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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
メヌーケイへ!
395/520

美味いのぉ。 (魂の味)

 …… 


 オーサガ王太子と別れ、ホーズキの街を後にする一行。

 往路は敵の目を欺くために北進し遠回りをしたが、復路はその必要のないため、まっすぐ国境の町【モトアメヌーケイ】を目指すこととなる。と、いってもカンイチの関心は途中途中の農村に向けられることになるのだが。

 村の傍らを借りて野営をし、必要とあらば害獣駆除のお手伝い。穀物が多いとはいえ、そりゃ、少しだが菜っ葉類もある。そういった栽培技術を見て回っている。

 

 「ふぅぅ。やっぱりオーサガ君に頼み込んで畑売ってもらおうかのぉ」

 と、眼前に広がる畑を望みながらボソリ。

 「うん? もう新天地探索の旅は終わりかい? カンイチ?」

 と。傍らにアールカエフ。

 「僕は構わないよ? カンイチがここが良いというのなら?」

 と、カンイチの腕をとり組みながら身を寄せる。

 「……いや、もう少し見て回ろうさ。まだまだ金子は足りんで……。それに長く住む場所になろうでなぁ」

 「そう? ふふふ。だってさ! 安心したまえ! ガハルト君!」

 「は、はいぃ?!」

 どうやら馬車の陰でうかがっていたようだ。

 「いたのかよ……」

 ……


 ……

 

 【モトアメヌーケイ】に到着。

 『国王様の書付』ですんなりと門を抜ける。

 往路では寄れなかったが国境の町だけあり多くの人、荷物で大変賑わっている。

 商人は大きな幌馬車を何台も連ねたキャラバンでメヌーケイへ穀物の買い付けに来ているのだろう。大きな穀物問屋が何軒も並ぶ。そして、ドワーフ垂涎の穀物原料の蒸留酒の問屋も。こちらもメヌーケイ国の特産だ。

 

 「おっほぉう! 賑やかじゃなぁ! 王都よか賑やかではなかろうか?」

 お上りのカンイチ爺さんは大はしゃぎ。

 「かもね! 凄い人だね!」

 「やはり、穀物の一大産地だからでしょうか? 大きなキャラバン隊ばかりですねぇ」

 大きな穀物商には積み込みの為に大きな駐車場が設けられている。そこに大きな幌馬車がズラリと並んでいる訳だ。

 「ああ。護衛の依頼もうんとありそうだなぁ。受けるか? イザークよ?」

 「ええ? だって、【アロクゴーナ】まででしょうに? それにアール様もいるし?」

 「ふっふっふ。冗談さ。随分賑やかだ。掏摸なんかに注意だ!」

 「じゃなぁ。コソ泥にゃ注意じゃな。で、カンイチよ。この町の滞在期間はどうするんじゃ?」

 「そうさなぁ。親方。穀物やらの仕入れはいいじゃろう? 休憩だけなら2~3日でええと思うが?」

 「じゃぁ、ここでも酒ぇ仕入れてくかのぉ」

 「は? 親方? 結構な量仕入れたじゃろうに?」

 「そんなもん、いくらあっても足りんわい? それに今後は宴の時にワシらも馳走させてやれるでな」

 「そうか……であればマジックバッグと金子使ってくれ」

 「おう! さすがカンイチじゃ! それに酒用のバッグを持てるようになるとはのぉ! 剛毅な事よ!」

 「オレも持つかなぁ」

 と、ディアン。

 「おう。遊ばせておいても仕方ないで。使えるのなら有効にの。持っていくとええ」

 「そんなこと言ってると余ってるマジックバック、皆、酒用になっちまうぞ? カンイチ」

 「ま、それもいいじゃろうさ。特にドワーフの連中には世話になってるでな」

 「それもそうだなぁ。酒場でもやるかぁ。なぁ! イザーク?」

 「それも面白そうですねぇ。一緒にやります?」

 「おいおい。……マジかよ、イザーク」

 「ガハルトさんが酒場のオヤジで? 言い出しっぺですし? なんかいいですねぇ~~」

 「じゃぁ、話しがでた鍛冶師ギルドに行くかの!」

 「おう! ワシらに任せとけ!」

 「ちょいと滞在伸びるかもしれないがなぁ!」

 と、意気揚々と雑踏に消えていくドワーフ夫婦を見送る。

 「行っちまったな……」

 「行っちゃったね」

 「ま、いいじゃろ」

 「……お前も一回くらい出ろよ。カンイチ」

 過酷といわれるドワーフ達の歓迎の宴へのお誘いだ。

 「……そうさなぁ」

 ……

 

 結局、【モトアメヌーケイ】の町に予定を越えて二週間滞在。

 ドワーフ達の宴も一因だが、カンイチが『米』を見つけたのが大きい。しかも、馬の餌やら家畜の飼料ではなく人が食うためのものだ。メヌーケイ国の北東部で作られているらしい。小麦と同様に粉にされ、水で捏ねて焼いて食べるようだ。

 

