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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
フィヤマの日々
42/520

神具

 ……


 「貴方、めちゃめちゃ上手いわね……。植物の扱い」

 

 午後の実習。薬草採取方法の研修だ。実地ではなく、プランターに植えてあるものを使う。こうなれば、この世界でも農業志望、地球じゃ経験者のかんいっつあんだ! 株分け、植え替えなんでもござれ。本領発揮というものだ。

 プランターで根詰まりしていた薬草も今では株分けされて悠々と。ありがとう! と礼が聞こえてきそうなほどだ。

 

 「ふむ。まぁ、こんもんじゃ……こんなものでしょう」

 「ええ。文句なしの合格ね。解体の方もドルの親方から聞いてるわ。これで研修を終わりにします。ご活躍期待しています」

 「ありがとうございました!」

 久しぶりに土いじりが出来て満足なカンイチだった。


 その足で鍛冶屋に向かう。夕食の屋台も多く出ていたので、つまみになりそうな物や、遠征に行ったときを想定して買っていく。いつでもほかほか、出来立ての料理が食べられる”収納”様様である。

 

 「こんにちは~~。まだ大丈夫?」

 ”ガラリ”とドアを開け、縁台のような場所へと腰掛ける。

 製品の整理をしていたのか、のそりとダイが顔を上げる。

 「うん? カンイチ。今日は随分と遅い時間じゃな」

 「ああ。親方、聞いてくれ。ギルドに行ったら研修をまだ受けとらんと言われての。今日一日、閉じ込められて研修じゃ」

 「そいつは災難じゃったの。茶……いや、もう、酒じゃな! 一杯飲んでけ。酒!」

 「いいのぉ。途中、串焼き買って来たわ。こいつで軽く」

 背負いバッグから出すように、”収納”から先ほど求めた紙袋に入った串焼きを出す。

 

 「いらっしゃい、カンイチさん。まったく! どっちが親父か分かんないよ! ジジィ臭い! 酔っぱらう前に検品済ましてくれよ! 親父!」

 「酔うほど飲まんわい! どれ…。ミスリールは、隣行って腸詰貰ってこい」

 「はいはい。しょうがねぇな」

 文句言い言い出ていくミスリール嬢。毎度のことなのだろう。

 

 「良しと。これじゃ。これ」

 布を広げると、中から、正に、二式銃剣。

 カンイチの絵の通りのモノが現れた。

 「ふむ。30年式でも良かったのぉ。もう一本、少々、厚くなっても良いで、20cm程長くしてくれんか?」

 「わかった。なら少々、鋼にレア素材足してみるか……ふむ」

 「手に取っても?」

 「うむ。見てくれ」

 ズシリと手に来る忘れかけた重さだ。

 「うむ。バランスがええの。量産品と違って丁寧な仕事じゃな。刀だって打てるのじゃなかろうか」

 ”ひゅんひゅん!”

 順手、逆手にと握り振ってみる。何の素材だろうか、手にしっくりと良くなじむグリップだ。

 

 「ただいまぁ~~。うん? 良いようだね。カンイチさん」

 両手いっぱいに何やら買い込んできたミスリール嬢。

 

 ――そんなには食えんが

 

 「う、うむ。まったく問題ない。流石親方じゃな!」

 おもむろに”収納”から散弾銃を出すカンイチ。

 「う~ん。この銃剣なら、三八式の形状がええのぉ。新型の九九短……うん?」

 「うん? カンイチは”収納”持ちかいの ! !!!」

 「お、親父!」

 カンイチの意を汲んでか、散弾銃が三八式歩兵銃の形状に変形する。

 が、心なしか、いや、かなり、銃身バレルが太い。そして、銃自体が大きい。

 「散弾銃はそのままで格好だけ寄せたのかの? しかし、不格好じゃなぁこれは」

 再びスルスルと元の散弾銃に戻る。

 

 「な、なんと、こ、こりゃぁアーティファクト……」

 「は、初めて見た……」

 目を見開く父娘のドワーフ。

 その目、体は歓喜に震え、押さえねば、手が散弾銃に伸びるほどだ。

 

 「うん? あーちはくと? 何じゃそれは?」

 「うんむ。神が下ろされた品々といわれていての。ダンジョンや、古い遺跡などにあるんじゃ」

 顔の冷や汗をぬぐいながら、ダイが言葉を続ける。

 その目は散弾銃に注がれ、一切他を映さない。

 「そう。人の手によるものではない……。易々と扱えるものでもないのじゃ。そういう訳で、己が1とする権力者が欲するお宝という訳じゃ。扱えなくとものぉ」

 「ふむ」

 確かに神様の手によるものだな。と納得顔のカンイチ。

 なにせ、上位神より直に授けられたのだ。

 「ふむ……。心当たりがあるんじゃな、カンイチよ。ミスリール他言無用じゃぞ」

 「う、うん。火の神様に誓って!」

 

 ――神様? うん? そういえば、神社のようなものがあるのかのぉ。後で聞いてみようか。お礼せにゃいかんの。

 などと呑気に考えているが、ダイ親子はそれどころではない。自由に姿を変える”神器”が目の前にあるのだから。

 散弾銃の先のブラケットに銃剣をセット。少々不格好ではあるが……まぁ、先ほどの三八式歩兵銃モドキよりかは良いだろう。そのうちに慣れるだろうと納得。ブンブンと、型をなぞるように刺突、銃床打ちを繰り返す。

