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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
いざ! ダンジョンへ! 2
459/520

ダンジョンの攻防 (収束)


 …… 


 そして襲撃の時、夜がやってきた。


 幾つも破壊され、歯抜けになった魔導灯がぼんやりと灯り、光量が足りない明かりが不気味にダンジョン入口のある建屋を照らす。

 地に刺さった大矢の影は伸び、ただでさえ見晴らしが悪い広間を闇が埋める

 

 「ふぅ。また長い夜が始まるわねぇ。気合い入れましょうか!」

 {おう!}

 アカマチの激に拳を振り上げ応える兵たち。

 「隊長、昨日のように一斉に這い出てくるのでしょうか?」

 「さぁてねぇ。魔物さんのご都合でしょ。投網は温存してね。一斉に飛び立つ素振りがしたら使って」

 「はっ――! 鋼線を編み込んだものも届いております」

 「うん。上出来よ。今後は平時でも天井塞ぐように鋼線のネットを張っておこうかしら」

 「大弓の邪魔になりませんか?」

 「それもそうねぇ。何か他にいい案ない?」

 「そうですねぇ……」

 ……


 それから3時間が過ぎ……


 「はふぅ……。さっぱりでてこないわねぇ? はふぅうぃぃ……」

 欠伸しいしいカラマチ。その目の下には黒くクマが浮かぶ。

 「そのようですね、隊長」

 「もう終わりでしょうか?」

 「だといいのだけれどもねぇ」

 ……


 そして新しい朝が訪れる


 「ふぅ……昨夜は魔物の溢れはありませんでしたね」

 「ええ。本当に終わったのかしら?」

 「だとしたら、最小規模の”溢れ”になりますね」

 「そうねぇ……。でも、警戒は密に! 意表をついて昼にでてくるかもだからね! それに、未だにボス個体は見ていないわ。大物がどん! と、出てくる可能性もあるわ!」

 「「はっ――!」」

 「ひょっとしてアールカエフ様、カンイチ殿たちがダンジョンの中で頑張っておられるのかも?」

 「まさか……」

 「それ、完全否定できないのよねぇ。普通のチームなら、無理、ありえない事だけどぉ。なにせアールカエフ様だしぃ。物資だってね。ガハルト殿だってサディカちゃん、ドワーフの連中だって手練れだしぃ。若造君のイザーク君だってかなりの腕よ? それにフェンリルだっているもの」

 「そ、そうですよね。アールカエフ様は”収納”持ちですし」

 「フェンリルか……」

 フェンリル、最凶の魔物だ。それが、高名な武人の集まるチームに混ざり、このダンジョンの中にいる。静止は確認できていないが、否が応でも期待が膨らむ。頭じゃ”溢れ”を乗り越えるなど不可能だと思っていても。

 「そうそう。装備だって多少の損壊なら名工のダイインドゥの親方がどうにかしそうだしぃ。傷だってアールカエフ様の怪しい薬でどうにかしそうだしぃ。欠点のないチームよねぇ」

 「ますます真実味がわきますね」

 「イザーク殿、料理も得意ですものね」

 「そうよねぇ。案外、中で快適な生活してるのじゃないかしら。ふふふ」

 

 カンイチの話は出ない。いくら目だたぬように行動しているとはいえ、神見習いのカンイチが埋没してしまうほどの陣営の濃さだ

 ……


 それから五日、厳戒態勢が敷かれ、更に七日封鎖は維持され、軍の統治下に。その間も昼夜問わず魔物の出現はなし。

 住民の町からの避難も解除され、各々、落ち着く我が家へと帰る。

 この騒ぎに乗じた強盗や空き巣を働くものもなく、すぐにも町はいつもの活気を取り戻す


 「本当に収まったのかしら?」

 何時ものポーズ。この”溢れ”た間も手入れを怠らなかった自慢の顎髭をショリショリといじりながらアカマチが進言する

 「……ふむ」

 腕を組み思案するアカジン

 「ですが、まだ指導種はでてきていませんよね」

 「過去の文献にはそういった個体もでてくるとおあります」

 と、文献をひっくり返していた文官が意見を述べる

 「……ふむ」

 「それにしても期間が短すぎるのでは?」

 「飛ぶ個体だったし、今までよりも数が少ないと見ても?」

 「それは考えづらい……」

 ”ざわざわ” ”わいわい”

 文武官入り交えての論争に。

 「はいはい。その実はダンジョンさんに聞かないとわからないことよぉ。はっきりしてることはここ数日は出現はなし。であれば、そろそろ精兵の『調査隊』を送る頃ではないかしら?」 

 「……ふむ」

 「で、どうするのよ? 脳筋将軍様?」

 「……それがよかろうな。指揮は――」

 「モチ! 言い出しっぺのアタシがとるわぁ! 志願者募集中よ! 『決死隊』ですもの」

 「……うむ。頼む」

 「一応、地図はあるけどぉガイドとポーターを雇うわ。あと、軍のマジックバッグも出してねぇ。水と食料を満載していくわ」

 「……うむ」

 ……


 こうしてアカマチ指揮する調査隊――決死隊が編成される。

 アカマチ率いる15人の帝国軍の兵士にくわえ、雇った大きなバッグを持ったポーター2人。そして、名乗りを上げた冒険者のチーム、二つ、計10人もガイドに代わり編成に加わる。出現する魔物や、採取品も確認しながら調査するためだ。ダンジョンが変化していないことの確認も大事な任務だ

 冒険者のチームの一つは9階まで同行してから引き返し、速報を地上に伝えることになっている

 

 ……


 「それじゃぁ、いっちょう行きますか!」

 {おう!}

 アカマチの号令で”溢れ”たあとのダンジョンに踏み入れる調査隊の面々。このあと、24階でカンイチ一行と出会うことになる

 ……    <おわり>

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― 新着の感想 ―
[一言] タイトルは誤字報告できませんのでこちらに。 「収束」となっていますが、この語では溢れは終わってなくて平時の態勢で処理できる規模になったということになるでしょう。溢れが終わったことを表すのなら…
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