穴ぁ空きそうじゃな (採掘現場)
……
”カーーン!” ”カーーーーン!” ”カーーン!” ”カァーーン!”
「アンタ! なかなかいい石だねぇ!」
鶴嘴を肩に担いで石を吟味する一家。
「おう! 人がいないせいかのぉ、ほれ」
「上に帰ったら加工するの楽しみだな」
と盛り上がるダイインドゥ夫婦
”カァーーン!” ”カーーーーン!” ”カーーン!”
「親父! これは?」
「おぅん? 赤奇鉱石じゃないか。こっちは黄骨鉱石だの。珍しいな」
一家が盛り上がっている所に
「のぉ、親方、ワシもやっていいかの?」
と、鶴橋を肩に担いでカンイチ登場。
「おうん? カンイチかぁ。……そうなぁ。ダンジョンの壁に穴ぁ空きそうじゃな……」
「ああ、止めておいたほうがいいのじゃないかい? ほら、カンイチだって胃袋の中から穴空けられたら激怒もんだろうよ?」
「う……。言い得て妙じゃのぉ。ディアンさん」
「うんむ。何が起こるかわからんでなぁ。魔物に鶴嘴刺すくらいなら問題あるまいがなぁ」
「ん? 親父、師匠ならゴーレムも鶴嘴で一撃じゃない? ぶっすりと。鎌でもアイアン・ゴーレム斬れちゃうかも?」
「かもしらんな。だったらワシら以上じゃ。はっはっはっはっは!」
そっと担いでいた鶴橋を収納に仕舞いすごすごと退場するカンイチだった
”カーーン!” ”カーーーーン!” ”カーーン!” ”カァーーン!”
「こうやって鉱石や金属やら、運が良けりゃ宝石が出るのじゃなぁ。おう、コロコロと」
と、ダイインドゥたちの採掘風景を見ながら。なにもない壁に鶴橋をあてると、ポロポロと転がりでてくるふしぎな光景にカンイチも釘付け
「ここらの”鉱石”はそこらの宝石なんぞよりも高いぞ、カンイチ。ダンジョンの鉱石は純度も高い。赤奇鉱石なんぞは生成すると赤びかりする金属になるんじゃ。宝飾品によぉ使われるの」
と、麻袋の鉱石を披露するダイインドゥ
「伝承じゃぁ、深くなれば、深くなるほど”純度”、含有量も増えて、終いにはインゴッドになるといわれてるの。ま、誰もそこまで至ったものはおらんがなぁ」
「ほ~~ん」
「宝石の粒も大きくなるって伝わってるぞ」
手のひらに幾つかの宝石をのせてディアン
「さすが親方。採掘専門にやってるやつでも、ここまで一箇所でたたけないよ」
そこにサディカが顔をだす
「ん? サディカさん、それは?」
と、カンイチが興味津々に聞き返す。
「こうやって壁を叩くのにも”技”がいるんだよ、カンイチさん。たとえば、オレが鶴嘴振って3回としたら、採掘専門の冒険者連中が5回、で、ドワーフ族は10回、で、ドワーフ族の親方衆はそれ以上てな具合にね。採掘物の質にだって影響するらしいですよ」
「ま、当然じゃな! ワシらは生まれたときから槌握っておるんじゃ」
と、力こぶをこさえるダイインドゥ
「収穫物にそのような差がのぉ。そいつは大変じゃなぁ」
「ドワーフ衆がドワーフ以外のチームに居るのも稀だし。技能の高い親方連中は鍛冶で十分食っていけるし? わざわざダンジョンなんかに入らなくても食べていけるしね」
「そうじゃなぁ。どうしても必要な金属がある時や、偶にもの好き連中が集まって入るくらいか。受注物くらいじゃないと特殊な金(属)使わないしのぉ。買ったほうが早いわの」
「ああ! なにせ、ダンジョンは禁酒しないとだからな!」
と、ディアン
「うんむ。……納得じゃわ」
「まぁ、酒もあるがの。が、”鉱山型”は別だぞい、ちゃんと”出勤”しとるでな」
「そうなぁ。【アモヒゴーナ】じゃったか。鉱山の町だけあってドワーフの町のようになっていたものな」
”鉱山型”ダンジョンをいくつか有する【アモヒゴーナ】。多くのドワーフ族の住む町だ。
また【罪人の終着の町】という異名もある。そう、過酷な”鉱山送り”のダンジョンもある。大抵の罪人はその作業に耐えられずダンジョンの”養分”となる
「うむ。あすこの鉱山型は低層階から採掘ポイントも多くあるでな。まぁ、”いいもの”を得るには深く潜らにゃならんがな」
「ふむ。上手くいかんのぉ」
「そりゃ、カンイチがよく言う”餌”だからな。そう簡単には貰えないさね」
「じゃの、ディアンさん」
「でも、すごいパーティだよなぁ。”収納”に沢山の”マジックバッグ”……。今回の”採集物”だけで売上、いくらになるんだか?」
とはサディカ。
「どうじゃかなぁ。なぁ、親方?」
「うん? まだまだ売るほどは溜まっておらんぞ。皆の武器の改修にも使うでなぁ。売るのは(ダンジョンの潜る回数が)3回目以降じゃろさ。その頃には余剰分がでるだろうさ」
「あ、ゴーレムは売れるよ? 師匠。居間に置くのじゃなければね!」
「オレの方ももう少し”石(宝石のこと)”が欲しいねぇ。商会に預けるにしろオークションに出すにしろ」
と、ドワーフ一家。採取物である、金属、宝石と真っ先に金子に化ける部門だ。
「だ、そうじゃ。”薬草”だってほぼアールがガメるじゃろうしの。香草の方もどうじゃかなぁ。大して金にならんのぉ。うん。困ったもんじゃ」
「は、ははは……。でも、"武具”も"霊薬"も"魔道具"さえも、チームの中でできちゃうんですよね……やっぱり凄いな。どこのチーム、クランだって敵わないわ」
「ふふふ。"飯"もじゃぞ。サディカさん」
「そうですね。"力”になりますものね」
「全ての基本じゃ」
……




