おかわりだとぉ?! (試練の間にて)
……
試練の間の青ゴブリン、15匹をジップ、アトスが蹴散らす。
が、すぐさま再び石柱が輝く。続々とでてくる青ゴブリン。その数20はいようか。
「おいおい。おかわりだとぉ?! だれが追加注文したんだ? おい!」
「……うむ? 試練の戦闘は一回と聞いていたが……。……20はいるか?」
下卑た笑いを貼り付けた青ゴブリンがジップとアトスの前に
「どうする? ジップ! 手助けはいるかぁ?」
と、大きな声で激を飛ばすガハルト
「いるか! 行くぞ! アトス! 殲滅だ!」
「……おう!」
……
「うん? 目に付くイレギュラーはいないな。リーダー個体はいるが、特殊個体は見えないな」
でてきた20体を吟味するガハルト
「まだ10階だからじゃないですかガハルトさん」
「てか、父ちゃん、青ゴブリン自体がイレギュラーだぞ」
「そうか……? 今までは……。ま、ジップは弱いからちょうど良かろうよ!」
「ちょ、ガハルトさん?」
「聞こえてるぞーー! ガハルトぉーー!」
「おうおう。元気だな」
「耳いいですね……ジップさんて」
……
「ふぅ……。疲れたわ」
戦闘を終え、どっかりと床に座りこみ、天井を見上げるジップ
「ご苦労さまです。ジップさん、はい、水」
「おう、ありがとうなイザーク。さすがにいっぺんにあの数、オッサンにはしんどいわ」
手ぬぐいでグイと汗を拭うジップ
「……うむ。追加の試練があるとはな。ギルドで仕入れた情報とかなり違うな……」
イザークに手渡されたコップの水をぐいと嚥下するアトス
「だろう! 面白かろうよ、ジップ」
「まぁなぁ。ゴブリン程度ならいいがなぁ、ふぅ」
と、一息つく。
「……ぬ!」
「ん? どうしたアトス。げ……」
三度、石柱が輝き出す
「ま、また、おかわりかよぉ!」
「……む」
そして、一つの宝箱を吐き出す。
「おん? あれは……宝箱か」
「おお! 師匠! 宝箱でたよ! 宝箱! 装飾がついてるし、師匠曰く、宝箱らしい宝箱?」
「うん? 調査お願いするで。いいものが出るとええのぉ」
「調査? ああ、罠とかか?」
「うんむ。ミスリールが調べてくれるで」
「任せて!」
宝箱の前に座り込み、宝箱を調べ始めるミスリール
「どれどれ……。ここは……こうで……と……」
……
「よぉし! 解錠成功! せっかくだしジップさん開けてみな? 良いよね、師匠!」
「おうよ! ジップさん」
ミスリールの提案でジップに視線が集まる
「お! いいのか? 初! 宝箱だなぁ! どれどれ! 緊張するなぁ! なぁ、おい!」
手をスリスリして宝箱の前にすわるジップ
「ガキか! さっさと開けろよジップ!」
「……うむ!」
「うるさい。ガハルト! で、では、”がぱり”……おお!? これって斧? 片手用の戦斧かぁ! ミスリール! 親方ぁ! うぉ?! お、重ぉ! これ? 鉄塊? 斧に見えて、実はハンマか?」
「おぅん? じゃぁ、さっそくじゃが、そいつはアトスさんでよかろうに?」
「うんむ。どれ、見せてみよ。使用に耐えられんようじゃ意味がないでな。どれ、どれ……」
刃先を指でなぞったり、小さなハンマで叩いてみたりと。
「うむうむ。……良かろう。斧使いは他におらんでなぁ。魔力的なものは無いがなかなかに良い金(属)じゃぞ。密度も申し分ない。振れるのだったら持ってるといい。鋳潰すには少々もったいないでな」
「……お、俺は何もしていないが……。加盟も浅い。他に……」
遠慮するアトス。手を付けようとはしないが
「ん? さっきも言ったじゃろ、使える者が使えばいいのじゃ。斧使いはアトスさんだけじゃで」
「……し、しかし、これはダンジョン産の……。売ればそれなりに値がつくだろう?」
「いいじゃん、もらっておけよぉ、アトス。これからそいつで活躍すればいいだろうさ」
ぽんと同僚アトスの背を叩くジップ
「ああ、鋳潰すのにはもったいないって親方も言ってるしな。もらっておけ、アトス」
と、ガハルト
「……いただこう」
親方から戦斧を受け取り、片腕で楽々ブンブンと振るアトス
「す、すげぇ……。さすがアトスさん!」
こぼれんばかりに目玉をむき出し驚くイザーク。ジップでさえ両手でやっとの代物だ
「これも技やらスキルかのぉ。見るからに重そうじゃてな」
と、カンイチが感想を漏らす
「うん? かもしれんなぁ。『斧特性』やらってな。カンイチの『農具』のような……。まぁ、農具よりもずいぶんとわかりやすいがな」
と、ガハルト
「なにせカンイチさん、鶴嘴でカエル狩るんですものね」
と、イザークが補足する
「そうじゃなぁ、はっはっは」
と、笑うダイインドゥ
「ああ、草刈り用の大鎌で甲冑着込んだバルクを三等分だものなぁ。あれにゃぁ驚いたわ」
と、ジップ
「……であれば、……俺も道を極めるのみ!」
斧を構えるアトス
「ま、がんばれや。これで試練、クリアでいいのか、カンイチ?」
「おそらくのぉ。それじゃ先に進むか。今日は野営の準備してゆっくり休もうかの」
……




