何か問題でもあるか? (宝箱発見)
……
「皆の衆、ご苦労じゃったの」
と、労うカンイチ
「す、すごかったです! 親方!」
鼻息の荒いイザーク。
「う~~む。ゴーレムは消えてしもうた。持っていたエメラルドの武器も盾ものぉ。残ったのはこいつじゃ。これでも十分以上のお宝じゃがの……」
と、先ほど入手したエメラルドを披露する。拳大の四角い巨大な結晶だ
「だが、親方。あれだけの巨体。全身ドロップするほうがおかしかろうよ? 畑はたんと買えるじゃろうが」
「うむ。そうじゃな。ダンジョンが赤字になってしまうじゃろうよ」
”はっはっはっはっは!”
それもそうだと笑いがおこる。全身ドロップ。何カラットになるやら
「こっちも今回は全身ではなくて、銀の延べ棒だったよ親父。50~60kgくらいあるかなぁ」
と、ミスリール
「ああ、こちらもだ。30階のは全身だったがな」
と、ガハルト
「おぅん? あれで予算が尽きたのじゃろか?」
「かもしれないねぇ。ん? 先に進む扉が開かないねぇ。まだ出てくるかもわからない。警戒を!」
と、ディアン。
「おうさ!」
すると石柱が光り、
宝箱を吐き出す。
「お? おお! 宝箱らしい宝箱じゃな!」
海賊映画に出てきそうな形状の宝箱に興奮するカンイチ。大きさも今までの宝箱の中でも最大だ。いやがおうにも期待は膨らむ。
「そうなんです? カンイチさん」
「今までのは木箱やら、りんご箱みたいなものじゃったろ?」
「そうです?」
と、首を傾げるイザーク。別に箱などどうでも良かろうと。どうせ開けたら消えちゃうのだし
「じゃぁ、罠みるねぇ~~」
カンイチの言うところの、”宝箱らしい宝箱”のおかげか、いつものようにあっさりと解除とはいかず、ディアンも加わって取り組むことに。さすが細工師のディアン。その指先も滑らかだ
「これでいいだろう……。解除成功!」
と、ミスリール
「ふぅ……。罠の解除に重ねるように罠……手が込んでるな。これで中身、空だったらオレ、暴れるぞ」
と、ディアン
「暴れられても困るで。じゃぁ、早速、ディアンさんや開けとくれ」
「いいのか? カンイチ?」
「いいの? 師匠? 宝箱らしい宝箱でしょ?」
「ま、誰が開けてもかまわんじゃろ」
どうせ、プールするのだし。開けるわくわく感を皆で共有するために順番にしてるに過ぎない。
「どれ、どれ! ”ぱかり!” ううん? 背負い袋? も、もしや、マジックバッグか?」
宝箱から出てきたのは青い背負い袋、所謂リュックサックだ。大きさも邪魔にならないようにか、子供用のように小さい。
普通のパーティであれば拍手喝采! 歓声もあがるが、このチーム。沢山のバッグを所有してる為か感動が薄い。
「ふむ。性能(容量と時間の経過)如何、じゃな。検証せようか」
と、手に取り、調べていたダイインドゥ。そこに、
『ふむ……。今まで以上の存在を感じるが。どれ、我が使おう!』
と、フジ
「はぁ? フジ? こいつを背負って歩くのかの?」
フンフンとバッグの匂いを嗅ぐフジ。気に入ったようだ
「相変わらずオシャレだねぇ。フジ殿は」
『何か問題でもあるか? お爺?』
「で、フジよ。どうやって物の出し入れをするんじゃ?」
『特段、腕を突っ込まなくともよかろうに? 其の方らだってバッグに物や獲物をいれる時、かざしているだけだろう。どれ、貸してみよ。あとはなにか適当なものはないか? そうだ。干し肉の入った麻袋をだせ』
「お、おう?」
ディアンが背負い紐を調整しフジに背負わせる。カンイチが出した干し肉の入った麻袋に手を置くと”ぱっ!”と麻袋が消える。で、”ぱっと”現れる。
「こ、こりゃたまげたの」
『うむ。これで飢えることもあるまいよ』
と、再び干し肉袋を仕舞う。
『もっとだせ』
「そ、そりゃ、構わん……が。リック(リュックサックのこと)背負ってると、もうイザーク君を乗せられぬのぉ」
「……カンイチさん」
なんとも残念な視線を向けるイザーク
『乗れようが! 我が駄目でもクマが乗せる。問題あるまい? うむ……少々、座りが悪いな』
フジが体を揺すると、背のバッグは左右にずれる。
「では、腹に回す帯でも付けましょうか、フジ様」
『うむ。頼めるか。ディアンよ』
「ふぅ……。こういった次第となったが、ええかの? 皆の衆」
「ああ、問題なかろう。フジ様なら守る力もあるしな」
「はい。フジ様ならば」
「うむ。分け前を得る資格だって十分にあろうさ」
と、満場一致。このバッグはフジのものとなった。
「どれ、扉も開いたで、先に行こうかの」
……
せっかく下りてきたのだしと採取と採掘に精を出す面々。今回の攻略はここまでだからと
「はぁ……41階かぁ。すごいですね、サディカさん」
「ああ……オレも初めてだ……イザーク。初めてでここに来ちゃうんだもの。”収納”って凄いよなぁ。飯も腐らねぇし」
「ここに居る皆、初めてじゃがな」
「そうですね、親方……」
「”採掘ポイント”頼むぞい。その”収納”様で皆、持っていけるんじゃ。今日はこの後、野営したら帰還じゃからな」
「了解です!」
……
「何もいないな。カンイチがいうように予算が尽きたか?」
「さてな。ま、何も出ないに越したことがないがの」
と、フジたちに続き、前をゆくカンイチとガハルト。
「ま、脳筋の誰かさんはつまらぬだろうがな」
くるくる、ぶんぶんと、トンファーを回すガハルトをチラと見る。
「ふん」
「お~~い! カンイチよぉ、採掘するで止まってくれ」
「おうよ。親方。ガハルト、待機じゃと」
……




