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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 前
44/520

襲撃

 ……


 クマたちを連れ、南門から町の外に。

 何時も通る門だが、依頼初日、期待もあってか景色が新鮮に見える。気合も入ろうというものだ。

 ハンスは非番で姿が見えなかったが、副官のヨルグに挨拶して門をくぐる。

 

 今日は西の原、【不死の山】連峰のすそ野に当たる。冒険者達の主なる稼ぎ場所だ。

 門を出てからは壁に沿って西に。クマたちも我慢していた物を排泄。清々し気分だろう。

 

 「ふ~~ん。防壁の外にも家があるのじゃな。衛生状態も悪い様に見えるのぉ。スラム街という奴かのぉ」

 

 暫く進むと城壁にへばりつくように、立体的に城壁にフジツボのように張り付く小屋。もちろん、地面にも無数のテントが広げられている。その周りを粗末な木の柵が囲んでいる。

 ボロを纏った青年が袋を背負い外に。西の原に採集にでも行くのだろうか…そんな様子を眺めていると、


 「よぉ、兄ちゃん。良い毛並みの狼連れてるなぁ。高く売れそうだ。それ、俺達にくれよぉ」

 「ああ。お貴族様にも高く売れそうだなぁ。いうこと聞かねぇ狼なら毛皮にしてもいい」

 「いいなぁ! 良い敷物になるぞ!」

 ”はっはっはっはっは”

 「そういう事だ。通行税に置いて行け!」

 

 いつの間にかに、ぐるりと7人の青年に囲まれた。中には30近い者もいるが。

 どれもこれも小ざっぱりしていて着ているものからいってスラムの住人ではない。

 

 「それは困るの。この犬はわしの家族じゃ。やるわけにはいかん」

 と、きっぱりと断る。が、

 「うん? 爺さんみたいだな。じゃぁ、力ずくで頂こうかな?」

 「今なら、生かしておいてやるぞ? 命はなぁ」

 「いや、手遅れだな。町から人が捜しに来ても面倒だ。仕返しされても詰まらねぇしなぁ。バラして山の魔物の餌だな。くくく……」

 と、リーダー格か、30代年輩の男がせせら笑いながら。そして隣の男に目くばせ。

 

 ――どこまで本気なのだ? この連中は。殺して奪う? そこまでやるものかの

 と、測りかねるカンイチ。

 

 「ひっひっひ。残念だったなぁ。……ガキ!」

 ”ひゅん!”

 そういって一人の男が弄んでいたナイフをカンイチにめがけて投擲してきた。

 そのナイフ! 狙いはカンイチの喉!

 まったく、なんの躊躇もなく、『狼が欲しい』ということで見ず知らずの相手の喉にナイフを投擲してくるとは!

 

 ――! 牽制ではなく、いきなり攻撃? そして喉を狙うとは! 盗賊とはこういうものか! じゃったら!

 

 青年がただ絡んできた、面白半分に。そう思っていたカンイチだったが、相手は本気。狙いは命!

 理不尽を押し付けてくる賊どもだ。そうとなれば手加減無用!

 

 踏み込み飛来するナイフの持ち手を掴み、投擲者へと投げ返す。一瞬の行動。

 「ひっひっひ ”どぉぶしゅ!” ひひゅぅ! あ! あひゅ? はひゅぅうう!?」

 己のナイフが喉から生えてるのを見て驚くも、後の祭り、そのまま後ろに倒れ動かなくなった。

 それでもカンイチは止まらない。一番近くに居た男の袖を掴み、担ぎ上げ地面にたたきつける! 柔道の技でいう、袖釣り込み腰だ。抵抗も無く地面にたたきつけられる男。

 ”どさぁ!”

 ”ご・きん!”

 もちろん、カンイチの技は戦地仕込みの殺人技だ。

 地面に当たる瞬間に、相手の体を引き、背から落として”一本!”……などという事はしない。これは試合ではなく殺試合ころしあいだ。

 顔面からモロに地面にたたきつけられる! 柔道などないこの世界。こういった技への受け身も無い。しかも手も取られているので手をつき回避行動もとれない。

 結果、地獄への片道切符となる。 

 首の骨が砕け、折れ曲がり、男の後頭部が背に密着するように折りたたまれる。どこから見ても死んでいる。

 

 「や、やりやがったなぁ!」

 「お! おい!」

 一斉にナイフ、剣。それぞれの得物を抜き、構える。

 「そっちが先に仕掛けて来たのじゃろがぁ! 賊共め!」

 絶命した賊の袖を放し、その仲間、盗賊に向き直るカンイチ。

 チラと視線を向けると、仲間の影から、

 

 ――うん? 弓かありゃ。


 コンパクトな弓を背から外そうとしている男が。

 すかさず、”収納”から散弾銃を取り出し、弓を番えようとしている青年に向ける。イメージするは、昨今使ったスラッグ弾。

 ”かしゅん”

 ”装填”されたのであろう僅かな振動が手に伝わる。そのまま引き金を絞る。

 

 ”ずぅどどごぉ~~ん!”

