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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 前
46/520

毒蛇

 ……


 西の原っぱ。ここら辺にはスラムの連中の小さい畑はあるが、兎の巣などは見受けられない。彼ら自身が都度、狩っているのだろう。良い蛋白源だ。

 

 さらに進み、川に出た。

 流れから言って、この下流が、カンイチが巨大兎を解体したところだろう。

 あ、そうだ、とデカい兎の皮があったと思い出すカンイチ。


 ――ギルドに帰ったら売ろう。いや、鞣してもらって敷き物にしてもらうか。こちらの冬は予想がつかんでな。

 そんなことを思いつつ、慎重に土手へと降りていく

 

 この川の周辺はあまり人の入った形跡がない。そんなに門から離れていないのにだ。依頼のあった薬草もちらほら見ることができる。

 

 「なるほど。そういう事かの」

 すぐにカンイチは気が付いた。そこには結構な数のマムシに似た蛇が……。見る範囲にかなりの数が蠢いている。そう毒蛇の巣だった。

 

 「ふむぅ。マムシ酒でも造るかのぉ。太さもちょうどいいわい」

 そう言うとひょいひょいと捕獲していく。足で蛇の頭辺りを踏み、頭を掴み麻袋に入れていくカンイチ。日本でも田んぼに出れば捕獲。マムシ酒にしたり、焼いて食ったりしたものだ。


 ちなみにマムシ酒。筆者の曽祖父が良く作っていた。直ぐに漬けることは無く、腸の中身を出す(所謂、糞)必要があるのだが、その方法が一升瓶に半分から三分の一くらい水を入れてマムシを入れておく。窒息しないように蓋は、たしか、重ねたガーゼだったかな。

 糞をしたら、水を捨て、再び水をと一月位放置していたと思う。遊びに行くと軒下や、倉にずらりと並ぶ一升瓶。そして器用に水面にとぐろを巻くマムシたちを思い出す。

 幼心に脱走して曽祖父が噛まれ死んでしまうと心配したものだ。ちなみに、曽祖父は何回か噛まれたと言って、ケロイドみたいな場所を見せてくれたな。本当かどうだかわからないが。

 一升瓶に入らない奴は、焼いて食ったり、鶏の餌にしたとか。幼い時に焼いたもの食ったが、硬くて骨っぽかったことしか記憶にない。

 そして体の中もキレイになったマムシたちは、そのまま焼酎や泡盛、ウィスキーに漬けられ、3年くらいで飲み頃となる。

 ウチにも土産と称して何本かあったが……。誰も飲まずにどこに行ったんだか……。閑話休題。


 

 「結構獲れたのぉ。こりゃ楽しみだわい。ついでにドルさんや、ダイさんの分もこさえるかの。うん? アールが見たら、さぞ驚くじゃろうの。くくく」

 悪い顔で笑うカンイチ。蛇は収納に入れると死んでしまうので、麻袋のまま運搬。うねうねと蠢く、麻袋。それが三つ。

 

 その後も河原で依頼にあった薬草を採取。規定量取り終え、庭にも少し植えてやろうと綺麗に土を落さないように数株採取。ついでに樽に入れる土も。

 雨の時にでも流されてきたか、川の中州に所々に良い土が堆積している場所がある。そういった土を”収納”に。

 

 「そういや、ドクサンショウウオやらがいると言っていたのぉ。このアカハライモリに似たやつかの?」

 大きさは、30cmくらいの黒地に赤いまだら模様の入った、いかにも”危険です”といった両生類が、浅瀬にわんさか居る

 

 「……デカいのぉ。こりゃ、生きたままに運搬は無しじゃな。ならば……」

 銃剣を引っ張り出し、その大サンショウウオの頭部にブスリ。そのまま、”収納”にイン。

 「うむ。本当にありがたいわい。この”収納”はのぉ。うん? やけに大人しいと思ってたが……」

 土手に目を向けるとクマたちが食事中。マムシに似た毒蛇をバリバリと貪り食っていた。

 「美味いのかの……それより噛まれちゃぁなんねぇぞ? そいつはぁ毒蛇じゃ」

 ”ぅおふ!” ”わふぅ!”

