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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
いざ! ダンジョンへ! 2
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アール様、こえぇ…… (帝国と)

 ……

 

 「ファロフィアナ殿、御自らまたここに来たのはなぜじゃろうかの?」

 帝国にいたファロフィアナが態々またこの町に。帝国の属国とはいえ一応は外国になる。

 おそらく、この町には帝国の関心事項はアールカエフとフジ以外はない。他の用事ということは無いだろう。

 「さてねぇ。またぞろ僕たちの命でも狙ってるんじゃないの? ダンジョンでチームが半壊したら追い打ち駆けるとか? 今も屯所でアカジン君達が手ぐすね引いて待ってるかもよ?」

 「……そうならないといいがのぉ」

 「うん? じゃぁ、先手打ってやっちゃう? 周辺ちょろちょろされるのもつまらないし?」

 「そうしたら帝国と戦争……じゃろうに?」

 と、カンイチ

 「いいんじゃない? 別に。うん? オーサガ君担ぎ上げて帝国転覆作戦というのは? フジ殿にも手伝ってもらってさ? 帝国滅ぼしてオーサガ君に統治してもらえば。ついでにメヌーケイ半分貰うとか? そうすりゃ思う存分に畑できるぞ? カンイチ。どうよ?」

 「ス、スィーレン様!」

 と、ダリオンが声を上げる。

 

 帝国だって大陸一の軍事力を誇る大国だ。ただではやられない。が、相手がフェンリルであれば? それも人の意を汲みその力が国に振るわれたら? それとハイエルフを超越した者、アールカエフ。基本、精霊魔法使いは前に立つことすらできない。暗殺者でさえ精霊が支配する警戒範囲に入る事は叶わないだろう。弓は届かない。アールカエフの操る魔法以上の物量で一気に押すしかあるまい。が、その魔法は未知数……なにせファロフィアナをもってしても化物、神に近しい精霊と言わしめるのだ。

 

 「だってさぁ。ダリオン君。敵が周りちょろちょろしたら普通、排除するだろう? それとも君はそのまま放置してるのかい? 何時凶刃が振るわれるのかわからないんだぞ? ダンジョンに用事が無かったらとっとと首飛ばしてるよ? ……君のもね。その”凶刃”になり得るのだし?」

