ここが50階の試練の間かの (50階へ)
……
トゥローを駆逐しながらダンジョンを進む一行
「それで、50階の”試練の間”は何だ? カンイチ?」
と、隣を歩くカンイチに問うジップ
「さぁ、の。わしら、まだそこまで行ったことがないでなぁ。”溢れ”だかを乗り切った後、引き換えしたでなぁ」
「そうなのか?」
ガハルトに問うジップ、脳筋だったらどこまでも潜るだろうと
「ああ、ジップ。アール様もいらっしゃたしなぁ。何よりも、そこのカンイチもダンジョンに飽きてな。で、金子になる”採掘”、”採集”に重点を置いてな」
「アール様、本当に辛そうでしたものね」
と、イザーク。カンイチも頷く
「で、カンイチ、飽きたか?」
皆の視線がカンイチに集まる
「うんむ。飽きたの。代わり映えしない景色にうんざりじゃ。わしはもう、さっさと帰りたいがのぉ」
「カンイチさんですものね。ふふふ。50階はこの流れからいってトゥローでしょうか、ガハルトさん?」
「ああ、可能性は大きいな! イレギュラーだといいな! なぁ!」
腰のトンファーを引き抜き構えるガハルト。そしてニヤリと笑う
「よくねぇよ。この戦闘狂が!」
と、ジップが即答する
「ええ、さすがに……50階ですよぉ。イレギュラー……青トゥローみたいのかな?」
「楽しみだな! なぁ!」
「「いや、ぜんぜん!」」
ジップとイザークの声が揃う
「それじゃぁ、ここらで帰ろうかのぉ。そろそろアールたちの顔も見たいでな」
「お熱いことで」 (ジップ)
「フンだ!」 (イザーク)
「ここで撤退はありえんだろう! カンイチよぉ! なぁ、親方!」 (ガハルト)
カンイチの『ここらで帰ろうか』という言葉に焦るガハルト。救いを求めるようにダイインドゥに声を掛ける。賛同者を増やそうと
「んお? ワシはどうでもええがの。が、50階以降の採掘には興味があるがの」
「オレも興味あるよ。ミスリルももっと欲しいし?」
「じゃ、決定な! いくぞ! 50階!」
「ふぅ……。仕方ないのぉ」
がっくりと肩を落とすカンイチだった
……
「それにしてもトゥロー、多いのぉ。また”溢れ”でもしたのじゃろか。フジらも出かけているのにの」
野営キャンプを設置し、サディカとイザークを連れてフジが”訓練”に出ていってから暫く、トゥローの襲来を受ける
「”溢れ”たばかりだろうに。そうそう”溢れ”るものなのか? ダンジョンて?」
「さてなぁ。それこそダンジョンに聞かんとの。ま、ガハルトも楽しんでるようじゃで良しとしとくかな」
嬉々としてトゥローに剣を叩きつけるガハルトに目を向ける
「ま、戦闘狂だしなぁ。やれやれ。普通だったら撤収だわなぁ。トゥローっていやぁ難敵だもんなぁ」
「そうみたいじゃなぁ。地上でも難敵みたいだしの。”青”トゥローの躯も帝国が引き取ったのぉ。研究するやら」
「ほ~~ん。研究機関にねぇ。ん? おいおい、もう一体来たぞ! カンイチ!」
「どれ……。わしがいくか……」
渋々、”収納”から鶴嘴を引っ張り出すカンイチ。
「……俺がいこう!」
ずぃ! と前に出るアトス。その手には斧
「お! 行くのか! アトス!」
「……うむ!」
と、一つ頷き、戦場へ駆け出すアトス。ガハルトと並んでトゥローと対峙し、縦横無尽に斧を振る
「張り切ってるなぁ、あいつ」
「アトスさんは常識人かと思ってたがの。戦闘狂だったわなぁ」
「まぁなぁ。が、あすこまでとは思っていなかったわ。常識人は俺だけだな!」
「はて?」
すっとぼけるカンイチ爺様
「おおぃ! カンイチぃ!」
……
……
トゥローを駆逐しながら進み50階、”試練の間”に至る。
カンイチ一行の目の前にそそり立つ”試練の門”。今までの試練の”門”と違い、銀でできているかのようにキラキラと輝く。しかも、左右に三台ずつの篝火台が置かれ、その焚かれた篝火が反射し、さらに銀色の門を引き立てる。
「ほほぅ! ここが50階の”試練の間”かのぉ。ずいぶんとまぁ派手じゃの……」
門を見てカンイチがつぶやく
「ええ。キラキラ……門が銀色ですね……。彫刻のほうもより緻密ですし。綺麗ですねぇ」
「……うんむ」
イザークの言葉に腕を組み門を見上げ頷くアトス。
門の彫刻を興味深く見て回る
「……ふむ。ボスは彫刻によると……トゥローのようだな……」
と、アトス
「しっかし、綺麗な門だな。カンイチ、この門、”収納”に入らねぇのか。きっと金になるぞ。くっくっく……」
「む! なるほど! ジップさん! ……む。そうそう上手くはいかんの」
ジップに言われて、”試練の門”に手のひらをかざすカンイチ。”収納”に入れと念じるが、まったくの変化なし。
「ふむ。どれ、一つ、鶴嘴当ててみようかの」
と、鶴嘴を構え、門に向き直るダイインドゥ
「いいのか? 親方、適当に門に鶴嘴当てて。ダンジョンのものは不壊だろうに?」
と、すでにトンファーを引き抜いている、戦闘準備完了のガハルト
「はっはっはっはっは。冗談じゃ。どれ、”試練”に行こうかのぉカンイチ」
「そうじゃな。一つ、気合を入れていこうかいの」
「まぁ、トゥローじゃ大金は期待できんがの。残念じゃな、カンイチよ」
「ま、戦闘狂は満足させてくれようさ。”採掘”のほうも期待してるで」
「は? 大きな金◯は手に入るだろうに? 金だぞ、金。くっくっく」
「また金◯ですぅ、ジップさん……。ほんと好きですねぇ」
「……クソガキだからな」
「うるせぇ」
銀色に輝く門をくぐり、”試練の間”へ踏み込む一行。
いつもの石柱も金属の質感、輝きを発する。その銀の金属柱の数は3本。徐々に光が強まる。
 




