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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 前
51/520

猪狩の後

 ……


 大猪を狩った後、無事に街に帰還を果たしたカンイチ。冒険者ギルドに向かって褌一丁で街を征く。

 キリリと締まった身体、純白の褌一丁、半裸の凛凛しい美少年だ。道行く婦女子の方々の視線もいやがおうにも集まる。無理もない。

 

 「そうそう、ハンスさん。靴屋はどのあたりにあるかの?」

 「はん? 靴屋か? 木靴なら道具屋。鉄甲靴なら鍛冶屋、鞣し革なら革細工屋ってところだな」

 「靴専門ってのは無いのかの?」

 「う~~ん。貴族街に行けばあるが……。高いぞ?」

 「貴族街かの。ワシが行っても大丈夫かの?」

 「そりゃな。”銀”ならいける。が、犬置いてけよ。騒ぎになるから」

 「やはり……の」

 「まぁなぁ。そういった珍しいものを欲しがるのが貴族というもんだ。ある意味習性だな。死ぬまで治らん」

 「譲らんぞ……」

 と、ボソリ。

 「ああ……。国でも従魔は認められている。ある意味、冒険者の武器、活動の為の仲間だからなぁ。が、偉くなるとなぁ。己が”法”と思うアホもいるのは事実だ」

 と、ハンスが応える

 「まぁいい。その時は町、国を出ればよいからの。リストさんにも言ってある。その時はこっそり逃がしてくだされよ、ハンスさん」

 「……ああ。そうだな」

 真っ直ぐ前を見ているハンス。その表情は……

 

 ギルドへ行く前に宿舎に寄りクマたちを繋ぐ。井戸で身を清め、新しい服に着替える。

 ハンスは先にリストの所へと向かっている。

 

 「お帰りなさい。カンイチ君。ギルド長の所へ」

 「うむ」

 ……

 

 「失礼する」

 「おお! 無事で何より。本当に毎日毎日、何かが起こるな! カンイチ!」

 と、椅子から立ち上がるリスト。

 「だろう、リスト! 俺の眼に狂いが無かったってな。で、早速、猪が見たいのだが」

 「そりゃぁ構わんが……でかいぞ。体高3mはある。解体小屋でも入るかどうか……」

 「マジか……」

 さすがのリストも絶句。

 「おい。そりゃぁ魔猪だな……。でけぇな。西の沼でか?」

 「うむ。近くの茂みでの。デカいトンボを獲りに行ったんじゃ。そのトンボの肉に寄せられたか。奴もワシを食おうと襲ってきたのでな」

 「すげぇな。おっと、リスト、茶! カンイチ喉乾いてんだろ?」

 「ありがとう。が、この後、ドルさんの処で呼ばれるで。たまたま。本当に、たまたまじゃ。道具があって、犬たちとの連携が上手く行ってな。なんとか倒すことができた。運がよかったのじゃろうの」

 「まぁ、運も実力のうちってな。で、リストどうする?」

 「勿論、買い取りたいがな。魔石はアールカエフ様のとこかぁ。ま、他にも毛皮、牙、肉、肝臓…売れるものはいくらでもある」

 「そうじゃねぇよ。どこで確認して解体すんだ?」

 ハンスにしたらそんなことはどうでもいい。モノが見たいのだ。

 「中庭にテント張るしかあるまいな。今日中に準備する。明日の朝一で納品してくれると助かる」

 「了解じゃ。魔石と、肉の半身は此方で頂く。後は好きにしてもらって構わない」

 「わかった。契約書作っておくな」

 「では、失礼する。ワシはこの後、解体小屋に用があるでの。今日は良く走ったわい」

 部屋を出ていくカンイチの背を見送るリストとハンス…

 ……

 

 「それにしても魔猪か……」

 カンイチと交わす、魔猪の売買契約書を書きながらぽつりとつぶやくリスト。

 「ああ。単騎撃破……かよ。”金”でも無理だわな。想像以上だこりゃ」

 応じるようにハンスもつぶやく。

 「ふぅ。カンイチも、普通の青年、新人冒険者のように『ミスリル』目指してるというのなら大々的に公表して、”英雄”とでも奉り上げちまえば、降りかかる問題も少ないんだがなぁ」

