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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
いざ! ダンジョンへ! 2
475/520

どこよりも金はだすぞ (商人がやってきた)


 ……


 『湿地』から帰還したカンイチ一行。

 入町審査のため門の前に並んでいると前方より同じ紋章のついた装備、私兵5人を引き連れ商人らしき男が近づいてきた。

 チラリと視線を向けるカンイチ。こういった交渉事はガハルトの仕事だと、一歩下がる。

 やはりというべきか、その商人はカンイチたちの前でピタリと止まる。

 年の頃は40後半。中肉中背。顔も特段特徴があるわけでもない。が、服の生地や仕立ては誰が見ても高級とわかる。


 「貴殿がガハルト殿か?」

 商人らしからぬ高圧的な一声。その甲高い声、耳に触る。

 「そうだが。なんのようだ?」

 明らかに侮蔑の視線を持つ商人? に問い返すガハルト

 「チッ――。亜人めが(小声)、わしは帝国に多くの店を持つプクタトゥス商会、アマナシャーゴ国総括のギルクリスだ。帝国男爵の位もいただいておる」

 と、尊大に名乗る

 「で、その御大層なプクタトゥス商会、アマナシャーゴ国総括のギルクリス殿が俺になんのようだ?」

 いくら小声でもガハルトの耳に届く。が、眼の前の小物程度に腹を立てるガハルトではない。冷静に返答する。が、サディカは食って掛かるように睨みつける。

 『うん? お爺、此奴はなんだ? 敵か?』

 「さてな。商人とはいっているが……。ま、ガハルトさんのお手並み拝見じゃ」

 『ふむ。これも人の世のことか』

 「そんなところじゃな」

 と、カンイチとフジ

 

 「用事? 他でもない。わざわざ領都【テイラーズガーデン】より来てやったのだ。ダンジョンで得たものを買い取ってやろうとな。どこよりも金はだすぞ。ここに宰相閣下の推薦状もあーーる!」

 「……おいおい」

 と、呟くのがやっとのガハルト

 「うん? 聞こえなかったか? 獣人は耳だけは良いと聞いているが? チッ――。このわしがわざわざこんな地方まで……」

 ぶつぶつと呟くギルクリス。

 「一つ尋ねるが、このチームには……まぁ、いい。こちらには用事はない。これ以上話すことはない。では失礼する」

 このチームには……アールカエフのチームだと、言葉を続けようとしたが、先方は情報を集めナンボの商人だ。帝国貴族のくせにそんなことも知らんのかと言葉を切る。

 関心もなくなり、無視し、町へ

 

 「お、おい! 待て! 止めろ、奴らを止めろ!」

 と、騒ぎ出すギルクリス

 「い、いや、無理ですよギルクリス様」

 「ええ、斬られちまいますよ。ギルクリス様にもガハルト殿の威風は届いているでしょうに。それに……」

 「ギルクリス様だってご存知でしょう? アールカエフ様だっていらっしゃるんですよ」

 「チッ――! チッ――!」

 と、苦虫を噛み潰した顔で舌打ちを繰り返す

 ギルクリスの横を通り門に向かう。ふと、振り返るカンイチ

 「なんじゃぁ、何しに来たんじゃ? アレは?」

 「ええ、とても商人には見えませんね。カンイチさん」

 と、イザーク

 「男爵様っておっしゃっていただろうよ。偉いのだろうさ」

 と、つまらなそうに応えるガハルト

 「ほ~~ん。商人だったら外面くらいは謙虚にせにゃならんだろうに」

 「ま、勘違い野郎はどこにでもいるさ」

 「そうじゃな」

 ……


 「こ、コケにしおってぇぇーー亜人どもめぇ!」

 鼻息荒く地団駄を踏み、憤慨するギルクリス。すれ違う人々を睨みつける。睨みつけられた方も不快の表情を浮かべ、抗議しようにもギルクリスの背後に並ぶ5人の私兵を見て目をそらす

