うげぇ! 気持ち悪い! (奇妙なモノ)
……
「それでは、まずは我らが当たりましょうぞ! いくぞぉ!」
と、トンファーを握り、こぶしを振り上げるガハルト
「ミスリールの言じゃないが少々気色が悪いのぉ……。口から出てるのはなんじゃ?」
今尚、ごぼごぼと赤いゼリー状のものを吐き続ける、”肉”の塊。いまや、背骨も伸び、床に手をつき、獣のように四つ足でにじりよってくる。
顔をしかめるカンイチ、素早く”収納”から散弾銃を引っ張り出す。肩付けに構えられると散弾銃の銃身がスルスルと伸び、ライフルの形状に変化する。
引き金を引き絞る。
”ずぱぁん!”
こちらに向かってくる『冒険者』たちのんれの果、『奇妙なモノ』。放たれた弾丸は先頭の個体の鎖骨辺りに命中。右肩から腕を吹き飛ばす。貫通した弾丸とともに床に転がった右腕も消えた。
「おぅん? 思った以上に柔らかいようじゃな」
更にもう一発。
”ぱぁん!”
吹き飛んだ腕を左手で撫で確かめるように状態を起こした歪な『奇妙なモノ』。その左胸に弾丸は命中! ”びす!” と、小さな穴が開き、楽々と弾丸は貫通したようだ。射出孔からは血も出ずに、冒険者も気にする素振りもなしにそのまま歩いてくる。
「心臓、抜けたようじゃが止まらんか。どれ、もう一発」
再び構え、カンイチが念じるとシュルリと銃身は太く短くなり、”カチリ” 弾丸の装填される感覚、引き金をしぼる。
”どぉぉん!”
”びずん!”
再び放たれた弾丸は鳩尾に当たる。
”ばしゃしゃり!”
一粒のスラッグ弾の面の破壊力。”人間”と似たような姿形故か、臓物と肉片とゲル状のなにかを背後にぶちまけ、バタリと前に倒れる。
「ビブボババブボブゥ!」
手を突っ張り、ズリズリと這う。
”ぶつん!”
かろうじて背骨周辺の繊維の一部でかろうじて繋がっていた下半身がちぎれ落ち、消える。
「う、うげぇ~~」
「まだ動くのかの。どれ」
”ずどぉん!”
”ばしゃぁ!”
四度放たれたスラッグ弾が『奇妙なモノ』の頭部を跡形もなく吹き飛ばす
首無しの上半身が両手を広げ、床に伏せ動かなくなった
「……あれ? 消えないですね? カンイチさん。ひょっとしてあの上半身、ドロップぅ~~?」
頭部をなくし臓物をブチ撒いて転がる人のようなモノの上半身
「むぅ! アレはいらんな……。気持ちがわるいのぉ。イザーク君。放置でいいのかの?」
「ど、どうでしょう……。ダンジョンに取り込まれて勝手に消えると思いますけどぉ」
「うん? 欲しかったら持っていくとええ。イザーク君」
「い、いりませんよぉ! あんなの!」
「おーーい! イザーク、遊んでると置いてくぞ!」
「は、はぃ~~ぃ! ガハルトさん! 今、行きます! 行きます!」
と、返事をしながら、ナイフと十手を引き抜くイザーク
ガハルトの方へイザークがかけていく途中に、幸運にも? 転がっていたモノは消えた。不気味なドロップ品の回収をせずに済みホッと胸をなでおろすカンイチだった。
……
「ブビィ! ブバブバビィ……バァ!」
赤い粘液を吐き出しながら掴みかかる『奇妙なモノ』
「う゛!? このぉ!」
サディカが突き出した剣が『奇妙なモノ』の腹部に深々と刺さる。
”ぶびっ……ぶぶびびぃ!”
剣が刺さった場所から赤黒い粘液が吹き出す。
「うげぇ! 気持ち悪い!」
不快感故か、引き抜くよりも先に蹴り放そうと足を蹴り出すも、
”ぼぼづぅ!”
足が『奇妙なモノ』の膨れた腹に食い込む。だらりと開いた口と腹に刺さった剣の隙間から赤黒い粘液を噴出させる。
「キモ! キモォーー!!! なんだコイツ!」
急いで距離を取るサディカ
「おう! がんばれ! サディカ! はっはっは!」
と、大笑いしながら檄を飛ばすのはジップ。ジップ自身は速攻で首を刎ね、一体の『奇妙なモノ』を屠っている
視線をずらせばトンファーでボコボコににしているガハルトの姿も
「うげぇ! キモ! ジップさん、代わってよ! 大して強くないくせにコイツ! 精神にくるなぁ、あ、ああ! なんか出てきたぁ! キモーーーー!」
「しょうがねぇな。さっさと首刎ねろ、首ぃ! おおっと! 気をつけろよ! アトスぅ!」
ジップの足元に『奇妙なモノ』の首がごろりん転がってきた。アトスの戦斧が高々と刎ね飛ばしたものだ。その顔はアピアを置いて逃げた男の顔にそっくりだった。その眼球はジロリとジップを睨み、口元はにたりと笑う。眉間に皺を寄せるジップ
「……フン! 遊んでるからだ、ジップ」
と、関心なさそうにアトス
「うっせぇ。が、”鉄”ゴーレムよか弱いんじゃね? こいつら? おうおう、サディカもイザークもがんばれや~~」
と、足下に転がっている”頭部”をわきに蹴り飛ばす
「キモ! キモぉーー!」
「は、はいぃーー!」
「やれやれ」
……
「う~~ん。コイツら、消えるってことは”肉”ゴーレムか? 父ちゃん? 臭くもないし」
「かもしらんな。だが、体が膨れ期待もしたが筋肉ではなくブヨブヨの脂肪の塊でさほど強くなかったがな!」
ゴシゴシと愛用のトンファーを布で擦るガハルト
「なぁなぁ……イザーク。オレに変な汁ついてない?」
と、背をイザークに向けるサディカ
「一応、かかっても、ゴーレムが消えると一緒に消えるから大丈夫……と思いますよ? サディカさん」
「……なんかなぁ。今日はオレも風呂はいろ……」
「イザーク! 風呂、覗くなよぉ!」
「の、覗きませんて! ミ、ミ、ミスリールさん!」
わいわいと賑やからイザークたちと反対に
「ガハルトさん、やはりマルドとテニアって死んでるのでしょうか……」
と、暗い顔でガハルトに問いかけるアピア。置いていかれた恨みよりも元仲間を気遣ってか
「どうだろうな。こればかりは地上に出て所在確認しないことにはな。なんとも言えん」
「そういえば、サディカさん、連中のギルド証取り上げてましたね。行方不明?」
「今、それ言う? イザーク」
「ま、とにかく地上に帰らんことにはな。風呂はいいが……。追加も宝箱も無しっぽいな。残念だったなカンイチよ」
「しかたあるまいよ。ダンジョン殿だって都合があろうさ。とっとと出て野営の準備をせようかい。親方」
「そうさな。少し早いが野営にしようかい」
『うむ。風呂の前にひとっ走りしようか、イザークよ。アピアもこい!』
”ぅおん!” ”ぅわん!” ”ぅをん!”
「はい!」
「は、はい! お願いします! フジ様!」
「オレも! ハナお願い!」
”ぅわぁん!”
……




