ほう。面白い! (銀色の騎士)
……
目を輝かせながら、両手に装備したトンファーで器用に”宝箱”の蓋をゆっくりと持ち上げるガハルト
途中まで開けると ”がばり!” と、勝手に全開に。
すると、小さい宝箱にも関わらず、中から銀色の塊が湧き出て、徐々に成人男性と同じくらいの体格の銀色に輝く全身鎧の騎士が立ち上がる。
「うん? これが噂の『人食い宝箱』かの?」
「いや、違うと思いますけど、カンイチさん。どうみても騎士鎧ですが……。”銀”ゴーレムよりか小さい? 俺、人食い宝箱って、宝箱が食らいついてくると思っていましたけど?」
と、イザークの説明を頷きながら聞くカンイチ。
ゆっくりと、腰の剣を抜く”銀の騎士”
「ほう。面白い! いざ! いざ! 勝負!」
前に出るガハルト
同時に銀の騎士も高速で踏み込み、抜き打ちを放つ、軌道は水平、流れるような横薙ぎがガハルトの首を飛ばそうと放たれる
”キリリリリン! リン!”
首の横に、右腕を上げ、構えたトンファーで受けたガハルト。激しい金属音がダンジョンの壁を何度も反射する
「速い……な。が、その御大層な鎧の中身は空か? 剣撃はずいぶんと軽いものよ! ふん!」
受けた剣をトンファーで跳ね上げ、左手のトンファーをまっすぐと突き出す。
”ガン!”
ガハルトの攻撃はあっさりと命中し、押し出すように肩の上から、頭部、兜を後方に吹き飛ばす。
”ガンラカンラカラン……”
飛ばされた兜が床を転がる。そして、兜が座っていたところには何もない。
「ん? ガハルとの言う通り、中身は空のようだの」
「”彷徨う死者”ならぬ”彷徨う鎧”かぁ」
「ふむ。ゴーレムの類なのだろうか……」
”ギキ……”
”びひゅぅ!”
「む!」
首無しの騎士は首がないまま、ガハルトに二段突きを繰り出す
その突きもトンファーで軌道を変え綺麗にいなすガハルト
「ゴーレムと変わらんな。ん?」
ふよふよと先程まで床に転がっていた兜が浮かび、本来の場所に着地する
「ん? ……元の通りに戻ったようだの」
「ですね……」
「まさか、ダンジョン同様、不壊というわけではあるまいな……」
「……む」
「であれば……。クマらに食わせたほうが早いかの。と、聞いたところで、あの漢は首を縦には振らんじゃろうな、あの脳筋大王はの」
「そうですよねぇ……。だって、ガハルトさんですもの」
「ああ! あたりまえだ! 直るのなら、直らなくなるまで破壊してやろう! ぐろぉぉおおおーーーーん!」
咆哮とともに、銀鎧に躍りかかるガハルト、相手の突きをトンファーで滑らせ、逸らし、懐に潜り込む。肉薄した状況から小回りの効く武具、トンファーの独壇場だ。力の乗った連撃が叩き込まれる。
急所を探るかのように、腕の付け根、肩口、心臓、鳩尾とトンファーの打撃が加えられる
”ゴガガン!” ”ガガガガン!” ”ガンガンがガン!”
器用に力加減もしているのか、後方に吹き飛ばされずにその場に固定される銀鎧
ブンと、振られる剣を身をかがめて躱す、
「ぬ!」
カンイチの見たもの、剣はガハルトの上を振り抜けずに、ピタリと止まる。そのままガハルトを串刺しにせんと突きだされる
「ガハルト!」
「問題ない! 見えている! どおぉ!」
左右のトンファーをクロスし、剣を跳ね上げ、再び懐に潜り込み、連撃を叩き込む。
超肉薄した接近戦。銀鎧は己の武器の剣の間合いにもっていきたいが、ガハルトがそれを許さない。退けば詰め、出れば下がる。一定の距離を維持しトンファーの乱れ打ちを食らわす。
敵の攻撃も最小限の間合いで躱しているため、ガハルトの体にも、所々、浅い切り傷が刻まれ血が滲む
そのような攻防が三度、四度と繰り返される
腹部を覆う金属板がその衝撃で剥がれ、散る。ポッカリと、空洞が覗く。
構わずに連撃を叩き込むガハルト。先程同様、兜も飛び、盾のように間に滑り込ませた左腕も肩から砕け、金属片となる
距離を取ろうと、ガハルトとの間に強引に剣を滑らせ、払おうと動かすも、その手首を二本のトンファーで挟まれ、さらに捻り上げられ、そのままねじ切られる
「ぐぉぉぉぉおおおおおーーーーーー!」
更にトンファーの打撃の回転が上がる
”バキャン!”
とうとう腰から上が砕かれ、金属片へと変わる。
”ギギギ……”
尚も前進しようと動く下半身
「ほう、まだ動くか。うん?」
動く下半身を砕こうと、トンファーを握り直したガハルトの目線の先、再び、ふよふよと浮かび上がる兜。
銀鎧の下半身より離れ、跳躍、空中の兜に棍棒の用法でトンファーを叩き込む、
”ガガイン!”
トンファーに弾かれた兜は天井、壁、床に激突し、歪む。
床に転がった兜に更にトンファーを叩きつける
面覆いが飛び、頭頂に付けられてた装飾が潰され、所々がひしゃげ、
「ふん!」
”ベコン!”
頭頂に振り下ろされたトンファーの一撃が、兜をぺしゃんこに打ち潰し、金属塊へと変える。
”ガシャン”
同時に先程までかろうじて自立していた下半身が倒れ、動かなくなった。
……