 

 「ふむ。……良かろう」

 「カンイチよ、その柄の部分、何か仕掛けがあるのかの?」

 ジッと見ていたダイが口を開く。

 「まぁ、親方ならよかろう。こいつは”銃”といってな。ここの穴から鉛やら、鉄のつぶてが出る。威力は知れとるがの。人くらいは十分に殺傷せしめるとおもうがの」

 銃口を指し示しながら説明をする。弾は込めていないから安全だ。何せ先に念じて装填する必要のある魔道具だ。

 

 「……ふむ。か、カンイチよ……触らせてもらう訳には……」

 「親父!」

 「仕方あるまい! 鍛冶屋の夢みたいなもんじゃ! 見たことのない金属……ふぅ」

 カンイチにも分かっていた。己の右腕を抱き、耐えていたダイを。それに十分信用できる。

 「ダイの親方なら良かろう。が、授かった時にワシ以外扱えんと仰った……気を付けろよ」

 「う、うむ。うぐ!」

 そうっと渡された、散弾銃、ダイの手に渡った瞬間、ダイが苦悶の表情を浮かべる。慌てて取り上げるカンイチ。

 「親方! 大丈夫か!」

 「う、うむ……ものすごい重量じゃったわい。なるほどのぉ。貴重な体験をさせてもらった。ありがとうよ。カンイチ。が、少々目立つな……さっきの”変化”の力を使って、木のようにか真っ黒にするとかできんか? 虹色の金属は流石に不味いぞい。悪目立ちする」

 「なるほど……黒塗りか……黒く、黒く……漆黒に……」

 カンイチが望むと、みるみる黒く染まっていく散弾銃。装着されている銃剣もまた浸食されるように染まっていく。艶の無い黒色に。

 

 「おおぅ。さすがのアーティファクトじゃな。ワシが打った短刀までもが!」

 「これで良いじゃろう。ついでに、コテを貰っていくかのぉ」

 「うん? 籠手かのぉ。寸法とっていくか?」

 小さいシャベルのつもりだったが……。


 そういえば、関西と関東では呼び方が逆だという。

 シャベルと聞けば関東では、小さい物、パンジーなどの小さいポットを植えたり球根を植えたりするものを思い浮かべるだろう。そして、スコップと言えば、土木で使うような大型の物を。

 関西に行くとそれは逆になる。小さなものをスコップ。大きなものがシャベルと。著者は関東人なので違和感を覚えるが、なるほど、大きな重機はショベルカーだ。納得。コテというのは、片手で扱う道具?園芸で言うと移植コテ。関東で言うシャベルの事……文化だなぁ。……閑話休題。

 

 「あ、小さい、スコップだ。薬草採取に使うものの。根切りナイフも欲しいの。……うん? 籠手か。それも良いな……」

 「な、なぁ、カンイチさん、俺にも触らせてくれよぉ。ちょっとだけ!」

 と、親方の娘のミスリール。

 「触るくらいなら良かろうが、何が起こるかわからんぞ。親方も了承してくれ」

 コクリと頷くダイ。そして娘の背を押し促す。

 そっと、銃身に触れるミスリール。その表情は歓喜。

 「”ごくり”……うん。うんうん……良く語る金属だね。凄い……凄い……」

 「うむうむ。どんなことでも経験になる。ましては特上じゃ! 良かったのぉ。ワシからも礼を言わせてもらうぞい。カンイチよぉ!」

 「うむ」

 カンイチにしろここまで喜んでくれると嬉しいもの。特に己が何かしたでもなくとも。

 「良い記念じゃ、酒じゃ、酒ぇ! ほれ、腸詰焼け!」

 「おうよ! 酔っぱらう前に籠手の寸法とっておけよぉ! 親父!」

 「応! 手ぇだせ、カンイチ」

 両手の寸法を取り終わるころには、太い腸詰が運ばれてきた。

 そいつを肴に、ビールをあおる。ドスンと腹に来るビールに大満足。

 ミスリールも移植コテと採取用のナイフ、大小のピンセット、ゴミ拾いの時に使うトングなどを用意してくれた。用意が終わると宴に混ざる。

 小さい少女がぐいぐい呑むその様にびっくりしたが、成人且つ、ドワーフ族にとっては酒は血、水のような物だという。こういった人種もいるのだなぁ。と納得し、酒を楽しんだ。

 ……

 

 「ふぅ……。食うに食ったり、飲むに飲んだり! ひっく!」

 フラフラとご機嫌に夜道を帰るカンイチだったが、途中で一気に酔いが醒める。特に何があったという訳でもなく。素に戻ったカンイチが現状の確認をする。

 ”ぶるり”

 「ふむ? 小便がしたいの。この身体のせいかの」

 一気にアルコールを分解したのか、排泄が促され、頭の靄も晴れる……。ある程度の量飲むと自動で発動されるのか……

 「確かに物騒な世界じゃ。有難いのじゃが。……少々寂しいのぉ」

 立小便をしながら独り言ちるカンイチだった。

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