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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 前
52/520

納品の朝。

 ……


 「ふぅむぅ。こんなもんかのぉ。それにしてもよく落ちるのぉ、この石鹸は。地球の物よりも優れているの。これも魔法やらかの?」

 ”ごしごしごし……”

 夕食前。返り血で真っ赤になったツナギと地下足袋を洗い終えたところだ。着っぱなしだったので丁度いいだろう。

 

 ――乾いたら服屋に持って行って破けたところ(牙がかすめたところ)に当て布をしてもらうか。同じもんこさえてくれんか頼んでみるか

 そんな事を考えてるカンイチだった。無理もない。なにせ、一張羅だ。

 

 「さてと……」

 まずは、プランター樽に河原の土を詰め。庭先に。

 「ふぅむ。クワが欲しいの。明日、ダイさんの所に顔出すか」

 とり合えず、プランター樽に薬草を仮植えに。後々は庭の一角を耕し、直植えにするつもりだ。

 

 次に、放置していた蛇をそのまま麻袋ごと井戸水でジャバジャバ洗う。

 「こいつ等の瓶も明日だな。靴も欲しいし、結構やることがあるのぉ。さて、食事にしようか。今日は良く動いたから、腹が減ったわい。今日の酒も美味かろう」

 

 ……。


 「おはようございます」

 今日は、朝食前。少々早いが、起床してすぐにギルドにやって来たカンイチ。日もまだ出ていない。

 冒険者ギルドもさすがに受注こそできないが、買取カウンターと、受注窓口、緊急時窓口は開いている。宿直の職員だろうか。朝一に張り出す掲示板に受注票をピンでとめている。

 ボチボチ、少しでもいい仕事を得ようと冒険者たちも集まって来るだろう。

 

 そんな事は他所に、勝手知ったる何とやら。するすると買い取り・査定カウンターを越えて、控室に。何時もここから奥の解体小屋にお邪魔するルートだ。

 

 「お待ちしてました、カンイチさん!」

 「おう? ルックさん。悪いのぉ、早出させて」

 解体のために早出なのか。いつもは遅いルックもいた。

 「いえいえ。何ていっても魔猪だからねぇ! ねぇ! 親方!」

 「だから、お前は……。声、でけぇんだ! 早朝の意味ねぇじゃねぇか!」

 と、ぴしゃり。

 本来であれば別段、秘密にする事例ではないのだが。

 カンイチの”収納”については知ってる人が少ない方がいい。これもドルとリストの配慮だ。

 しかも、体高3mを超える魔猪がすっぽり入る”収納”など。

 

 「あ! すいません!」

 「ドルさんも朝っぱらからすまないの」

 「いんや、元々朝は早えし。問題ないよ。一服したら行くか」

 「そうしようかの。ルックさん、茶!」

 「はい。また来客用のくすねて来ましょう!」

 ……

 

 「おはよう! おやっさん準備は……うん? カンイチも来てたのか。早いな」

 「丁度、一服も終わりましたから、これからおろしに行くところじゃ」

 「ああ。ギルド長、人払い頼むよ。じゃ、行こうか、カンイチさん。ルック、解体組は降ろしてから、10分後に入れろや」

 「はい! 親方!」

 「……了解した」

 ギルド長も一緒にお茶を飲みたかったようだ……。

 ……

 

 解体小屋の隣に一張りのテント。外からは見えないようになっている。床も同じ素材のシートが張られており、血液等も漏れないように配慮されている。

 

 「ほぅ。奇麗なもんじゃ。集めた血なんぞはどうするんじゃ」

 「うん? このタンクに入れるんじゃ。中に、スライムが入っておってな。奇麗に浄化してくれる」

 ”ぼいんばいん”と、何かが詰まっている、金属製のタンクを叩くドル。

 「へぇ? すらいむ……かのぉ」

 地球でも国民的人気であるスライム。もちろん、カンイチの知識には無い。

 「うん? カンイチさんとこじゃ使ってなかったのかい?」

 「うちは深い山じゃったからなぁ」

 スライム自体何だか知らぬが、何某かの魔法かなにかだろうと。

 「よし、カンイチ。出してくれ」

 「うむ。猪!」

  

 ”ずずぅぅぅううぅぅん!”

