それってば (変わった宝箱)
……
「ふっ――!」
サディカのトンファーに頭部、こめかみあたりを叩かれ弾き飛ばされるネズミ男。めしゃりと頭蓋が砕け歪にへこみ、壁に叩きつけられる前に消えていく
こちらでは……
「ぅおおおぉぉぉぉーーーー!」
”ばきぃ!”
”がこぉん!”
”べきり!”
青トゥローの懐に潜り込み、トンファーの連撃を叩き込むガハルト!
鎖骨、手首は砕け、肋骨の下、骨のない脇腹へは背骨に届くかというほどにトンファーがトゥローの腹にめりこむ
「ガゴォォォーーーーン!」
それでも腕を広げ、ガハルトにつかみかかる青トゥロー
「おらぁ!」
ガハルトの渾身の一撃が青トゥローの顎をえぐる、跳ね上がる頭部
「アフォォ?」
その一撃が脳を揺らし、ドスンと膝をつく。自慢の長い腕も放り、口をあんぐりと開け、無防備に呆ける青トゥロー。ガハルトに向ける目の焦点も合っていない
とどめ、という段で後ろに身を引くガハルト。
すると、膝をついたままの青トゥローにクマたちが群がる。引き倒され、そのまま貪り食われる
「青トゥローも混ざるようになってきたな……」
クルクルとトンファーを回しながら帰還するガハルト。神妙な、低い声の割に、その表情はニヤリ、凶悪な顔をする。青トゥローとの戦いに満足したように
青トゥローももはや、慣れか、危なげなく仕留める
「同時にでたときは、動きの速いネズミヤローに気を取られているとアブねぇな」
と、ジップ
「ふん。あんなネズミ、オオネズミと大差ないわ」
「油断すんなよぉ。ガハルトぉ、足ぃ、すくわれるぞ」
「父ちゃん! 後続だ! 鼠、5!」
「おう! ジップ、お前も出るか?」
「いや、カンイチと後方に備えるわ。今は親方もミスリールも採掘に忙しいだろう。あれじゃ暫く動けんだろ。クマたちも今は休憩でまったりしてるしなぁ」
「よし! ここは任せた! イザーク! アピア! こい!」
「「はい!」」
一ところに、複数の”採掘ポイント”のある場所。仮の陣を敷き”採掘”を行う。
その採掘箇所が直線の通路上にあるため、前後からの襲撃に備えねばならない。
皆が忙しく迎撃に出ている中で笑顔なのはダイインドゥ親子だ。
「こ、こりゃ、緑金かぁ? う~~む。ワシも初めて触れたわい」
「緑金っていえば、たしか皇帝陛下の錫杖の柄頭にちょこっと使われてるって、アレだろ!? 親父、すげぇ!」
と、戦闘そっちのけで沸く親子
「おうおう、賑やかじゃな。親方、ミスリール」
「おうよ! さすがダンジョンの深部だ。珍しい金属も次々とでてるでなぁ、いい調子じゃぞ、カンイチよ!」
「師匠! 黒字だよ、黒字! 緑金だよ、緑金!」
と、興奮しカンイチに金属塊を差し出すミスリール
「ほほぅ。確かに綺麗な緑色じゃのぉ……ほうほう……金だけあってずいぶんと重いの」
大きさはゴルフボールくらいか。手のひらに乗せた緑色で金属の光沢を放つ塊の重さを楽しむ
「おうぅん? ミスリールよ。そいつはまだ売らんぞ?」
「そうだったね! 親父ぃ!」
”はっはっはっはっはっは!”
「そいつはよかったの」
大笑する二人の顔にそっくりな表情を見る。親子だなとほっこりするカンイチ
「どれ、カンイチよ、ここらの研究資材以外はしまってもらえるかの」
「おうよ!」
……
迷宮を進み行き止まりに至る。その奥に鎮座するのは宝箱
「おお! 宝箱だぞ! カンイチ!」
「ぬ! 大金が入ってるとええのぉ」
と、期待に胸をは膨らませるカンイチ
「じゃ、調べちゃうね。どれどれ……」
ミスリールがしゃがみ込み、宝箱の隅々まで調べ始める
「どうしたんじゃ?」
が、その手がピタリと止まり、ダイインドゥが声を掛ける
「ん……。罠は無いみたいだけど……。なんか、変な感じ? 今までにない……」
と、首を傾げるミスリール
「ふむ?」
「ミスリールさん、親方、それってば『人食い宝箱』?」
と、サディカ
「そうかも? なんか今までと違う感じ? 雰囲気?」
と、宝箱から距離を取るミスリール。怪訝な表情を崩さずに。じっと宝箱を見つめる
「ほ~~ん。フジ、何か感じるかの?」
『うん? ……。特に感じぬが。我もいる。試しに開けてみればよかろうが?』
「で、でも、『人食い箱』って強いと聞きますよ、フジ様?」
『我よりもか? ん?』
「い、いえ、フジ様」
引っ込むサディカ
「何もわざわざ危険に関わらんでも良かろうさ。先にいこう」
「いや、待て、カンイチ。フジ様もおっしゃっている。ここは開けてみよう!」
言わずもがな、ガハルト。
ため息一つつくカンイチ
「ヌシならそういうとは思ったが……。どこまで脳筋なんじゃ?」
「楽しそうだろうが!」
「いや、全然じゃ。のう、ジップさん」
「そうだな……。罠と知っていてわざわざ開けることもあるまいさ」
「ぬ……」
『構わぬ、開けてみろ、ガハルト』
「おい、フジ」
「では!」
「……。しかたなし。皆、下がるように。ジップさん、後方警戒を」
「仕方ねぇか。アトス」
「……応。配置につくか」
……




