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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
いざ! ダンジョンへ! 2
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ま、こんなものだろう (青トゥロー)


 ……


 「バロォォォォーーーー!」


 通路前方から雄叫びを上げながら青いランド・トゥローがどすどすと足音をたてながら駆けてくる。その手には無骨な、何の装飾もない木の棍棒が握られている。

 一本の木材ではなく、太い丸太をぶった切り、握り手部がトゥローの手に合わせて細く削られている。


 「どれ! 俺がいこう!」

 腰のフォルダーからするりとトンファーを引き抜くき、前線に出るガハルト。その視線は暗闇から、棍棒を振り回し、威嚇しながら走ってくる”青”トゥローに注がれている。一挙手一投足を逃さぬように。

 ガハルトの姿勢を見て、皆が下がる

 「ほんと、好きなぁ……お前」

 呆れるジップを置いて青トゥローに向かって走り出す

 

 目前に現れたガハルトに反応し、ピタリと歩を止める青トゥロー。手の無骨な棍棒をゆっくりと頭上へと振りかぶる。その小さい目はジッとガハルトとの距離を測る。その間合いに入ったか、大きな乱ぐい歯が並ぶ口がニヤリと歪む。

 「ウゴォォォーーン!」

 その棍棒をガハルト目掛けて振り落とす。

 

 「そんなもの、当たるか!」

 ひらり、横に飛び、躱す。そして加速しさらにトゥローの懐に踏み込むガハルト。それを見て再びニヤリと笑う青トゥロー

 ”ごずん!”

 床を叩いた棍棒が跳ね上がり、そのままガハルトを下方より襲う

 「ぬ!」

 そのまま、後方に吹き飛ばされるガハルト、ざっ! と着地と同時に膝をつく

 「ガハルトさん!」

 「落ち着け、アピア君。まぁ問題なかろうよ。ガハルトは棍棒に乗り、自ら後ろに飛んだんじゃ。でなけりゃ、今頃、天井に叩きつけられて、ぺしゃんこじゃろう」

 「ああ、踏み込んだタイミングを狙われてそこから飛ぶなんざ、本当の化け物だな、あいつは」

 と、手に汗握るのはジップ

 「さ、さすが、ガハルトさんですね……」

 「……うむ」

 「じゃろ。脳筋大王様じゃ」

 「それ、褒めてます? カンイチさん?」

 と、イザークの呆れた声

 

 そんなメンバーのやり取りなど耳に入らぬ様子のガハルト。

 「ふん。今までの個体よりも筋力が優れているのか。あすこから跳ね上げるとはな。地上にいた個体に近しいのか」

 パンパンとホコリを払う仕草をし、立ち上がるガハルト

 

 「グゥガァァーーーー!」

 雄叫びをあげながら、手にした棍棒を振り回す青トゥロー

 「ん? 簡単に躱されてお怒りか? あんな大振りの攻撃が当たるか!」

 ”ぶん!”

 再び青トゥローの棍棒の振り下ろし、

 

 ”めしゃり!”

 

 水気の多い、潰れた音が戦場に響く。が、砕けたのはガハルトの頭ではなく、棍棒を握る青トゥローの右こぶしだ。

 ガハルトはトゥローの振り下ろしを後方に飛び、棍棒をやりすごすと同時に前に踏み出し、床を叩いた棍棒、青トゥローのその右こぶしをしたたかにトンファーで殴りつけた。その躱し、反撃に出るスピードは像がぶれて見えるほどの神速の動きだ。


 ”ガンララン”

 木製の棍棒がたてる音とは思えない、金属質の重量物の転がる音をたて、青トゥローの手より棍棒が転がり落ちる


 「グァギ?」

 青トゥローの視線が転がる棍棒から、己の指があらぬ方向に向いている右こぶしへと移る

 

 「バゥワァァァァアアアーーーー!」

 怒声を上げ、どすどすと、大股でガハルトに近づき、右こぶしをふりあげ、叩きつける

 寸の見切りか、届かないギリギリの場まで飛び、伸び切った青トゥローの右腕、そのこぶし、肘へとトンファーを叩き込む!

 

 「ウギィ!」

 上体をひねり、振り回すように左こぶしを横に振るも、そこにはすでにガハルトの姿はない。その左腕の肘の可動域外、へし折るように、”ばきり!” ”ばき!” ”びし!” と、トンファーの三撃が叩き込まれる


 「グガァァァァアアァァァーーーー!」

 怒りに任せ、右、左、右と、振り回すように腕を振る青トゥロー

 その都度、”ばき!” ”めし!” と、トンファーの一撃が加えられる。徐々に回転が落ちてゆき、その隙に間合いに入られ、腹、前に踏み出した足の膝頭にもトンファーの攻撃が加えられる。

 

 「オガガァァアアァァァーーーー!」

 足を踏ん張り、ガハルトに向かい大口を開け吼えるも、

 

 「ふん。吠えてばかりじゃ俺は倒せんぞ? ふん! ふん!」

 今や、ほぼ動かなくなった腕を躱し、膝へ連撃を叩き込む。

 ”ごきゃびき、ぼき”

 ガハルトの手に伝わる骨の砕ける感触、と同時に、糸が切れたようにバタリと前に倒れ込む青トゥロー

 その後頭部に突き出されたトンファー。ガハルトの手に頭蓋を砕く手応えが伝わる

 ゆっくりと消える青トゥロー

 

 「ふぅぅ……。ま、こんなものだろう」

 ……

 

 「す、すげぇ……」

 戦場に佇むガハルトをみてアピアがぼそりともらす

 「ガハルトさんですし? あ! あの棍棒、消えないみたいですよ! ミスリールさん!」

 「おう? どれどれ。ふむふむ。鉄みたいな木だなぁ。重量もある。コイツでトンファーでもこさえるかい? ガハルト殿?」

 と、棍棒の質を確かめていたミスリール

 「お! いいな! いい記念になるな! 頼めるか?」

 「まいど~~」

 「じゃぁ、次。棍棒持ち出たらオレね! オレ!」

 「ん? 大丈夫? サディカ。危ないよ。オレがバリスタで安全にしとめてやるよ?」

 「い、いや、ミスリールさん。それじゃぁ、記念にならないから……」

 「なんの記念だい? よくわかんないけど、やるなら気をつけるこった」

 「丈夫な木材のぉ。鍬の柄によさそうじゃな。わしもいこうかの!」

 「鍬の柄かよ。まぁ、カンイチだものなぁ」

 「ジップさんの鍬もこさえてもらうか?」

 「いや、いらねぇし」

 「まぁ、良かろう。早いところ休める場所、探さんとのぉ」

 ダイインドゥの言葉で更に奥へと歩を進める

 ……


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