 ”ばぁしゃぁああ!”

 轟音と共に放たれた鉄球が標的の青年の頭部を落とした熟れたイチジクのように爆ぜさせ、脳漿を後方にぶちまける。

 

 「な! ま、魔法使いか!」

 「魔法使い?! 距離つめろぉ! 皆で切り刻めぇ!」

 残りの者が魔法を恐れ一斉に距離を詰め、カンイチにとびかかる。

 カンイチとしては接近戦こそが真髄!

 

 繰り出される一人目のナイフを銃身の腹で受け、その勢いのまま前方に流し、散弾銃で足の甲を払う。体勢を崩し、前につんのめった男の顔面に気合と共に思い切り銃床を叩き込む!

 「せぃやぁあ!」

 ”みしゃぁ”

 「げぶぶぅ!」

 鼻骨の上から額までが散弾銃の台尻の形に陥没する。おびただしい鼻血をぶちまけて仰向けに倒れる男。もちろん、頭蓋も砕け、その庇護を失った脳は、その衝撃で豆腐のように崩れただろう。

 

 次はそのまま、銃把グリップを握り、槍のように構え、力の乗った刺突を目前の剣を振りかぶる相手の胸に!

 「はいやぁ!」

 ”ぶずん!”

 刺しこまれた銃剣は胸骨、肋骨をするりと躱し心臓を一突きだ。

 その技をもって、瞬時に二人を屠る。

 その様子を見て距離を持とうと下がった相手には、

 

 ”どぅごごぉおぉん!”

 

 再びスラッグ弾が放たれる。近距離の為、腹の中身のほとんどを後方にまき散らし果てる。

 

 「ひぃ!」

 ”ごしゃぁ!” 

 「はぶぅおおおおーー!」

 手前に居た男の懐に潜り込み、全身をバネに変え、男の顎を銃床で思い切りカチ上げる。手には骨が砕ける感触が伝わり、男はその場で5mは垂直に浮き上がる。

 首の骨は完全に砕け散り即死。恐らく脳も頭蓋に叩きつけられて砕けてるに違いない。でろりと、首が伸びたような死体。

 

 「ひ! ま、待ってくれ!」

 ”からん”

 咄嗟に武器を捨て、手を上げ、降参の意を示したものにも容赦はしない! これは命を懸けた戦場なんのだと。

 「えぇいいぃーー!」

 腰溜めの構えから、裂帛の気合を乗せた刺突! 真っすぐに繰り出された銃剣が、相手の心臓を完全に破壊する。

 

 「ふぅ。残ったのは。おまえさんだけじゃなぁ」

 もはや、立っているのはカンイチともう一人。

 最初に突っかかって来た年長者、の30台の男だ。仕切り屋なのか、この集団の頭には違いない。

 すでに武器は捨て、足ががくがくと震えている。

 

 「ひ、ひぃ! わ、わかった! わかった! 俺が悪かった! 降参する! 助けて、たす――」

 ”ばしゅ!” 

 グリップを握り、思い切り横に振られた散弾銃。その先端に装着された銃剣が見事に男の首を、ぽぉーーーーんと、ボールのように刎ね飛ばす。

 

 「お前さんは、止める立場じゃろうが」

 ぐるりと惨状を見渡す。少々やり過ぎた感はあるが、犬と己の命を狙われたんだ。仕方ないだろう。

 放った”銃弾”が気になったので、人であった物の残骸をほじり探してみたが発見できなかった。スラッグ弾なら、貫通せずに体内に残りそなものだが……。

 

 ――役目を終えて消えたのだろうか。

 

 周囲を探してみたがそれらしき鉄の塊は発見できなかった。

 

 「さて。どうしたものかのぉ。こりゃぁ……」

 このまま放置で良いものか、発砲音で見物人も集まってるし。正当防衛とはいえ、やってしまったものには変わりない。

 

 過剰防衛?

 己の命を狙われて、その襲ってきた相手に手加減をしなくてはならない。そんな訳の分からない法律はこの世界には存在しない。命を狙って仕掛けて来た代価、それは己の命で支払われるものだ。


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