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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
いざ! ダンジョンへ! 2
458/520

ダンジョンの攻防 (壁の上)

 ……


 ”溢れ”てから2日目の夜。

 城壁内のいたるところに設置されている魔導灯、魔導ランプの光がダンジョンの入り口から溢れる魔物をぼんやりと照らす

 

 その揺らめく影も昼間の時よりも大量に。

 ぞろぞろと穴蔵からでてくる魔物。広間にひしめく。

 両手を広げ羽ばたくように手をバタつかせる個体も。

 その魔物たちには容赦なく、雨のように矢が降り注ぐ。


 城壁の上、兵たちも慌ただしく動くが、何度目の襲撃か。その動きは睡眠不足と疲労で明らかに精彩を欠く。

 「チッ――! 投網の準備はまだ!?」

 アカマチの緊張した声が城壁の上に響く

 「度重なる襲来で回収できずに……。穴の空いたネットの修繕も追いつかず。奴ら、鋭い爪をもっていまして」

 「職人らにも新たなものを作ってもらっていますが、間に合わず。新たに金属線を編み込んだものを制作してもらっています」

 「隊長!」

 「今度は何よ!」

 「魔導灯がいくつも破壊されて視界の確保もままなりません!」

 「ふん! かまわないわ! あれだけ密集していれば適当に撃っても当たるでしょ! 矢の在庫は!」

 「矢はまだありますが、1番、3番、5番バリスタは弦の張替え中です」

 「しかし……困ったわねぇ。飛ぶ相手ってのもね。で、奴らは? 羽あり?」

 「少々暗く確認は……」


 兵たちを見回すカラマチ。どの顔にも疲労の色がみえる

 「これが”溢れ”るってことなのね。ジワジワ来るわぁ。これがあと何日続くのか……。皆、城壁から落ちないようにね! 射手には安全帯の装備を徹底して」

 {はっ――!}

 「ええ。きついですね。早く収束すれば……うん?」

 「た、隊長!」

 兵のつんざく声が

 「チッ――!」

 城壁から身を乗り出し、暗闇にうごめく”溢れ”た魔物を凝視する

 眼下にひしめく魔物たちが示し合わせたように一斉に手をばたつかせ、飛翔する。どの個体にも被膜がある

 「外に出しちゃぁダメよぉ! 斉射準備! ……。撃てぇ!」

 

 次々と放たれる矢。矢を受け、多くの魔物を地に落とすことに成功するも、数匹は矢を受けつつも壁を飛び越え、街の方に落下、数匹は城壁の上の兵の中に落ち、混戦だ。


 「とにかく、ありったけの矢を!」


 指揮棒を振った先に魔物が飛翔する。

 「この! ずいぶんと醜いわねぇ、アナタァーー!」

 ブンと振られる腕、その鈎爪を躱し、魔物の横面に指揮棒を叩きつける。指揮棒は顎を捕らえ、魔物の顔を跳ね上げる

 「ギピ……」

 口を半開き、涎がたらり。目は虚ろ。

 「あらまぁ? 人と同じ急所なのかしら? 顎ってば?」

 「隊長!」

 「ええ、トドメ刺して。勢い余って落ちないでよぉ」

 動けない魔物に副官の剣が突き入れられる

 「ギヒィ……」

 霞のように消える魔物

 「街の方に落ちたのは!」

 「はい! 将軍の方で対処済みです」

 「ふぅ……。城壁の上ここも改良の余地ありね。もっと兵を上げられるようにしないと……手が足りないわ」

 「飛翔する相手は想定外でしたから……」

 「そうねぇ。でも、想定外なんて言ってられないわ。今後はねぇ……」

 未だ魔物を吐き出す入り口を忌々しく睨みつけるアカマチ。

 ……

 

 長い夜が空け朝を迎える。朝日の光が街を、壁の中を照らす

 と、同時に魔物の出現もピタリと止まる


 「どうやら乗り切ったようね。被害状況報告!」

 「1番、2番バリスタ大破! 4番バリスタ中破! ただいま、新しいものと交換しております! 半日はかかるかと!」

 「重症者2名!」

 「そう。それで済んだのなら良しとしておきましょうか。バリスタの再設置を急げ!」


 破壊された大弓バリスタを撤去し、新たな大弓を組み上げる。他のバリスタも弓の部品、弦が変えられる。


 「あと何日続くのかしらねぇ」

 「隊長、過去の書類ですと短くて一週間という記録が残っていますが」

 「一週間……かぁ。まだ三日目よぉ、一週間がこんなに長く感じるとはねぇ」

 眉間に皺を寄せるアカマチ。

 「矢の搬入を進めます!」

 「よろしくね」

 ……


 ……


 五日目の朝……

 

 「はぁふぅぅぃ……。昨夜も眠れなかったわねぇ」

 「どうやら日中はでてこないようですね。隊長もゆっくり休んでください」

 「油断はできないわ。でも、兵は交代して返してゆっくり休ませて」

 「はっ――! 隊長も……」

 「私は大丈夫。それともぉ、添い寝してくれる気になったかしら♡」

 「断固拒否であります!」

 「もう! 即答! はぁふぅぅ……」


 身を乗り出してダンジョンの入り口を覗き込むカラマチ。魔物の排出は止まっているが、その奥、影が動くように見えて落ち着かない。

 地面には多くの矢、大矢が刺さり、落とした岩や役目を終えた投網が転がる

 

 「はふぅぅん。お腹へったわねぇ……。ここはいい匂いがするからぁ」

 「ええ、朝食の準備でしょう。門の外でも軍の調理が始まっていますし。肉の焼ける匂いが……いい匂いですねぇ……」

 「軍らしいわねぇ。朝からお肉大量に焼いて。交代で食事にして」

 ……


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