇって。持ってけ。持ってけ。どうせ依頼料ったって、極、わずかだろ? しみったれだしな」

 「違いねぇ。持って行きな。兎なんざ、この何倍も食いやがる。気にすんな」

 「ありがとうございます!」

 兎をお裾分けして野菜を頂く。カンイチも野菜が摂れて万々歳だ。夕食で”野菜のお浸し”にしてもらうつもりだ。

 ……

 

 「お帰り!カンイチ、何やら、問屋から瓶が届いてるよ」

 「ありがとうございます! あ、これ、野菜。お浸しお願いします!」

 「あいよ! 若いのに野菜好きなんて感心だねぇ」

 「体に良いんですよ。腹に良い。便通にも」

 「「ほんと!」」

 「……あ」

 食堂でお茶をしていた受付嬢が声を上げる。反応から見るにかなりのお便秘さんなのだろう。

 「ええ。植物繊維……この筋なんかが、出をよくするんですよ」

 「いつも言ってるだろう? 残すなって! まぁ、お野菜は高価ってのもあるんだけどねぇ」

 「むむむ……」

 「西の原にも食べられる草、結構ありましたよ」

 「……カンイチ君。ちゃんと依頼が出てて、うちで高価買取よ」

 「そうそう。王都直行便よ」

 

 ――なるほど、そういえばそんな話を聞いてたな


 「ですね……でも、本当に野菜は体にいいんですよ」

 ……

 

 早速、瓶と蠢く麻袋をもって井戸端に。

 注意深く麻袋から毒蛇を一匹ずつ取り出し、瓶にお引越し願う。頭さえ突っ込んでしまえばあとは勝手に入っていく。

 蛇が瓶に入ったら瓶の半分くらいに水を入れ、脱走防止に瓶の口を塞げば終わりだ。塞ぐ布はユーノさんの所から裁縫の切れ端を頂いてきた。

 この後は冷暗所に保管され、腸の中が奇麗になるまでこのまま。もちろん排泄の度に中の水は換える。排泄もしなくなれば、水の代わりに高い濃度のアルコールが注ぎ入れられ、蛇たちの生が終わる。3年寝かせたら飲みごろだ。

 

 とりあえず瓶に入ったのは15本。瓶に入らないのは焼いて食おうと思ったが、毒採取株としてギルドに持って行くことにした。

 「うむ。あと5匹、細いの捕まえればよいの。3年後が楽しみじゃわい」

 水面にとぐろを巻く蛇を見ながらの一言。蛇たちもまさか、酒漬けにされるとは思うまい。しゃーー!とカンイチを威嚇しようがすでに瓶の中だ。

 

 「ここに置いておくわけにはいくまいなぁ。部屋のなかさ並べる……か」

 女将さんが見て腰を抜かされても困る。いや、あの女将さんのことだ。夕食のおかずが一品増えるだろう。

 「……掃除に部屋に入るかもわからん。申し送りしておくか……」

 ……

 

 夕食にはもう少し時間がある。”収納”から鶴嘴つるはしを出し、裏庭を耕すことに。踏み固められ、硬くなった土。このような場合は鍬なんかより鶴嘴でやった方が早い。石とかも取り除けることができる。

 

 「よいっしょ!」

 ”すか!”

 「う? ううん?」

 良く耕した耕作地に刺したような感覚。少ない抵抗で鶴嘴が半ばまで埋まる。

 「はて……」

 ”ぐい” ”ぼっこ!”

 てこの原理で土を起こす。硬い塊だ。

 「ん? 柔らかくはないの? こいつは魔法の鶴嘴かの? その割には安かったがのぉ」

 ”さくさくさくさく……”

 ……

 気持ち良く鶴嘴が入るので少々予定より広く耕してしまった。勿論ギルド長の了解は得ていない。

 

 「……ま、ええじゃろ。しっかし、魔法の道具はすごいのぉ」

 と、ミスリールから買った鶴橋をひっくり返してみたりと。

 この世界に来てのカンイチ。こういった理解が及ばない時だけ、都合よく”魔法”を受け入れる。

 

 「お次は鍬で。備中早くできるとええのぉ」

 ”さく!”

 「おおうん? こ、こいつも魔法の道具か! 凄い楽じゃ!」

 ”さくさくさく!”と土を細かくし、整えていく。

 

 「……さすがに変じゃのぉ。どれ……」

 

 演習所の奥。外れの所の草を鎌で刈る。

 ”ひゅひゅ!”

 何の抵抗も無く草が刈れる

 「なんとまぁ……。この鎌も魔法道具という訳はあるまいの。普通の鎌……はっ! こ、これが神様からいただいた農業EX……かの」

 

 そう。上位神の*********から、何処でも存分に耕せよう。と授かったSを超える特級スキルだ。

 

 「ありがとうございます! 神様。これでもう怖いものなしじゃ!」

 ”そうか?主人よ?”とカンイチを見つめる二頭の犬……。シュールである。


 「こうなると肥料が欲しいの。化成(肥料)は無かろうの。石灰は問屋に有りそうじゃな。灰は竈から得られるじゃろ。居住区の近く……糞尿は使えぬの。残飯は出ないし、残った骨もクマたちが食っちまうから使えぬし。とすれば、川で集めた堆積土と……山の腐葉土か。よし。今度は山まで足を延ばしてみるか……ん? 馬糞は使えそうじゃな……」

 当面の活動方針が決まったようだ。ビバ! 土いじり!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