攻略を続けられるな! (攻略続行)
……
「……なるほどなぁ。カンイチ。フジ殿がこいつに発破かけたってか」
当のフジは仕事は終わったとハナたちの元へと行ってしまった
フジの前に伸びていたアピア。今や、ガハルトの太い腕で剣帯を掴まれぶら下げられている。
「うん? いい機会ではないか、ジップ。引退間近のベテランの貴様だ。後進の指導も大事な仕事だぞ。お前のチームも若者を入れたらよかろう。くっくっく」
「おい! 俺は、まだまだ現役だ! てか、さっさと台車に戻してやれよ。ったくよぉ、死んじまうぞ」
そのまま台車へと載せられるアピア。
「俺はカンイチをチームに入れるつもりだったんだがな! そしたら、目を離した隙にアカリノくんだりまで行って、いつの間にやらお前とつるんでたしな! それに指導の必要はなかったようだがなぁ」
「そいつは残念だったな。ジップ。が、いい機会には違わんだろう。それにフジ様に忠誠を誓っているならな。問題なかろう? 裏切ることもすまいよ」
腕を組み、考えるのはジップ
「そりゃ、アピアにとっちゃ、もっとも忌避することだろうさ。”裏切り”はなぁ……」
「うむ。フジもすっかりその気だでなぁ。頼むわジップさん。間にイザーク君を入れてもいいで。イザーク君も後進の指導者としての経験を積むにはよかろうさ」
「そうなぁ。どうだろうか、アトス」
「……うむ。俺に依存はない。それに奴には”導き手”が必要だろう。……このまま”闇”に堕ちぬようにな」
「ふむ……。じゃ、こいつ、ウチで預かるわ」
「すまんの」
「いいって」
アピアの今後が決まったところで
「それじゃぁ、このまま、攻略を続けられるな!」
「は? なんでそうなるんじゃ? ガハルトよ?」
「なんでも何も、地上につく頃にはおそらくアピアも回復しているだろう? 傷は”霊薬”で治ったんだ。後は飯食って血を増やすだけだろうよ。であれば! 先に進んだほうが有意義だろう!」
ポカンとするカンイチ
「……? 何故にそうなる。よくわからん持論だの。脳筋故か?」
「まぁ、待て、カンイチ。そいつも一つの方法だ」
「ふむ……。ジップさんも脳筋か?」
くすと笑うはアトス
「脳筋のお前に笑われたくないわ! アトス!」
「……が、俺もその意見に賛成だな。くだらん連中にかまける時間はもったいない」
とアトス
「ふむ……。であれば皆に諮ってみようかの……」
そして、攻略続行が決定した……
……
アピアの横たわる車輪付きの寝台を”ガラガラゴロゴロ”とシロが牽く。力を蓄えてきたシロにとって人一人なぞ楽々と牽いていく。
「キツかったら言うのじゃぞ、アピア君」
「は、はい。カンイチさん。お世話おかけします」
寝台の上には血液が足りず、蝋のように真っ白の顔のアピア
「ねぇ、師匠、造血の”霊薬”あったでしょう。飲ませなくていいの?」
「う~~ん。アールの”霊薬”は効果が高いでなぁ。それにしっかりと代価を取られるで。今飲ませたらかえって毒かとおもってのぉ」
「それじゃ水で薄めてみる?」
「もう少し顔色が良くなったらでよかろうさ。若いし、飯食えば回復しようさ」
「そうね。出血も完全に止まってるし。あとは肉食ってたら治るでしょ」
「ガハルトだったら飲ませても死なんと思うがの」
「ははは、かも?」
……
……
アピアを仲間に加えてから3日。18階をゆっくりと攻略中
「前方、ホブ6!」
「おう!」
すらり、腰のトンファーを引く抜き、駆け出そうと一歩踏み出すガハルトに
『次は我らだ! 引っ込め! ガハルト!』
「はい……」
「しょうがねぇなぁ、父ちゃんは……。ホブゴブリンじゃ出番なんかないだろうに」
駆けていく3頭の魔獣を見送る。おおよそ、普段の風景だ。
片や、
「はっ! はっ! はっ!」
と、気合の声とともにナイフを振るアピアの姿が。まだ少し血色は悪いが、ここまでに回復していた。
「おい、アピア。引手を速くなぁ」
「は、はい!」
ジップの激に応えようと真剣に取り組むアピア
「……まだ本調子ではないだろう。無理はさせるな」
アトスもまた指導にあたる。
「アール様の”霊薬”よく効きましたねぇ」
と、その鍛錬の様子をうかがうイザーク
「うむ。だいぶ薄めたがのぉ。アピア君も体力残っていなかったでなぁ。死んじまったらどうしようかとヒヤヒヤだったわい。アピア君の腹、すごかったものよの」
とカンイチが応える
「そうですよねぇ。ぐ~~ぐ~~鳴りっぱなしでしたものねぇ。食っても食っても……。副作用がないものなんて、ダンジョン産の高価な”神薬”ですものねぇ」
「ほぅん? ”神薬”かの?」
「どんな傷でもさっと治す伝説の……ってやつですよ。アール様が数本持ってるって聞いたけど。中には死をも超えられるものがあるとか? アール様が研究されてますよ。各種怪しい”霊薬”はその副産物だそうですし?」
「怪しい薬の研究だで、怪しい薬ができるのじゃなぁ」
うんうんと頷く納得顔のカンイチ
「い、いや、そういうことじゃ? ……いいですけどね。アピア君かぁ」
「イザーク君の後輩だのぉ。いろいろ教えてやっておくれ」
「はい!」
……




