ま、楽勝だな! (試練の間で)
……
10階の試練の間
”ギギギィィィ……” ”ガコォン!”
「くっくっく。ここからがダンジョンだな! 試練、越えるぞ! アトス!」
「……おう! 無様な姿、見せられぬ!」
ジップとアトス気合に応えるように試練の間にある石柱が輝き、審査官の魔物を吐き出す。
「ゲギョ!」
「ゲギョォ!」
「ギョ!」
「ギョギョ!」
……
次々に現れる青ゴブリン。その数、15匹。
各々手にはナイフを握り、内、4匹は背に弓を背負っている
さいごに一回り大きな青ゴブリンが現れる。得物はショートソード。
「ゴブゥ! ゴブ、ゲッキョーー!」
リーダの叫びで展開する青ゴブリンたち。弓を背負っていた個体は一歩下がり、ナイフから弓にと持ち替える
「お、おいおい。こいつは青ゴブリンかぁ。初めてみたわ」
「……そのようだな」
ゆっくりと一歩を踏み出しながら、背負っていた、大きく湾曲した刃を持ったバトルアクスを手に取るアトス。
「しかも、18匹かよ! ぜんぜん違うじゃねぇか! おい!」
と、口調は焦ってるように聞こえるか、その目はリーダー格を睨みつけ、その一挙手一投足を逃さないようにゆっくりと自慢のバスターソードを鞘より引き抜くジップ
「はっはっは! どうだ? 手助けはいるか、ジップよ?」
とのガハルトの問に、
「いらんわ! あの野郎ぉ! よぉし、アトス! 俺が弓背負ってるのかたすわ」
「……うむ!」
「ゴブゥ、ゲギョ!」
リーダーの命令か。一斉に放たれる矢。その内の二本はまっすぐ、クマに向かう。ゴブリンたちからすればこの部屋にいるもの全てが試練の対象だ。
難なく矢をはたき落とすクマ。
「おっと! 後ろも狙われてるようだな。ガハルトの奴なら放置だが、少し急ぐか」
ぐん! 腰を落とし足を肩幅に。広げた左手のひらを前に突き出し、剣を持つ右手を弓を引くように構えるジップ。大きなバスターソードの切っ先はまっすぐリーダー格のゴブリンに向けられる
「迅雷!」
そのまま、青ゴブリンの間をものすごいい速さで駆け抜ける! わきを抜けられたゴブリンの首のことごとくが刎ねられ宙に。その数5つ
そのまま、弓持ち4匹の首を刎ね、リーダー個体に肉薄
――ぬ! ”技”というやつかの
その動きを一瞬も見逃さぬように、目を見開き、ジップの軌道を追うカンイチ。
「ギギョォ!」
盾にするように己の首の前にショートソードをかざすリーダー個体。
”がきぃぃん!”
ジップの必殺の一撃をなんとか止めたリーダー個体。その口が大きな孤を描き笑う
「ゴブゴブッフッフ…… ! ギョ!」
”きゅりりりりぃぃん!”
が、ジップは止まらず、そのままリーダー個体のショートソードの刃の上をバスターソードが走る。
「ギョォ!」
”キィィィン!”
バスターソードの刃は徐々にショートソードを侵食、そして甲高い音とともに半ばから斬りとばす。リーダー個体の首といっしょに
「ほう……。面白い技だ」
と、腕を組んで観戦していたガハルトが唸る
「あの剣、よっぽど良い金(属)でできとるようだな」
と、ダイインドゥ
「は、速い!」
とはイザークだ
「……ふん!」
「グゲェ!」
アトスの方は実直に。一体一体確実に戦斧を青ゴブリンの肩口に落としていく。そのまま胸部まで切り裂かれ青ゴブリンは靄とともに消えていく
「まったく危なげないな。……つまらん」
と、腕を組み戦場を睥睨するガハルト
「そ、そりゃそうでしょ! ガハルトさん! ジップさんだって有名な”金”の冒険者なんだしぃ!」
「温い依頼ばかりで鈍ってると思っていたがな」
「……いいんです? そんなこと言って~~。ジップさんたちも修業に加わったらますますガハルトさんの”獲物”が減りますよ?」
「……むむ。それは困るな」
「そらよ!」
「ゲビィ!」
最後の一体がジップに首を飛ばされる。
「ま、楽勝だな! ん? ナイフ、ドロップするんだな」
所々に転がっているナイフ。その内の一本を拾い上げるジップ
「うむ、それらはワシの方で預かろう。鋳潰して武器をこさえてやるわい」
と、ドロップ品回収に動くドワーフ親子
「それは楽しみだな。うん?」
再び石柱が輝く。
「ゲッキョ!」
「ゲヒィーーィ!」
「ゲㇶヒィ!」 「ゲッホォーー!」
続々とでてくる青ゴブリン軍団。その数20はいようか。
「おいおい……」




