どうしたんじゃ? (魔石? 金◯?)
……
試練の間で青ゴブリン・キングを退けたカンイチ一行。
戦闘後の処理としてドロップ品の回収や宝箱の探索を行っていると、
「カンイチさん! ちょっと、こっちに!」
みな一斉に声の主、サディカのもとに集まってくる。
「どうしたんじゃ? サディカさんや」
「こ、これ。なんか……普通の石には見えないですよね。宝石やら魔石には見えないのだけれども……これって青ゴブリン・キングのドロップかな? なんだろう?」
サディカが指差す床にコロリと転がっている、青と黒の斑模様のゴルフボールほどの大きさの球状の物体。
「おぅん。金◯じゃないのかよ、金◯。ほれ、さっきの宝箱も”金塊”だったしなぁ。これこそ金◯だろう!」
「ジップさん……。金◯、金◯って連呼しないでくださいよぉ。サディカさんだっているしぃ」
と、残念な視線をジップに向けるイザーク
「イザーク。女ならオレもいるぞ!」
「いや、ミスリールさんは? 特に? 別に?」
「おい、こら! イザァーーーーク!」
ブンブン手を振って抗議をするミスリール
少女に見えるが、年齢はイザークよりもずいぶんと上だ。
「だってよぉ、ゴブリンやらオークといったら金◯だろうに? き・ん・た・◯!」
「……ほんとガキだな、お前は……」
と、同僚に悲しい目を向けるアトス
「うぐぅ! そんな目でみるなよぉ、アトスぅ~~。長い付き合いだろぉ~~よぉ~~」
「……寄るな。同類と思われる」
「おい!」
「でも宝石みたいな? けっこう綺麗だし? 触っていいのかな? これ?」
と屈んでいるサディカ
「じゃあ、綺麗な金◯か?」
「え、ええ?」
「ジップさん、しつこいですって!」
「ふむ……。おかしいのぉ。キングとやらはクマらに食われたじゃろ。であればドロップはないはずじゃが……。まぁ、ここにあるのじゃからもらっていくがの。わしに預からせてもらおうかい。よくわからん物だからアールに見せてみるで。ミスリール、金属製の容器があったのぉ」
「おう! 師匠!」
生体素材採取用の金属製の容器に収め、カンイチの収納に
「まだまだ未知のものがあるのぉ」
「青ゴブリン・キング? あれも初見ですし。じゃぁ、そろそろ出ましょうか、カンイチさん」
「そうじゃなぁ。まだまだ”試練の間”後ろ、並んでいるでな。早く空けてやろうさ」
「おう!」
……
「……しかし、ギルドで集めた情報とだいぶ齟齬があるな。ジップよ」
階段を降り、21階を移動中の一行。中でも今回初参加のジップにアトス。仕入れてきた情報とのあまりにも大きい違いに驚く。
「ああ、並ゴブリンと聞いてたが、青ゴブリンだもんなぁ。しかも、”おかわり”アリってなぁ。キングっぽいのもな。イザークたちが美味しく食っちまったが。で、イザーク、さっき言ってた、クマたちが食うとドロップ云々ってどういうことだ?」
チラとカンイチに視線を向けるイザーク。話してもいいかと
頷くカンイチ。仲間だから問題ないと。
「ええ。ジップさん。文字通りクマたちはダンジョの魔物を”喰う”んですよ。地上の魔物も食べますが。おそらくですが取り入れるのは魔素でしょうか? ダンジョン魔物は効率がいいそうなんですよ」
「うん? 潜る前にチラと聞いたことか?」
「そうですね。”格”を上げるってことと、わかりやすいのはクマたちが喰うと”ドロップ”が落ちないんですよ」
「はぁ? それすら食っちまうってか? イザーク?」
と、先頭を歩くクマに視線を向けるジップ
「と、私たちは推測していますよ。てか、アール様の受け売りですけどぉ」
「……たしかにな。思い返せば二回目の時はナイフのドロップが少なかったな。イザークが仕留めた奴が落としたというわけか」
と、アトスが口を開く
「だと思います。ですから、ゴーレム等の金になりそうなのや武器持ちはガハルトさんたちが対処するようにしてるんですよ。……”特訓”の時は別ですけどぉ」
「ふむ。”格”か……」
「……確かに魔物にそういった事例は聞く。……フィヤマにいたときよりもずいぶんと大きく、力強くなったものな」
と、アトス
「はい。まだまだ強くなりますよ~~クマたちは」
「は、ははは……。程々で願いたいもんだわ。マジで俺ら、新入り君だわな」
お手上げだ、と、手を挙げるジップ
「……ふっふっふ。いいではないか。ジップ。……俺達の知ってる若者が一人、大成したのだから」
「ああ、違いないわな」
「ジップさん、アトスさん……。ありがとうございます!」
憧れの冒険者、ジップ、アトスに認められ、感激に浸るイザーク
『ふん! まだまだだがな! イザークよ! 特訓は続くぞ!』
と、いつの間にやらイザークの隣をフジが歩いていた
「は、はいぃ、フジ様! お願いします!」
『うむ!』
「こりゃ手厳しいなぁ~~」
……