 じろり。殺気を込めてダリオンを睨みつける

 「くっ――」

 「ま、ファロフィアナ君によく言っておいてね。もっと上役にも? 僕がそう言っていたってさ」

 殺気を引っ込め、優しく? 語りかけるアールカエフ。

 「……」

 唇を噛んだまま動けずにいるダリオン。

 「じゃぁ、皇帝陛下に親書でも出すかの?」

 「それじゃぁ、皇帝に借り作っちゃうだろう? 却下! 頼むよ! ダリオン君! 帝国の未来は君にかかってるぞ! なんて?」

 「……」

 うつむいたままのダリオン……

 「アール様、こえぇ……」

 と、やり取りを見ていたイザーク君がボソリ

 「まぁのぉ……」

 カンイチもイザークの言葉に同意を示すのがやっとだった。

 ……


 「ただいま! キキョウ! 元気していたかい? お母ちゃん帰って来たぞぉ!」

 「ああ! アールお母ちゃん! おかえりなさい!」

 居間でティーターに勉強を見てもらっていたであろうキキョウ。アールカエフの顔を見るなり駆け出す。

 駆けてくるキキョウを抱きかかえるアールカエフ。キキョウの頭に頬ずり。日向の匂いを堪能している事だろう。

 「うん……。ただいま……。リンドウお兄ちゃんはどこいった?」

 「今の時間は学校? キキョウも学校行きたい!」

 「うん。もうちょこっと大きくなったらね? オミヤあるよ。串焼き食べる?」

 「うん! 食べる!」

 「ティーター殿世話かけたの」

 「いえ、聞き分けのいい子達ですから。どうぞお茶にしてください。風呂も沸いていますよ」

 「そりゃぁ、すまんの。至れり尽くせりじゃなぁ。先にわしはアカジン殿の処に挨拶に行ってくるで。親方達先に風呂さ入って休んでくれ」

 「おうん? ワシらは今からギルドにご出勤じゃで。気にせんでいいぞ」

 「ああ! 土産話もしないとなぁ! それにメヌーケイの極上の酒もあるしな!」

 「あ! 師匠! 毛長猪の肉少し貰ってもいいかい?」

 と、ドワーフ一家。今から酒宴に行くようだ。

 「おう? 今からかの。元気じゃなぁ……。肉か? 持ってけ、持ってけ」

 背肉と腹の三枚肉バラの大きな塊肉をミスリールに渡す。

 「うん。十分だよ師匠。じゃ、行ってくるね!」

 「気を付けていくんじゃぞぉ」

 「いってら~~」

 酒宴に向かうドワーフ一家を見送る。歩いていくようだ。

 「帰って来たばかりだというのに疲れ知らずだな。親方達は……」

 「きっと酒宴が何よりの癒しなんでしょう? ね、カンイチさん」

 「かもわからんのぉ。じゃ、ガハルト付き合ってくれ」

 「おうよ。世話になってるからアカジン殿の処にも酒樽だしたいが?」

 「おう! ガハルトに任すわ」

 ……


 アカジン隊長、アカマチに挨拶を終え、居間でまったりと寛ぐカンイチ。そこに

 「ん!? 皆帰って来たんだ!」

 玄関の方からリンドウの元気な声が。

 「おお! リンドウ! お母ちゃん帰って来たよ!」

 ものすごい速さ、正に風にでも乗ってるようにリンドウに接近するアールカエフ

 「わ! わわ! 来るな! アール母ちゃん!」

 抵抗空しく捕獲されるリンドウ。じたばた暴れるもその細腕から脱出することはできない。

 抱き枕のようにされ、頬ずりされる。

 まだまだアールの捕縛から逃れるには修行が必要のようだ。

 「スィーレン様。あまりしつこいと嫌われますよ?」

 「いいの! スキンシップ! スキンシップ!」

 「放せぇ!」

 じたばた暴れて放せ! というも、その大きな尻尾はブンブンと揺れている。

 そんなほのぼのな風景を見て

 「平和じゃのぉ」

 としみじみもらすカンイチ爺さんだった。

 

 「で、どうだい? 学校は?」

 「う~ん? よくわからんけどぉ? 友人っていったって他、人族ばかりだしなぁ。獣人てば俺だけだぞ。全部で。そういえばアール母ちゃん。年上のクラスの奴がわざわざ喧嘩売って来たから伸してやったぞ? もう大泣きして大変だったんだよ?」

 「うんうん。上出来」

 「……そうか? アールよ……」

 「そりゃぁ、降ってくる火の粉は払うだろうに?」

 「まぁ、そうじゃがの。それじゃぁ友達も出来まいよ?」

 「もともと俺、獣人だしな。それに学校終わったらアカマチのおっちゃんに鍛えてもらってるんだ! ガキと遊んでる暇なんかないよ!」

 「お、おう。そ、そうかのぉ」

 友人の一人でも……と思っていたカンイチ爺さん。同年輩の子供をガキと切り捨てるリンドウ。多少なりとも裏社会に関わってきた彼から見れば、学校なんか甘々なのだろう

 「くっくっく。まぁ、獣人族でも絆の強い狼人だからなぁ。よっぽどじゃないと他所の種族とはそうそう群れはせんぞ。カンイチよ?」

 「そんなもんかのぉ」

 「俺も何度か信用できる人族に出会えたがなぁ。良い奴はすぐに死んじまうな」

 「そりゃぁ、お前さんに付き合っていたら命がいくらあっても足りんわい」

 「……此処はいい。どいつもこいつも”化物”だからなぁ」

 「そうだ! ガハルト小父さん! ヌンチャク見てくれよ! 俺も毎日練習してるんだ!」

 「おう! じゃぁ、外に行くか!」

 「怪我させるなよ……」

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