 キィ、椅子の背もたれに体を預け、天井を見つめるリスト。

 「まぁなぁ。俺達への義理ってんで3年はいるだろうし、金も貯めてるから依頼受けるだろうが……それ過ぎたら、すぐに引退しかねんものなぁ。引退者の身分証あるし」

 「ああ……。明日から、ミスリル目指すように毎日飲みにつれて行って説得するか?」

 とリスト。

 「は? 無理だろ。見た目はガキだが言葉使い通り、中身は別もんだ。慎重な経験豊富な老人……。そんな印象を受ける。魔法かなんかで若返ったとか?」

 「そんな夢のような魔法あるか! むしろ、”神”が、現世の様子を見にきた仮の姿ってほうが納得できるさ」

 「おいおい……。神様かよぉ。それこそ夢以上だろうがよ。今日は半裸で走って帰って来たぞ? 随分とお茶目な神様だな。くっくっく」

 当たらずとも遠からずと言ったところだが。

 「そうなのか? ふむ。あまりにも世間知らずだったからな……。最初は」

 「あんなもんだぞ。山奥やら田舎から冒険者目指して昇って来るガキは」

 「あんなもの……かぁ」

 「ああ。でも、カンイチは、”違う”と感じたな。雰囲気か……”強い”ってことは直感でな」

 「流石、脳筋隊長だ。一応、本店のギルドマスター総括に報告しておくか……」

 「あの脳筋か? 職務放り投げて手合わせしに来るぞ、きっと。王都から」

 「あり得るな。お前さん以上の脳筋だからなぁ」

 「ま、明日が楽しみだ」

 「そうだな……。おっと、テント設営と大型動物の解体道具の使用許可証もださんとなぁ」

 バタバタと、用意に取り掛かるギルド長だった。


 …… 


 一方その頃。

 

 ”ずずずぅう”

 「ふぅう、美味いの。ここは落ち着くわい」

 下の階、解体部屋にのんびりとお茶をすするカンイチの姿が。

 「で、どうでしたかな、カンイチさん。今日の狩の首尾の方は?」

 「それがのぉ……」

 

 どうせ黙っていてもドル達には話が行く。ならばと、今日の狩の話をする。トンボ2匹、そして明日、解体することになろう、大物の”魔猪”について。


 「はぁ? 魔猪ぃ? しかも、体高、3m???」

 普段、学者然としてる冷静なルックも声を上げる。

 「声がでけぇ。ルック。しかし、良くも無事で……」

 「ああ、たまたまトンボ摑まえる武器が役に立った。運も味方してくれたし、犬たちも大いに活躍してくれたしの。そうそう。土産じゃ」

 ぽん! と。ルックに、まあるい物体を放る。

 「わ、わ! わわ? っと。ドラゴンフライの頭? おお! 早速!」

 何やら、解剖台の方へと行ってしまった。

 

 「しかし、大活躍じゃなぁ。狩りの神様が見てくださってるのかもしれんな」

 「そうかもしれんなぁ。が、もう、こりごりじゃ。今回は真正面より正対しちまったからなぁ。会わないに越したことないわい。あのような化物は。やるなら槍やら落とし穴の準備がいるのぉ」

 「違いないの」

 ”ずずずぅ”と茶をすする音が響く……。

 ……

 

 「うん? まだいたのか? カンイチ?」

 ひょっこりと解体室にリストが現れた。

 「……休憩じゃ」

 「で、何の用だ。ギルド長。明日の事なら大方聞いておるが」

 と、ドルの親方

 「ああ。明日の事だ。今日中に準備願いたいからな」

 「うむ。書類は? ……了解じゃ」

 「じゃぁ。カンイチ、悪いが、朝飯前にでも卸してくれ。人が少ない方がよかろう?」

 「了解した。明日の朝、早くに来ることにしよう。じゃ、お茶ご馳走さま。また明日」

 「おう! 気を付けて帰れよ」


 ……。


 「しかし、魔猪か。何年ぶりだ? おやっさん?」

 「小さいのだったら昨年ジップが仕留めて来たわい。しかし、体高3mか……びっくりするなよ? お前さんが思ってる以上に大きいぞ」

 「だな。これで一気にカンイチが稼ぎ頭か?」

 自身でポットから茶を汲むギルド長。

 「ふぅむ。そうだの。革も毛皮で素のままが良かろうなぁ。牙もバラさずに一式セットでオークションにかければいくらになるか……」

 「なるほど。そうさせてもらおう」

 「肉にしても結構獲れるのぉ。滋養ある魔物肉じゃ。引手数多じゃろさ」

 「ああ。半分だがな」

 無念と顔に書いてあるリスト…

 「そうか。普通なら腐らせちまうが、”収納”持ちならではだな。ま、半分でもかなりの利益は出るだろうさ」

 「違いない。本部に話を通そうと思うんだが……」

 「ああ。そのほうがよかろうの。国にしても税が上がるんじゃ。”金”なり、”ミスリル”なりの待遇で良いと思うぞ。貴族という生物は余計なちょっかいを出しくさる。王の覚書で良いから貰っとくといい。他国に流出するとな」

 「わかった。本部を通して提案しよう」

 「頼むぞ。お偉いさん。つまらんことで友人を失いたくはないからのぉ」

 「ああ……」

 ……

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