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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
いざ! ダンジョンへ! 2
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男前だねぇ~~ (サディカは人気者)

 ……


 ……しっしと、野良犬でも追い払うように手を振るサディカ。

 周りで窺っていた野次馬たちからも失笑が漏れる。が、言われた冒険者たちは面白くない。一息に殺気立ち、サディカの方に体を向ける。


 「は!? 獣人の女が生意気な!」

 「このぉぉ!」

 と、詰め寄る若い冒険者たち。その中で、少し良い装備を装備したリーダー格の男が一歩前に出る。

 「お前から痛めつけてやろうか! ! ひ、ひっ――!」


 一歩踏み込んだサディカの鋭い横薙ぎの一撃がリーダー格の喉に放たれる。

 紙一枚。サディカの柔軟で強靭な筋肉がピタリと止まる。首筋にひたりと触る鉄の冷たさ。つぅ――と温かい一筋の血が伝う。


 手ぶらのサディカ相手で警戒すらしていなかったところへのマジックポーチから直に放たれた抜き打ちだ。ダンジョンに潜ってるのだ。手ぶらでも何某かの得物は持っているだろう。完全に相手が”女”と油断した。

 喉に剣を当てられてる今の今でも何が起きたかわかっていない。が、冷やりと鉄の冷たさは感じる。そして当てられた殺気によって己の血の温度がずんずん下がるのも。


 「ふん、これ以上、ゴタゴタ抜かすと罪人の前にダンジョン名物”徘徊する死体”になってもらうが? きがるのもいいが死んじまったらお終いだぞ? おい」

 「う……ぐ……」

 首に刃を当てられ、ピクリとも動けない冒険者。

 ”がらん!”

 持っていた剣を取り落とすリーダー格。

 その金属の剣が落ちる音で仲間が武器を構え直す

 「ん? どうする? オレは”金”のサディカだ。お前ら、まだ文句あるなら後は剣で聞いてやる!」

 凄むサディカ

 「……くっ」

 

 「き、”金”……”金”のサディカ?」

 「そ、それって、あの『双翼姫』!?」

 「あ、あぐ、あ……。あ、ああ、も、戻る、戻るよぉ……」

 その言葉を聞き、殺気を消し、剣をポーチにしまう。素手でもどうにでもなるし、すでに相手の気は折れている。

 

 「うん。そうしろ。あ、そいつ怪我させたんだろ? 血止め程度のポーションか治療費置いてけ」

 {……}

 「す、すまなかったな……」

 渋々だが、怪我を負わされた男に頭を下げ、ポーションの小瓶を手渡す若者。野次馬たちの目を避けるように急ぎ足で入口のほうに駆けていく。


 「す、すまねぇ、サディカ」

 「いや、かすり傷でよかったよ。それにあいつらにもいい勉強になったろ?」

 と、若者連中が去った方に目を向けるサディカ


 「ああ、あれで理解できなきゃ、”ダンジョン賊”か”徘徊する死者”だわな」

 「だわなぁ」

 「さすがはサディカだわ!」

 「おう! この町の守り神様だぁ!」

 と、野次馬連中からやんややんやと歓声が上がる。


 「はぁ? お前らもすぐに止めろよなぁ! どうせ結果云々に酒代でも賭けてたんだろ! おい!」

 「そりゃぁ、もう少しヤバくなったら止めたさ?」

 「うんうん」

 「当たり前じゃん?」

 「まったく。仲間だろうが……。おい、ヤック! コイツらに酒奢ってもらえ。金出さなかったら、後でオレが折檻してやる!」

 と、怪我を負わされた男、ヤックに声を掛けるサディカ。

 「おう! お前ら! 一杯なぁ!」

 と、ヤックも声を上げる

 

 「よし! じゃぁ、今から上に行くか!」

 「おいおい。少し潜って稼がんと酒代ねぇぞ!」

 「ああ、ちゃちゃっと採取してギルドの安酒場に集合だ!」

 「誰か金貸してくれぇ!」

 「アホ、潜って稼いでこい!」

 と、野次馬たちも声を上げる

 

 「しょうがねぇなぁ……」

 呆れ顔のサディカ。

 「そりゃぁ、”金”の冒険者様とは稼ぎがぜんぜん違うわな!」

 「ああ! 毎日カツカツだ! はっはっは」

 「んじゃ、張り切って酒代稼ぐとすっか!」

 「おう!」

 わいわいと盛り上がる冒険者たち。その中心で呆れながらも笑顔を見せるサディカ

 ……


 「うんむ。随分と信頼されてるのぉ。……誰かさんとは大違いだわい」

 と、隣のガハルトに向かってボソリ。

 「うるさいわ」

 ガハルトも言葉短く。

 

 ガハルトは獣人、虎人ならではで極力周りと干渉しないように単独で行動していた。組む相手がいなかったともいえるが

 対してサディカは正式にチームには加盟していなかったものの、この町の冒険者たちと有効な関係を構築してきたらしい。美人だし人気もある。

 

 「男前だねぇ~~。サディカ君!」

 仲裁を終え戻ってきたサディカを迎え入れるアールカエフ。

 「い、いえ、アール様。こういったちょっとしたいざこざは、ちょこちょこありますから。人死にが出なくてよかったですよ」

 若い娘らしい、はにかんだ笑顔をみせながら応えるサディカ

 「うんうん。上出来! 上出来! 皆、首とお別れしなくてよかったよ? ねぇ、ガハルト君!」

 「い、いえ、斬りませんよ。アール様」

 と慌てて応えるガハルト。

 『終わったか? では、先に参るとしようか!』

 「そ、そうですね、フジ様! 行くぞ! カンイチ!」

 「やれやれじゃわい」

 ……

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