 借りた厨房にはカンイチとアールカエフ。ダリオンもお目付け役として参加している。

 早速と炊いてみるカンイチ。形状は短粒、しかも白っぽい。もち米を期待したがどうにも勝手が違う。

 

 「おぅん? 昔、数回食べたタイ米に似ているの? じゃぁ、茹でて食うもんか? こりゃぁ?」

 「風車で突いて粉にして食うって言ってたじゃん? うん? ……。良い匂いだね? これ? 僕好きかも?」

 ひくひくと鼻を動かすアールカエフ。

 「わしの思ってるのよか香りは強いがのぉ。どれ……」

 程よい甘味。香りも口に入れてしまえば特に気にならない。むしろ鼻に抜ける香りが良い。粘りはないが……

 「美味いのぉ。やはり米じゃな! タイ米に近しいのじゃろなぁ。パラパラでおにぎりは作れそうにないが……これはこれでありじゃな。麦いれりゃぁ麦飯みたいになるかのぉ?」

 「麦飯? なにそれ? どれどれ。うん? 結構美味しいじゃん? これ! 歯ごたえも良いし?」

 と、アールカエフの口にはあったらしい。パクパクと平らげていく。

 「はぁ? スィーレン様? それは馬の餌……。でも、いい匂いですね……」

 「食べてみるかね? ダリオン君?」

 「い、いえ……」

 言い淀むも関心はあるようだ。

 鍋の中の炊かれた米――ご飯に目をやるダリオン。

 「はぁ。肉でも無し。ちゃんと食用の穀物だぞ? 本当に君は……」

 「ほれ、アールよそこまでじゃ。食い物の無理強いはよくないで。好き嫌いもあろうさ」

 「うん? 違うぞ? カンイチ。彼らはその前の段階さ。下らない規則やら萎びた常識やらに取り憑かれてるのさ。ほら、自称能力の高いエルフ族の繁栄が無いのはこのためさ。ダリオン君を見ればよく分かるだろ?」

 散々な言いようである。

 押し黙るダリオン

 「本当に仲が悪いのぉ……」

 「そんな事無いしぃ? 僕は結構好きよ? ダリオン君の事?」

 キッと睨むがアールカエフにはどこ吹く風。

 「い、いただきます!」

 「はい? 無理することないよ? ダリオン君?」

 「ください!」

 「そう?」

 「ほれ、アールよ。もう良かろうが」

 皿にご飯をよそい、匙を添えて手渡す。

 恐る恐る口に運ぶダリオン

 「まったく……穀物だぞ! 穀物! 僕が食べてるの見てただろうに?」

 「アール」

 「うん。これはこれでありですね……」

 「だろう? あっさりしてるから串焼きの獣脂に合うかも? パンよりいいかも、これ?」

 「ほぉう? コメか? カンイチ? そのまま食ってるのか? そいつは酒の原料じゃろが?」

 ぬぅっと厨房にやってきたダイインドゥ。小さい酒瓶を引っ掴む。

 普段なら、もう酒かい! とツッコむところだが”酒”と聞いてそれどころではないカンイチ。

 「な!? さ、酒があるのか? 親方?」

 「酒? うんむ? 米で作った蒸留酒なぁ。今晩飲むか?」

 くいと、指盃でフリをするダイインドゥ。

 「……そうか。蒸留酒のぉ」

 カンイチの頭の中、米で出来た酒は日本酒! が、確かに、米焼酎もある。むしろ世話になってるのは焼酎の方かもしれない。地球でももっぱら、水割りとお湯割りだったもの。

 「うん? 違ったか? まぁ、世界は広いで。カンイチの記憶にある酒もどこかにあるやも知れんぞ?」

 「そうじゃなぁ」

 ま、焼酎があるのならばいいかと。

 「ま、酒はいいで、買えるだけ買って行こう!」

 「その前にウチの料理番の意見も聞かねば! お~~い! イザーク君~~イザーク君~~」

 「は~~い? 何です? アール様ぁ」

 

 コメの有用性をイザークに熱く語るカンイチ。

 パンの代わりやら、野菜感覚のサラダ。鶏の腹に詰めて煮たり、スープの具にしたり……

 熱心に聞くのはイザーク君のみ……。皆は欲しけりゃぁ買えばよかろうがという雰囲気なのだが。

 生産量は少ないが需要もあまりないのでそんなに高価でもない。上麦と同じくらいか。

 「色々試してみましょうよ。カンイチさん」

 とのイザーク君の温かい応援で大量購入が決定したようだ。

 次の米の入荷は一週間後。そのため滞在も延長になったという。


 ……


 「うんむぅ……籾付きやら玄米なら米糠もとれるんじゃがなぁ」

 残念ながらカンイチの手にあるのは精米した、現代日本の無洗米のようにピカピカに磨かれた米だ。

 「ふぅん? 色々あるんだねぇ。てか……ダリオン君。君ぃ、結構食うね。文句垂れてた割に?」

 「……はっ!?」

 「……気に入ってくれてよかったわい」

 「は、はい……」

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