そうですよね。 (親子)
……
「せやぁ!」
”ばっきゃぁ!”
「ンギョォ~~ン!」
6体の群れで現れたゴブリンの上位種ホブゴブリン。その最後の一体の頭がサディカの操るトンファーで叩き割られ、ふぅと消える。ドロップ品のナイフ一本を残して。
「うむ。全くといって危なげないのぉ。まだまだ余裕がありそうじゃなぁ」
うんうんと腕を組んで頷くカンイチ。
「そ、そりゃぁ、カンイチさん。そもそもが”金”の冒険者ですよぉ、サディカさんてば……」
「まぁ、そうじゃな。うんむ! イザーク君も鍛錬あるのみじゃ!」
「は、はいぃ!」
……
「ほぉう。ナイフを落としたのぉ。ミスリール」
「おう! ふむふむ……」
ダイインドゥに呼ばれナイフの査定を行うミスリール
「うん、金(属)はいいね。魔鋼鉄かも。比重が随分と重いなぁ」
「どれどれ。ふむ。そのようだの。こういった武具を集めて鋳潰して……」
「弩の弓部に使うか……。それとも剣に……」
ドワーフ父娘は新たな武具に思いを馳せる
……
「どうだった? 父ちゃん」
戦闘を終わらせガハルトの下に向かうサディカ。
「そうだな。まだ余計な動きがあるな。初撃の踏み込みが……」
と、身振り、手振り。それからトンファーを打ち合わせるガハルト父娘。
……
「なんかいいですね。ああいうの……」
と、ガハルトとサディカの様子を見てぼそりとイザーク
「ん? ご両親のことでも思い出したのかの。イザーク君。ここさ出たら、文の一つでもだせばどうじゃ」
「お、俺、家、飛び出してきちゃったから……。は、ははは……」
と、なんともバツが悪るそうなイザーク。その背をポンとたたくカンイチ。
「なぁに。文であろう。面と向かってというわけじゃなし。生きてることを親御さんに知らせるのも孝行じゃわい」
「そ、そうですよね……」
「ま! それには、お互い、ここから生きて出んことにはの!」
「で、ですね! カンイチさん!」
まっすぐカンイチの目を見てぐっとこぶしを握るイザーク。
うんうんと頷くカンイチ。そこに
「うん? ホームシックかね? イザーク君! 前にも言っただろう! 君は僕の息子? 孫? のようなものと! さぁ! さぁ!! もっさり甘えさせてあげるから、僕の胸に飛び込んできたまい? さぁ!!!」
と、いつの間にかにすぐ近く、にっこりと満面の笑みで両腕を広げているアールカエフ。準備万端に
「お、お気持ちだけで……とても嬉しいです。アール様……」
ペコリ。頭を下げ、辞退するイザーク。
「うむ。台無しじゃのぉ。アールよ」
「え! ええぇ!? なんで?」
腕を広げたままこてんと首をかしげるアールカエフでした
……
……
「ふぅ……」
ドサリと、腰を下ろすイザーク
今、3体のホブゴブリンを同時に相手し、己の力だけで倒しきったところだ。通路の幅を利用し、粘り強くダメージを積み重ねて。
「うんうん。だいぶ十手術もモノにしてきたの」
「カンイチさん?」
「次の課題は体捌き、”体術”じゃな。もうちぃと重心の移動に気を使えば威力も上がろうさ」
「うむ。足運びは随分とよくなったな。イザーク」
と、戦闘を見ていたガハルトも頷く
「あ、ありがとうございます!」
『ふむ。その辺りは場数をこなせば勝手に身につこう。さぁ、乗れ! いくぞ! イザークよ!』
「は、はひぃ!」
背にイザークを乗せ、クマたちを率い、ダンジョンの闇にきえる
「ん。行ってしまったのぉ。今日はここで野営か、カンイチ」
「そうみたいじゃな。親方、準備を頼むわ。どれ、ワシは風呂の準備でもせようかの。イザーク君も疲れて戻ってこよう。ガハルトよサディカさんと警戒頼むの」
「おう」
人型の魔物。鍛錬にちょうどいいとすこし時間をかけることに。なんだかんだといっても、一番の敵は同じ”人間”だ。仮想敵にはもってこいと
16日目 地下20階 ボス部屋
「ようやっと、ここまできたの」
感慨深く、”試練の門”を見上げるカンイチ。
「ホブゴブリン戦に重きをおいたからな。イザークの腕もだいぶ上がっただろう? ここまでに何体狩ったのやら」
と、幾分たくましくなった仲間に目を向けるガハルト
「そういえば、この先に”賊”どもがいたのじゃったなぁ、また湧いてるとええのぉ」
「そう賊だってポンポン湧きませんよカンイチさん。もう……。賊、”財宝”に見えてません?」
と、イザーク。マジックバッグの希少なアイテム。金貨、採掘品等かなりの実入りがあったのは確かだ。
「イザークの言うとおりですよ。カンイチさん。でも、それなりの金のあるゴロツキの集団やら、盗賊団がまず入らないと。ほら、チンピラ数人じゃ魔物にやられてすぐに死んじまいますよ。それに、賊に協力していた『迷宮ギルド』の方もだいぶすっきりしたし」
と、サディカ
「そうですねぇ。ギルドの協力がないと難しいでしょうね。そもそも極悪人はダンジョンに入れないし」
「ギルドがちゃんと機能してれば”賊”も湧かぬということじゃな。それだけ大きな金子が動いていたというわけかの」
「そうでしょうねぇ。ギルドやら国がその気になれば、ダンジョンを封鎖して物資を送るのを停止して、餓死という手もとれますしね」
と、イザーク
「お貴族様や、ギルドの御偉いさん、暗躍する商人たち……ま、どこ行ってもこの構図はいっしょだな」
と、吐き捨てるガハルト
「そうじゃの」
『うん。話は終わったか。では参ろうか!』
「そうなぁ、魔獣殿には関係のない話じゃな」
……




