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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
いざ! ダンジョンへ! 2
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短編 リンドウ編 友情

 「ねぇねぇ! リンドウ! アールカエフ様、出てきたって聞かないけど、まだダンジョンに入っておられるの?」

 「……朝から鬱陶しいな。聞かないなら入ってるんだろ。お前、馬鹿か?」

 「いや、ほら。こっそり出てきてるかなぁって。もう結構経つだろう? そこのところをね。水とかもないだろ?」

 「……知らん。俺は会ってない。そんなこと知ってどうすんだよ? リンネ」

 「だって、ほら、ダンジョンどこまで潜ったとか知りたいだろう? どんなすごい魔物が出たとか、宝物とかさ!」

 普段は大人っぽいリンネだが、このときばかりは目をキラキラさせて語りだす

 「ガキが。知ったってしょうがないだろう。お前、弱そうだから行けないだろ」

 「おうぅ。それを言っちゃだめでしょう! い、いつかは行ける……かも?」

 「そうか。じゃ、頑張れ」

 「どう? 僕も鍛錬するし! 強くもなる! 将来、一緒にダンジョンに行こう!」

 ぐいんと、突っ伏していた顔を横向きにし、リンネの顔から肩、腹、足へと順にじろり

 「……死にたくないからお前といかない」

 と、ぼそり。それを聞いて少なくないショックを受けるリンネ君……

 「そ、そこは嘘でも 『何時かいけたらいいね!』 だろう!」

 「いつかいけたらいいね……」

 そっけなくリンネの言葉をなぞるリンドウ

 「リンドウ!」

 「なんだよ……ほんと、めんどうくせぇな、お前は!」 

 ……

 

 「リンドウ! リンドウ!」

 登校したリンドウ、教室に入ると同時にリンネが駆け寄ってきた

 「な、なんだよ?」

 「なんだも……。大変だろ! 一大事だ! ダンジョンが”溢れ”たって!」

 「ああ。それか」

 リンネの慌てように反しあっけらかんなリンドウ

 「それかって……一大事だろうに!」

 「それよりも……。おい、リンネ。それってまだ秘密(機密)だろう。いいのかよ、しゃべって」

 「あ……」

 ハッとした表情を顔に貼り付けるリンネ。しまった! と

 「第一隔壁が閉められたら公表だろ。……まだ人が少なくてよかったな」

 ”溢れ”ると聞いて聞き耳を立てていた数人の生徒

 「あ、ああ……。諸君、くれぐれも――」

 ……


 「おい。大丈夫か?」

 「う~~ん。一応? ウチの家の名もだしたし? 署名もさせたし? 話が流れればわかるよ。避難の時は一足先に知らせる約束もしたし?」

 「お前、大人・・じゃなかったのかよ。ヌケてるな」

 「言葉もないよ。父上にもよくいわれる」

 リンドウの言葉に肩を竦めるリンネ

 「気をつけろよ。重い罪になるぞ」

 「そ、そうだね。で、アールカエフ様たちは?」

 「……。……まだ出てきていない」

 「心配だね、リンドウ」

 「ふ、ふん。俺は『冒険者』を目指してるんだ。こんなの当たり前のことだ!」

 とはいうもののリンドウの尻尾はだらりと下がり、いつもぴんと立ってる耳もへにゃり

 「そう……。皆、無事だといいね」 

 「お、おう……」

 その後、カンイチたちのチームは無事帰還となり、リンドウは再会を果たすことになる。

 ……


 ……


 ダンジョンが”溢れ”た後の後始末も大方終わり、軍部も普段の業務に。

 

 「うん? リンドウや、その子は?」

 早朝の鍛錬場、アカマチ隊の鍛錬にリンドウ以外の少年の姿が。線は細いが容姿は端麗、どこからみてもお坊ちゃんという姿だ。

 今や、地面を転がされ、きな粉をまぶした餅みたいになっているが


 「カンイチ兄! こいつは学友のリンネだ! 変わりもんだ」

 「ほぅ。変わり者のぉ」

 「おい、リンドウ! 僕は変わり者じゃない! ん? ……カンイチ……殿?」

 「ん? どうした? リンネ?」

 「い、いや、思ってたよりも全然若いから……アールカエフ様の……。エルフ族でもなさそうだけど……っと、し、失礼いたしました! 私はリンドウの学友、ラプター家のリンネと申します」

