青スライムみたい (イレギュラー)
……
冒険者同士のいざこざを収めた一行。再びダンジョンの攻略にとりかかる
「うんむ? 先の乱闘騒ぎのせいじゃったか? わりかし空いてるの?」
「だな」
入り口付近の混雑がなかったかのようにずんずん進む。前にも人はいない。すんなりと2階に。
「へぇ~~。このあたりでも採取ポイントあるんですねぇ。何がとれるんだろう?」
イザークの視線の先。所々に壁に向かい壁を撫でるように触っている集団が目に入る
「ここらじゃ精々ヤクソウがとれればいい方だろうさ」
「それで、サディカさんや、あの連中はなにやってんじゃ?」
壁の前に座りこみ車座になりカードに興じてるものも。それを不思議に思ったカンイチ
「ああ、アレは湧くの待ってるんですよ。カンイチさん。順番待ち? こんな低層階じゃチームで頭割りしても大した金にならねぇのに……」
と、ため息混じりのサディカ
「ほぅ……」
「長い時間占拠してるとルール違反になりますから、空いたらああして待ってるのでしょう。それでぐるぐる回って採取して。偶に遭うオオネズミ仕留めて……。オレには真似できねぇ」
「連中が採取専門というやつかのぉ。のぉ、イザーク君?」
「う~~ん。ヤクソウが簡単に、この前の品質だったら……量にもよりますけど、食っていけるかも?」
と、採取専門、野草教授のイザークが応える
「ほ~~ん。面白いのぉ。順番待ちかの」
「ちっとも面白くないわ! 関所まで急ぐぞ! カンイチ!」
『うむ! お爺!』
「了解じゃ……」
ガハルトとフジにせっつかれ、足を早めるカンイチ
……
ダンジョンの人の動きを見ながら歩を進める。
サディカの言う通りオオネズミを追う集団にも出くわした。ぐるりと囲み追い詰め、袋叩きにして仕留める。
――あんな調子で狩られるとは……オオネズミも難儀じゃな。
と思わず声にしそうになるカンイチだった。
3階に降りる前に給水休憩。クマたちに水を振る舞う。
「たしか、次の階から大きなツバメの群れがでたのぉ」
「チスイドリですよ、カンイチさん」
と、イザークが補正
「アレ、けっこう面倒なんだよなぁ。あれ? そういえば……父ちゃんが盾持ちか? オレ、盾、持ってきてないぞ?」
と、サディカ。チスイドリの対処には大盾が有効とされている。
チスイトリはホバリングからの突貫。尖った嘴、頭部までを相手の体に刺し込み血を吸う。対処方法は大盾で突貫を防ぎはたき落とすのが上策とされる
「ウチは、クマたちとカンイチがいるからな。盾はいらん」
「そう……なの?」
『うむ。あの鳥はこちらでいただくぞ。ガハルト』
「はい。お願いします。フジ様」
「だいじょうぶ? 刺さったら面倒だぞ。父ちゃん」
「ふん。見てればいい」
そして3階に
早速、チスイドリも群れで歓迎とばかりに襲いかかってくる。
その群れに怯むことなく突っ込むクマ、ハナ、シロ。
群れに向かってジャンプ。空中でも大口を開けて美味そうに食っていく。齧りつき、足ではたき落としと。消えるというよりもクマたちの口に吸い込まれていく。
「す、すげぇなぁ」
ぽかんとその戦況を見ているサディカ。盾無しで無傷は難しい。低層階に出てくる割に刺さりどころが悪かったら一発昇天もあり得る、面倒な相手だ。
「あ、あれ? 銀貨は……」
チスイトリのドロップで銀貨を得ることができるのだが。サディカが周りを見渡しても一枚も落ちてはいない。
「うむ。サディカさんや。ワシにもよぉわからんが、クマらが食っちまうと”どろっぷ”だかは無いようじゃ。魔素だかを取り込んじまうとか?」
「へ、へぇ……。ん? 取り込む? じゃぁ、クマたちってまだまだ強くなる……の?」
『うむ! そのとおりだ!』
と、フジ
「そ、そうなんですか、フジ様。やっぱりクマたちも魔獣の括りかぁ」
と、納得のサディカ。
『よし! 次行くぞ! 次!』
”ぅおおん!” ”ぅわん!” ”ぅをん!”
……
チスイドリを駆逐しながら進んでいると、前方にまた人垣が。その数、だんだん増えていき渋滞に。
「どうしたんじゃ?」
「! イレギュラーでも湧いたか!?」
「ヌシはそればかりじゃな……」
「ちょっと、見てくる」
と、地元冒険者のサディカ
「気をつけるんじゃぞ」
……
「どうにも、青スライムみたい」
帰って来たサディカ。前方に青スライムが陣取り、先に進めないと報告
「スライム……かの」
「まぁ、スライム自体、もっと下層にいますし。”青”も深いほうだと聞きますね。ですので、それなりに強いって。もう一人、食われたやら?」
「げ。本当? サディカさん、食われたって!」
話を聞いていたイザークが驚きの声を上げる
「ほ~~ん。が、このまま、ここで突っ立っているというのものぉ。さて……」
チラと横を見る。ニヤリと口角を上げるガハルト
「ああ! 行くぞ! ヤル気のないのなら、どいてろ! 道を空けろぉ!」
「おいおい……ガハルトよ」
大声をあげるガハルト、スライムがいなくなるのを遠巻きに待っていた冒険者たちの人垣が割れ、場を譲る。