 「ギルクリス様、落ち着いてください」

 「てか、あれじゃぁ売ってくれる物も売ってくれんだろうよ」

 と私兵の一人がボソリ。

 「おい」

 と、同僚の一人が服を引く

 「なんだね。お前たちが役に立たないせいだろうが! この給料泥棒めぇ!」

 「おいおい」

 「おい、お前は黙ってろ」

 あからさまに悪態をつき、不機嫌な顔をし私兵に向けるギルクリス

 「なにかいい方法はないのか……。手ぶらで帰ったらわしの評価が……」

 「はぁ、何を言ってるのだか。素直に頭を下げて『売ってください』と頼めばいいだろうに」

 「だから、黙ってろって」

 「ふぅむ……なにかいい手はないか……」

 考え込むギルクリス

 「まだやってるよ」

 「シッ――」

 「うむ、奴らの周辺調査をせよ! 細かいところまでな!」

 「へいへい。素直に頭を下げればいいだろうに」

 「はい。……おい、だから黙ってろって」

 リーダーの言葉に肩を竦める私兵たち、やれやれと

 ……


 「……で、これはどういうこと。プクタトゥス商会、アマナシャーゴ国総括のギルクリス……殿?」

 ギルクリスの統括する店の応接室。主の趣味か、金、金。キラキラと綺羅びやかな装飾品が並ぶ。

 が、下座にはその主。真っ青な顔のギルクリスが座る。

 上座には帝国の紋章を背負う金髪と銀髪の二人のエルフ

 「え、ええ? わ、儂は、儂は……。商品の、し、仕入れに来たまででして……」

 人族以外を”亜人”と罵り蔑む人族至上主義のギルクリスでも眼の前に座る二人のエルフに身を竦める。

 「ふ~~ん。で、宰相閣下……ねぇ。で、よりによって、この男?」

 と、推薦状なる書状をひらひらと弄びながら金髪のエルフ

 「陛下はご存知かしら」

 と、冷たい視線を向ける銀髪のエルフ

 

 「へ、陛下ぁ!? わ、わ、儂は……」

 二人のエルフに詰め寄られるギルクリス。暑くもないのに溢れてくる冷たい汗をせっせと拭いながら

 「この書状も本物ね。ファロフィアナ様に報告しないとね」

 「あ、あのぉ、わ、儂はどうなるのでしょうか? 儂の出世は……ダリオン様」

 「はぁ? 出世? まだ”手を出していない”から良かったものの……。出世の前に命が助かっただけ良かったじゃない」

 と、つまらなそうに応える金髪のエルフのダリオン

 「しゅ、出世は? わ、儂の?」

 「大人しくお家にお帰りなさいな」

 「命があっただけよかったじゃない」

 「む、無駄足ではないか! この儂がこんな田舎くんだりまで来たのに!」

 と、真っ赤な顔して地団駄を踏むギルクリス。出世が! 出世が! と叫びながら。

 「もう……。アンタは喧嘩を売ったそうじゃない。私兵の方々にも聞いてるわよ。さっきも言ったけど命があるだけ儲けものじゃない」

 「け、喧嘩など! 儂は」

 「放っておけティーター。さっさとお帰りなさいな。はぁ、よかった! よかった! スィーレン様に接触させなくて! まさかこんな商人が来てるとは予想の斜め上、それ以上だわ。きっとブチブチ、グズグズ、ネチネチいわれ続けるところだったわ」

 「こら、ダリオン」

 「も、もう一度チャンスを! チャンスをぉ!」

 と、ダリオンの足にすがりつくギルクリス

 「触らないでよ! 気持ち悪い。本当にヤっちゃうわよ! アンタって人族至上主義の愚物でしょう? 交渉なんて無理、無理」

 「い、いえ? わ、儂は……」

 「ほら! 私のことも亜人って呼んでいいわよ? ほら?」

 「ひ、ひぃ!」

 「もういいでしょう。行きましょう、ダリオン」

 「ま、待ってください! 待って!」

 「面倒ねぇ。サクッとヤっちゃうぞ! あら――。スィーレン様の口癖が移ったかしら」

 「ふふふ。ダリオンももっと素直になれば?」

 「私はいつでも素直よ!」

 「わしの出世が……地位が……立場が……地位が……金が……」

 「そうそう、短慮は起こさないでね。せっかく拾った命でしょ。手ぶらで帰っても命までは取られないでしょう」

 「しゅ、出世が……」

 今は青い顔をしたギルクリスを部屋に残して

 

 ……


 『……そう。面倒ならヤっちゃっていいわよダリオン。おバカの宰相閣下の方は私の方で釘さしておくから。ほんと、役立たずね』

 「はい。ファロフィアナ様……」 


 ……

 


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