 「ふむ。わしはリンドウの義父になるカンイチじゃ。リンドウと仲良くしてくれてると。ありがとうの」

 と、頭を下げるカンイチ、リンネも慌てて頭を下げる。

 「で、そのリンネ君が朝も早くから何をしてるんじゃ?」

 「こいつ、変だから。護衛の方たちに習えばいいのに、わざわざここまで来て鍛錬してるんだ」

 「ふむ。アカマチ殿の組み打ち術は学ぶ価値がある。いいことじゃろうさ。受け身からしっかり身につけるとええ」

 「はい! 受け身も習得しました! カンイチ殿の十手術も取り入れようと思っています」

 「うむうむ。ええことじゃと思うの。貴族様であるならば特にの」

 「でも、細剣と十手なんだぜ! こいつ!」

 「それは面白そうじゃな。まだ若い。何でも試すとええ。で、リンドウ、お前さんは?」

 「ん? 最近はヌンチャクだ!」

 と、ズボンの腰のあたりに無造作に突っ込んであった二本の木製の棍を引き抜く。その棍はロープで繋がれている。

 ビシリと両の手で引っ張るよう、ピンとヌンチャクを構えるリンドウ。

 ”ふひゅん!” ”ひゅん!” ”ひゅん!”

 と、己の体の、脇下、肩、腹、背にへとその棍を通す

 そして、大きくひとふりし、脇に挟む。

 「どうよ!」

 「うんむ……。よぉ、鍛錬したのぉ。わしにはできんわい」

 「今度、ダイの爺ちゃんに鉄でできたの作ってもらうんだ!」

 と、ぶんぶんヌンチャクを振り回すリンドウ

 「おう……。怪我せんよう十分気ぃつけるんじゃぞ」

 「おうよ! あ! ガハルト小父さんだ! 稽古付けてもらおう!」

 アカジンとの鍛錬を終え、汗を拭きながらこちらに歩いてくるがハルトを認めると、駆けていってしまった。

 「あ……いっちゃった」

 「しょうがないのぉ。学友を放置とは。どれ、代わりにわしが組手の相手をしてやろう」 

 「え? カンイチ殿が? お、お願いします!」

 「うむ。かかってくるとええ」

 ……


 ……

 

 そして、学校。

 「な、なぁ、リンドウ、すごく疲れたんだけどぉ! 僕、今日、授業中寝ちゃうかもぉ」

 リンドウ張りに机に突っ伏し、両手をだらりと伸ばすリンネ

 「ああ、お前、カンイチ兄にずっと転がされてたからなぁ。茶、飲むか?」

 「あ……りがとう……。ふぅ、しんどい」

 お茶の入ったカップを受取、ゆっくりとすする

 「でも、今日は立ち技だけだったろ、普段は関節技も飛んでくるんだぞ。打撃もあるしな」

 「う~~ん。アカマチ隊長のとも違うね……。見たことない技もあったよ。カンイチ殿、ものすごく強いね……。それに 『柔よく剛を制す』 かぁ。格好いいなぁ~~」

 「おう! 俺の父ちゃんだしな! ん? なんだそれ?」

 と、胸を張るリンドウ

 「カンイチ殿の言葉だよ。相手の力をうまく利用する……だっけ? 僕も身につけたいなぁ」

 「お前、そういう小難しいの好きだもんな。ま、鍛錬あるのみだな! リンネはヒョロいくせに肝は座っているからな。その点はいいと思うぞ?」

 「ヒョロは関係ないだろう……ほら! 少し筋肉ついてきただろ!」

 と、力こぶを作るも

 「そうか? わかんねぇよ」

 「んな!?」

 

 学友のリンネとの出会い。お互い切磋琢磨し、多くの技を納めることとなる。その友情はリンネが帝国伯爵位に封ぜられても常に傍らに。リンネを守る戦士に。それはまた近い未来の話――


 ……    <おわり>


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