ゴブゴブホッブホッブホブ~~! (ボス戦)
……
20階層のボス部屋に到着。準備をし、部屋に踏み込む。
もう見慣れた石柱。10階のボス部屋の時のように石柱が光り、わらわらと青ゴブリン、ホブゴブリンを吐き出す。20体ほどだろうか。
フジの合図でイザークとクマたちが前に出る
「ゴブゴブホッブホッブホブ~~!」
と、前に出たリーダ格のホブゴブリンの顔が歪み大笑いする
「ふぅぅ……」
気合をためるイザーク。ナイフと十手を逆手に持って。その武具にもまったく震えはない。
最初の攻略の時はホブゴブリン相手に恐怖を感じていたが、今の彼にはそれはない。ここに至るまで散々戦ってきた自信だろう
「ゲッギョォ!」
リーダー格のホブゴブリンの一声が戦闘開始の合図となる。ゴブリンたちが展開し陣形を敷く。そこにクマたちに指示を出しながら突っ込むイザーク
「クマ! ハナ! 左右の弓お願い、シロはこのまま!」
”ぅおおん!” ”ぅわん!” ”ぅをん!”
イザークの指示通り展開するクマたち、サイドにいた弓持ち押し倒されすぐに排除される。外側から押し包むように襲いかかる、クマとハナ
イザークはというと、シロとともに中央に。まずは、大きな盾をもつホブゴブリン。このホブゴブリンは特殊個体か、やたらと腕が太い個体だった。だが、シロの体当たりで体勢を崩した所にイザークが懐に潜り込む。脇腹、胸とナイフの連撃をくらい、息絶え消える。
”がらん” ホブゴブリンが消えると同時にその盾が床に転がる。盾は残ったようだ。
その盾持ちに守られていたホブゴブリン・リーダー。他の個体に比べスリム。両手に大型のナイフをもち、イザークを迎え撃つ。己の強度に自信があるのか、細腕の人間になぞ多少斬られても構わないと、防御を捨てた攻撃を重視した戦い方だ。
周りのゴブリンたちもリーダーの応援に行きたいところだが、クマらに弓持ちも狩られ、隊列も崩されている。クマたちの牙や爪で一体、一体と屠られ消えていく
「ゴブゥ!? ホブゥ!」
慌てるホブゴブリン・リーダー。仲間が減っていくのもだが、眼の前の細腕の人間が硬すぎる。力任せにナイフで切りつけてもあっさりと受け流される。人以上の筋力、斬撃の回転数を上げても距離を取られ、切りつけたとて傷は浅い。
挙げ句、十手に絡め取られ、左手のナイフ、一本を失う羽目に
「ゴブブゥ、ホブーーーー!」
何を思ったか。よほどイザークに腹を経てたか。両手を上げて、威嚇の叫びをあげるリーダー
その隙を逃すイザークではない。持っていたナイフを投擲、見事、腹に。
「ホ、ホブゥ?」
まさか、ナイフが飛んでくるとは思ってもいなかったリーダー。腹に刺さったナイフに視点を落とす。
そこに襲いかかるイザーク。十手でリーダーの側頭部を殴りつける。
”びし!” ”ばし!” ”びっし!”
「ホブ! ボブ! ホブぅ!」
3発食らったが流石リーダー。残った右手のナイフを勢いよく突き出す! それにタイミングよく十手を合わすイザーク
”きゅりりりりぃぃぃーーん!”
火花をちらしながら甲高い音を立てる、ナイフと十手!
”かちん!”
ナイフの柄が十手の鉤に合わさる、そのタイミングで引き落とし、手首を返すイザーク。
”ごきり”
手首を砕き、見事、リーダーの手より、ナイフをもぎ取ることに成功する。
「ホ、ホブ……」
武器をもぎ取られた両手を交互に見るリーダー。
”じり……”
にじり寄るイザーク。この頃になると他のゴブリン軍団はすでに壊滅。クマたちも睨みを利かす
「ホゴブゥ!」
一瞬身をかがめ、見事な跳躍を見せるリーダー。空中で爪を剥き、その右手の爪でイザークの顔を狙う。
下がらずに踏み込むイザーク。そして十手を突き出す。
”ぼぐぅ!”
十手の長さ分の有利か、先に十手の棒芯の突きがリーダーのみぞおちを捉える。
「ゴブォボゲェ!」
カウンターで突きをくらい、撃墜されたリーダー。悶絶しながら床に仰向けにひっくりがえる。そこに、イザーク。腹に刺さったままのナイフを掴み、更に押し込む。そして力任せに斬り上げる。
「ゴブゥ……ゴブゥッ」
消えていくホブゴブリン・リーダー。イザークの勝利だ
「ごくろうさま! クマ! ハナ! シロ!」
体力もついたか、へたることもなくクマたちのもとに駆けつけるイザーク
”ぅおん!” ”ぅわん!” ”ぅをん!”
クマたちの激励をうける。
うむうむと頷くカンイチ。若人の成長を喜ぶ
こちらは、ドロップしたナイフ、盾に喜ぶドワーフ親子
「おうおう。こいつも魔鉱石のようじゃな! これはいい」
「デカい盾! 鋳潰したら一振りの剣にできそうだね!」
――おん? あんだけ大きな盾だ。二~三振りできそうじゃが……
その辺りを聞いてみる
「んむ。打てば減る。余計なのは燃える。芯の良いところだけをの。帰ったら早速の。魔鉱石、鍛えれば魔鋼の剣となろう」
「なるほどのぉ」
「ほう……魔鋼の剣か」
にゅう、と顔を出すガハルト。特に武具の話になると耳の性能が良くなる
「うむ。ウチで扱えるのはガハルト殿くらいじゃろな。少々重い。あとはワシらくらいなもんじゃ」
「オレも大斧、新調しようかな~~。魔鋼で」
「ふむ。皆に頑張ってもらって集めてもらわねばな、ディアンよ」
「オレはどうやったら魔鋼に粘りをもたせられるか研究だな!」
と、ミスリール。ドロップ品を手に湧くドワーフ一家
「それじゃぁ、ますます頑張らんとの、イザーク君」
「は、はい!」
……




