ワシらに任せてもらおう (対ゴーレム戦)
……
「ミスリール! サディカ! 下がれ!」
「え?」
ダンジョン、30階層の試練の間。”石”ゴーレム6体を、ガハルト、サディカ、ダイインドゥ。そしてクマたちが駆逐し終えたところだった。
ガハルトが異変を感じ、一息中のサディカ、ドロップした鉱石の鑑定をしていたミスリールに警告を発する。下がりながらサディカたちが見たもの、再び輝く石柱。そして、新たに試練の試験官を次々と吐き出す。
「ありゃ、”鉄”か? そして……”銀”……? お、おおぉ……」
「お! おほぉお!? か、格好いいのぉ! イザーク君!」
「は、はい! カンイチさん! す、すげぇーー! すげぇーーーー!」
と、”銀”ゴーレムを前に目を輝かせる、ダイインドゥ、カンイチ、イザーク
「こらこら。君たち……。これだから男どもは……」
と、呆れるアールカエフ
「両方とも全身鎧みたいですね! 格好いい!」
「うむ。大きすぎてガハルトでも着れんのぉ」
「いや、そこじゃないのじゃがなカンイチ。フジ様! ここはワシらに!」
『うむ。よかろう。存分に戦うといい!』
石柱が吐き出したのは、黒光りするアイアン・ゴーレム二体。そのいずれもが、大きなハンマを装備している。
そして、中央、白金に輝くシルバー・ゴーレムその手にはとにかく大きいバスターソードが。刃渡り、2mはあるだろう。
「よし、任せろ!」
と、一歩踏み出すガハルト。
「いや、ここはワシらに任せてもらおうかい! ディアン! ミスリール!」
「おうさ!」
「おう!」
と、ドワーフ一家。
ディアンとミスリールは両手に鍛冶用のハンマ。
「お、おいおい、親方! そんな小さなハンマでどうにかなる相手ではあるまい!」
と、ガハルト。
「ふふん! 鍛冶師の技! とくと見とるがいい! いくぞ!」
「お、親方!」
鉄にはディアンとミスリール。銀にはダイインドゥが当たるようだ。
「うん? これ倒したら、次は金ピカゴーレムかな? ねぇ、カンイチ?」
と、アールカエフ
「さての。じゃが、こんなところで出てきていいのかの?」
そこに、
「立派なイレギュラーですよ、カンイチさん! 銀なんかそうそうでてきませんよ!」
と、興奮して、少し上気しているサディカ。
「ほほぅ。大丈夫かの、親方たちは」
「親方たちも自信ありありだし? ガハルト君も控えてるし? うんむ! みせてもらおうか! その鍛冶師の技とやらを!」
「まぁ、そうなのじゃが……。が、アールよ。なぜにそんなに偉そうなんじゃ」
……
”がぁん! がーーん! ががぁん!”
試練の間に甲高い金属の打ち合わせる音が響き渡る。
ガハルトの心配を他所に、器用に槌を当てていくドワーフ一家。
「さほど強い一撃には見えんが……。あれで倒せるのか?」
と、首を傾げるガハルト。いつもは力押しのダイインドゥ、ディアンともに、こつこつとタイミングで当てているように見える。相手が武器を振れば、肘、肩。前に出てくれば膝。隙があれば、踏み込み、腹部と。
よく見れば、いずれの打撃も寸分の狂いもなく、同じ場所を叩いているのがわかるだろう。
「ふむ。親方も自信があるいうで、ここは任せようさ。ガハルトよ」
「うむ……」
”かぁん!” ”かかーーぁん!” ”ごすぅん!”
”がん!” ”がぁん!” ”きぃん!”
敵の攻撃の時も、的確に相手の武器や手の甲を叩き、軌道を変える。出足の膝頭に鎚を落とすのも忘れない。休み無く攻撃を当てていくドワーフ一家
その攻防が20分も過ぎたか。
「すごいですね……。こんなに長い時間」
と、イザークが驚きの声を上げる
「うむ。思った以上に頑強じゃの、ドワーフ族というのは。それにあの集中力。疲れ知らずじゃ」
カンイチもまたそのドワーフ族のスタミナ、集中力に舌を巻く。
その隣では脳筋大王ことガハルトも鼻息荒く見守る。
”かこぉん!”
”ごとり” ”がららぁん”
「うん?」
「ああ!」
幾撃入れたか。ミスリールの相手をしていた鉄ゴーレムの右手首が、”ぽろり” 引っこ抜けるように落ちた。同時に武器の大きな両手持ちのバトルハンマも。
己のなくなった手首を不思議そうに見ている”鉄”ゴーレム。ゆっくりとかがみ、左手でハンマを拾おうとする。が、打撃を食らい、強度が落ちたせいか重量物のバトルハンマを持ち上げる前に左手首が崩壊する。
「な!?」
驚き、さしものカンイチもあんぐり
”こぉん!”
”ごどどん!”
お次は、ディアンの相手の鉄ゴーレム。こちらも同様、引っこ抜けるように左腕が肩からおちる。すっぽりと抜けるようにあっさりと。
「よぉし! あとちょっとだ! ミスリール!」
「おうよ! 母ちゃん!」
槌の回転数があがる。
「い、いやはや……。アレは”解体”している……のかの。イザーク君」
「そ、そうかも? でも、とれた手とか消えませんね……。カンイチさん」
「じゃな。全部ドロップじゃったら……。銀色の、居間にでも飾ってやろうかの?」
「いいですねぇ~~それ!」