 「本当に解ってるのかのぉ」

 

 ドクサンショウウオ、20も捕ればよかろうと土手に上がると、

 ”ぅおふ! ぅおふ!” ”わん! ぅわん!”

 犬たちが”警戒”の合図を出す。

 「どうしたのじゃ? うん?」

 ”ざばざばり!”

 何処にいたのか、5mはある黒地に赤い斑模様、巨大な、正に、ドクオオサンショウウオが現れた。水中をゆらぁり、ゆらりと。

 

 「あれか……。ジップさんが言っていたのは……」

 カンイチが土手から眺めていると、 


 ”げっこっほぼぉごぼぉぼぉ!” 

 

 「よけろ!」

 

 ”ばじゃり” ”じゃばぁぁあ” ”びちゃぁぁぁ!”

 水中から大きな頭を出し、こちらに向けて何やら、ツバ? タン? 黒い粘液を吐きかけて来た。その物体がかかった範囲の草花が萎れ、こげたように黒く変色する。土すら汚染されたように。

 

 「猛毒? きついと言ってたのも頷けるのぉ。土までもが腐れておるようじゃ。さて……相手があれだけ大きくて水中じゃ手出しはできんの。ここは退却じゃな」

 さっさと見切りをつけ、距離を取るカンイチ。水中からでて、土手の上まで追って来ようものなら勝負! と後方を見るもどうやら自ら、川からは出て優位な地形を放棄することはないらしい。

 「……ま、依頼も達成。町さ戻るとしようかの」

 ……

 

 途中、蛇だけじゃ足りぬだろうと”収納”から猪肉を出し犬たちに食わせる。

 「しかし、出すだけ食うのぉ。首輪は未だ大丈夫じゃな。毛が伸びて来たか? ノミとかダニは大丈夫かの?」

 ”ぅうおふ!”

 「なら、ええがの」

 なんとなく返事をしたようなので良しとする。少なくともダニはくっついていないようだし。吸血し、パンパンになったダニは遠くから見てもわかる。赤黒い小豆のような。結構大きいので目立つ。

 

 オートラリアに最大種のダニがいるとか。ワラビーやらカンガルーに付くダニで恐ろしくデカい。閑話休題……


 三度スラムの近くを通り、南門へ。

 「お! 無事だったようだな。カンイチ」 

 と、カンイチの身を案じ、飛び出してきたのはヨルグ。

 「ご心配かけました。ヨルグさん。スラムの方から何か言って来てますか?」

 一応、顔役と和解、不干渉としたのだが。

 「特に何も。彼らはあそこに住んでるが、正確にはこの町の住人じゃあない。税金納めてねぇからな。俺達役人の守備範囲外だ。例え、ドラゴンが来ても放置だな」

 「……世知辛いのぉ」

 「まぁ、あくまでも仮令だ。普通は噂、風評が怖くてそんなことはしないがな。が、ここの領主はドケチでいらっしゃるからなぁ。その時にならんとわからんな!」

 やはりここの領主とは合わないと改めて思うカンイチ。

 「うん? ワシも税金払っておらんが?」

 「”冒険者”だろう? 依頼受ける度に払ってるぞ。内税だ。脱税もできねぇな! はっはっは!」

 「そうそう。活躍すればするほど高額納税者って訳だ」

 「……ふむ。……ドケチ領主様の先兵になるのは嫌だのぉ」

 心底嫌なのか、仏頂面のカンイチ。

 「ま、一応、最小限の公共事業もやってるしな。領地の上りが大きいから王への献金も多いだろうし」

 「なるほどのぉ」

 その上の親分(王様)が居るのでは仕方がない。そう、無理に納得する。

 

 ――態々、異世界よそまで来たが、どこも一緒じゃのぉ。

 そう思わずにはいられないカンイチだった。

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