ンキィィーーーー! (ネズミ男戦)
……
一方、
ミスリールの前にはいつの間にやらジップ。その姿を見てネズミ男は急制動
「おっと! こっちは通行止めだ。ま、俺が止めずとも、嬢ちゃんのハンマの一撃で頭カチ割られたようだがなぁ~~」
ニヤリと笑うジップ。ゆっくりと矢を引き絞るようにバスターソードの切っ先を鼠男に向ける。その切っ先は震えることもなくビタリと固定される。
「キィィーー!」
ジップの構え、己を追う切っ先を見て、足を踏ん張り金切り声を上げるネズミ男。
ジップは構わず一歩、二歩と前に出る
「は? なんだ、なんだ。自分の思うようにならなくて癇癪起こしてるのかコイツ? 笑える! ――ぜ!」
と、同時に、ゆっくり進めていた歩を神速の踏み込みへと変える。”スピード”のネズミ男のお株を奪う速さだ。
「キ!」
緩からの急、その速さに目をむくネズミ男。
一息に間合いに踏み込み、突き出されたバスターソードの切っ先をかろうじてクロスした二本のナイフで軌道を変える。も、胸を狙って突きはネズミ男の右肩を大きくえぐる。
「ンキィィーーーー!」
「ん? 痛いのか?」
剣を引き戻し、
「ふん! ふん! ふん! ふん!」
繰り出される素早い連突き。バスターソードの重みなど一切気にする様子もなく。鎧のないむき出しの箇所に次々と切り傷を刻んでいく。その傷は浅いもの。”血液”をもった相手には有効な技だ。が、ダンジョンの魔物にははたして
「キィ!」
浅い傷ならばと飛びかかろうとした時に、
”ずぐぅい!”
「キ?!」
「アホ。連撃はフェイクだ、フェイク。ダンジョンの魔物にも通じるんだなぁ」
鳩尾の、皮鎧の隙間から背まで一息に貫かれるネズミ男。
焦点のあっていない、赤い2つの目が、我に返ったようにジップを睨みつける。貫通している剣も構わずに二本のナイフを突き出してくる。
「おっと。腹に刺さってるんだぞ。ナイフなんぞ届かせるか」
ジップは剣を左右に振り動かし、強引にネズミ男の体の向きを変える。左右に振られ、鼠男の前に進もうとする力も加わり、腹は大きく裂かれ、臓物がこぼれ落ちる。生命に重要な器官を傷つけたか、力が抜けその場に膝をつくネズミ男、
「キ……」
「ま、よくやったさ」
ゆっくりと引き抜いたバスターソードを払うように振る。
同時にネズミ男も消えていく……
……
……
場面がかわり
アピアの周りにはクマたちが守るように陣取る。
”ぐるるるるぅぅぅ……”
低い唸り声、身を低くし、いつでも飛びかかれる体勢のクマたちを前に足を止めるネズミ男。
が、その前に進み出る一人の漢
「貴様の相手は俺が努めよう!」
言わずもがなガハルトだ。その両手のトンファーを挑発するようにくるりくるりと回す。
「キキ……」
その赤い目はアピアを追うも、周りをクマたちに囲まれ、眼前には虎人の大男、ガハルトが立ち塞がる
「ふぅん。狡賢いというか……。そもそも俺を抜けると思ってるところが気に食わんな!」
「キィィィィィ!」
諦めたかアピアを追っていた目をガハルトを固定する。飛びかかるネズミ男
ネズミ男のナイフの突きをガハルトがトンファーで叩き流す。超至近距離での攻防。次々と突き出される相手のナイフの尽くをトンファーで弾く。受けるでなく攻撃を当て相殺するのだ。
”カン!” ”キン!” ”カカカン!” ”キンカカァン!”
金属同士をぶつけ合う甲高い音が試練の間にこだまする
「ふふん! 思ったよりも遅いな。そして軽い。この程度、片腕だけで十分だな」
と、言うや、左手一本でネズミ男の二本のナイフをさばいていく
「ン、キィィィィィーーーーイ!」
「ほらほら、落ち着け。短気は良いことないぞ」
ニヤリ、と笑い挑発するガハルト。その左手のトンファーは正確に鼠男のナイフを弾く
『もうよかろう。ガハルトよ。大してお前の足しにはならぬだろう?』
「そうですねフジ様。ふん!」
二本のナイフを弾き、鼠男の眼前でトンファーをくるり。そのまま、突き出た鼻頭をしたたかに打ちつける
「キピィ!?」
”めしゃり”、と潰れた鼻。赤黒い液体を撒き散らしながらその場に叩きつけられる
『どれ。あとはこちらで”魔素”はいただこう!』
そのフジの宣言で一歩退くガハルト。代わりにシロが駆け出し、四つん這いになっている鼠男の首に喰らいつく
「キヒィ!!!」
そのまま、まるで人形のようにブンブンと振り回されるネズミ男、シロの周りを振り子のように4~5回も往復したか。徐々に霞のようになり口腔に吸い込まれてく
……
「流石というか……あっという間ですね……」
イザークのつぶやきにコクコクと頷くアピア
「もう終わりかぁ。オレも新しい敵、出たかったなぁ!」
と、こちらは終始、トンファーを振り回していたサディカ
「オレはドロップ探そうっと!」
と、ミスリールが戦場跡へと
「あ、俺も手伝いますよ」
「ふ~~ん。変わった金だなぁ、なぁ、親父」
「ふむ……」
と、ネズミ男の持っていたナイフを吟味中のドワーフ親子。都合、3本。カンイチの相手からは二本、ジップの相手からは一本。ガハルト? シロが食ったこともありゼロだ。そうでなくとも落としたかどうか……




