い、いませんけどぉ (ボス部屋突破!)
……
「ああ、頑張れよ! イザーク!」
チームのメンバーの声援を受け前に出るイザーク
部屋に踏み入れば部屋に建つ石柱が輝き、
「ゲギョォ!」
「ギョ!」 「グギョォ!」
「ギョギョ!」 「ギョォ!」 「グゲェ!」
このフロアの試練の相手。青色の小人、ゴブリンを吐き出す。その数18。
「む! 今回は青いのばっかりじゃな」
「18匹か。フジ様!」
『ふん。問題あるまい。一人頭4匹であろう。ゆけ! イザーク、クマらが牽制しよう、落ち着いて対処せよ!』
「は、はい! クマ! ハナ! シロ! 行こう!」
”ぅおん!” ”ぅわん!” ”ぅをん!”
イザークとともにゴブリンの群れに突っ込む犬たち。真っ先に2匹いた弓持ちがハナ、シロに狩られる。あとは剣やナイフを持った敵との混戦だ。
イザークも日頃の鍛錬で身につけた技を惜しげなく相手に叩きつける。
突き出された剣を左手に持つ十手で受け、ひねり、内側、太い血管のある面を右手のナイフで斬りつける。青い血とともに、ぱっくりと。半ばまで切られ持っていた剣がガラリと落ちる
「ギョォ?」
ひるんだゴブリンの胴体、脇腹に続けざま、三撃突き入れる。すぅと消える青ゴブリン。
その隣の青ゴブリン。飛びかかってきたところをさっと躱し、その顔面に十手の棒芯を叩きつける。
「ギョヒィ!」
額が割れ吹き出す青い血。
頭部に注意がいったところ下方から、みぞおちにナイフを突き入れ、斬り上げる。これで、二体目。
「ほほぅ。イザークもずいぶんとやるようになったの」
「ああ、今のところ及第点だな」
と、納得顔のドワーフ夫婦
「だね! やるもんだ。今の十手の使い方よかったな」
こちらは万が一に備え、アーバレストを肩付けし、射撃体勢を維持するミスリール。
クマらに吠え立てられ、注意散漫になった青ゴブリンの背後から容赦なく首をかき切る。これで三体
「うむ。落ち着いて対処できているのぉ。よく見えてるようじゃな。ほれ、乱入するでないぞ、ガハルト」
「す、するか! クマたちとの連携もいいな」
相手も認識を改めたか、気合を入れたのか、二体で向かってくる。
「クマ!」
”ぅおん!”
一体がクマの体当たりで吹き飛ばされ、そのまま喉笛を食いちぎられる。そのままクマの口に吸い込まれる青ゴブリン
イザークもまた踏み込み、十手を突き出す。十手は青ゴブリンの左目を”ぶすり”と捉え、そのまま、ぐいんと十手を振る。その勢いに首の骨は耐えられず、真後ろを向き消える。これで4体目。
そして、最後の個体がシロに背後から押さえ込まれ、その首を食い破られる。
武器についた血糊を拭こうと布を出したイザーク。が、青ゴブリンらが消えると同時に血糊もまた消えたようだ。
「クマ、ハナ、シロ。おつかれ!」
と、クマらの首をわしわしとかき、労をねぎらうイザーク君
”ぅおん!” ”ぅわん!” ”ぅをん!”
「うんむ。イザーク君もまったく危なげないのぉ」
「それよりも、カンイチよりもずっと”狼使い”だな。くっくっく」
「まぁそうじゃのぉ。ようけ連携も取れていたでな」
「ふむ。イザークの倒したのが持っていた武具は二個、ドロップしたの。半々ちゅうことじゃな。質はそこそこじゃな」
と、武器を確かめながらダイインドゥ
「ふむ。クマたちが倒したものは無しか……。武器持ちはワシらが対処せねばなるまいな」
その時、一本の石柱が輝き前回同様、木の箱一つ吐き出す
「あ! ”宝箱”でたよ! 師匠! イザーク!」
「続けてじゃが、今回もイザーク君でよかろう? ご苦労さんじゃ」
「ああ」
「はぁふぅいぅい……。うん? どこまで進んだ? もう終わったかね?」
と、寝袋に入ったままのアールカエフ。ミノムシのようだが器用に上体を起こす。
「やっと起きたか……アールよ。今、終わったところじゃ」
「ふぅん? 怪我も無いようね。結構……。結構……。うむ……お腹へったな」
「……宝箱開けて、出たら飯にせよう……」
ミスリールが罠の確認。そして、イザークがあける。中身は大粒の宝石が5つはいっていた
「ディアンさん、どうでしょう」
「ふぅ~~ん。さすがダンジョン産というべきか、石の種類自体は大したことなくとも、ヒビ一つない、上物だねぇ。売るならこっちで買い取るよ。イザーク?」
と、鑑別用なのか小さい魔導灯に宝石を透かし品質を確認するディアン
「お願いしようかな?」
「ふ~~ん。なぁ、イザーク。コレを送りたい相手とかいないのかい?」
くくくと笑うディアン
「……い、いませんけどぉ……。そんないい人ぉ(しくしく)」
「おいおい。……母ちゃん、イザークを泣かすな」
「はっはっは。困ったもんだねぇ」
「……しょうがないのぉ」
……