 

 カンイチが宣言すると、床に巨大な魔猪が現れる。

 正に、死にたてのほやほや。傷口から血が滴る。猪の臭いが一気にテントを埋める。

 「おお……正に。よくもまぁ。単騎で狩ったもんじゃ……。おう、まだ暖かい」

 「デカいな……。ここまでの物とは」

 「……すごい」

 立ち会った者、皆、言葉を失うほどだ。ハンスは未だ顔を見せていないが。

 「じやぁ、後は任せて良いかな。ドルさん、”つぶて”があったら、取っておいてくれんかの」

 「うむ……わかった」

 「じゃ、ワシはさっさと出て行った方がええの。明日には顔を出すわ」

 「ああ。頼む……」

 未だ。放心しているギルド長。彼のまだ浅い”ギルド長”歴で、最大の魔物になるだろう。

 「よし! ルック! 寸法から行くか」

 「はい! 親方ぁ!」

 ようやく動き出したギルドの職員に頭を下げ、カンイチは朝食を摂りに寮へと帰る。

 

 ……。

 

 

 「ひよぉ~~! すげぇな! こいつかぁ!」

 「いやぁ~~見事だ! でっかいなぁ! こりゃ!」

 一応、秘密の作業場だが、賑やかに入って来たのはハンスとジップ。ハンスは置いておいても、ジップはギルド長にしては想定外だ。

 「おい、ハンス……。出禁にするぞ」

 と、ハンスを嗜めるも、

 「すまんな。ギルド長。ちょっと小耳に挟んでな」

 と、ジップが応える。既にジップの耳に入ってるようだ。

 「そういう事。情報管理は的確に! ってな。ジップには、もしもの時に手を貸してもらうつもりだ。特に貴族連中の対応の時にな」

 暫し、思案顔のリスト。軽く頷く。

 「西の沼近辺だろぉ? こんなのいたんだなぁ! 帰ってきてねぇ奴とかいねぇか?」

 とジップ。

 「もともとあそこはドラゴンフライの巣だ。それなりの腕が無けりゃ行けないだろうよ」

 とハンスが応じる。

 「ま、いいや。ジップ、お前さん、一人でこいつを狩れるか?」

 「おりゃ、”金”だぞ! はっ! 無理だな!」

 両手を上げて、”お手あげ”のポーズをとるジップ。

 「早いな! おい!」

 「やるなら、準備万端、道具を揃えて、おびき寄せて……だな。そもそも剣士じゃ不利だわ」

 「まぁなぁ。槍か……」

 「落とし穴も準備しねぇと。折角だし見せてもらおうか。しっかし、すげぇな!」   

 

 親方達が寸法を取ってるわきで、猪の状況を見て回る、ハンスとジップ。リストも加わる。 

 「が、こいつの傷はなんだろうか?」

 猪の胸に空いた大きな穴。

 「抉り切るような傷だな……。でけぇ穴だ。が、一気に一回で貫いたんだろうな。何回も突いたわけでもねぇな。革にしたら目立たん良い傷だ」

 「ああ。槍じゃぁねぇな。切り傷とは違うな……」

 「が、これが致命傷だな。心臓までならかなり深いな……」

 「足にロープか? 転ばす? この巨体をか?」

 ジップと、ハンスで傷口の検証、どのように倒したかをあれこれと予想する。

 

 「ほれほれ! 邪魔じゃ! 邪魔じゃ! 観るなら下がってろぃ!」

 「おやっさん、なんか知ってる?」

 「教えてくれよぉ~~」

 「ええぃ! うるさい! うるさいわ! 若造共め! ほれ! あっち行け! あっちに!」

 声を荒げ追い散らすドル。

 

 「つぶて……がどうのこうのと……」

 その中でリストがぼそりともらす。

 「ふぅん、礫……ねぇ」

 「ふん! 冒険者の手の内をポロポロと……。そんな事だから情報漏洩するんじゃ! 『長』がそうだからの! 良い薫陶の賜物じゃ!」

 「うっ」

 何も反論できないリスト・ギルド長

 「ほれ。もう良いじゃろ! 解体始めるぞぉ!」

 {応!}

 ……

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