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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
メヌーケイへ!
394/520

カンイチさん本気で言っています? (ホーズキを後に)

 …… 


 そして出立の日。

 門にはメイセンと国賓を送迎するときの装備をまとった煌びやかな騎兵隊が見送りに。

 丁寧に断ったのだが是非にと。アールカエフの出立に見送りをしないというのも国としてどうかといわれれば仕方がない。此方の意を汲み滞在中はそういった接触も一切なかった。であれば最後くらいは良いだろうと。

 

 「ふぅ……。なんか色々あったけどぉ。楽しかった……ですね。カンイチさん」

 振り返り、王城を懐かしそうに望むイザーク。彼の眼にはその奥、玉座に座る数年後のオーサガの姿が見えているのかもしれない。

 オーサガとはあの別れを決意した日以来会ってはいない。

 「そうじゃな。縁……とはいえのぉ。ま、オーサガ君なら上手くやるじゃろうさ」

 決まっていた別れ。何せ相手は王子様だ。カンイチも旅の間のオーサガを思い出す。

 「それとも何か。オーサガ王太子に頼んで騎士にでもしてもらうか? イザークよ? くっくっく」

 それを見てガハルト。

 「ええ? ……オーサガ王太子を護って……というのはいいけどぉ……。騎士ぃ? お貴族様でしょ? ガラじゃ無いですって」

 「満更、嫌って訳でもなさそうだな。おい」

 「はっはっは! その気があれば儂が後見人になろう。男爵位くらい貰ってやるぞ?」

 「はぁ? メイセン様? ……いえ。俺、まだ何もやってないし。それに、料理人にもなりたいし?」

 「ほぅ? 料理人と? 冒険者で名を挙げるのではないのかね?」

 「ま、色々ありまして。ははは。多分、ダンジョン飽きたらまた寄らせていただきますね。次は【入らずの森】に行くと思いますから」

 「【入らずの森】……にか」

 さすがのメイセンの眉も寄る。魔物が跋扈する深い森だ。その【入らずの森】を神聖視し、護るエルフ族の部族も多くあると聞く。人の入れない領域だ

 「ええ。畑求めて?」

 「……畑ならいくらでも儂が用意するが? 領内の村を任せても良い。いや、アールカエフ様、フジ様もご一緒であれば一地方を」

 「だそうですよ? カンイチさん?」

 「お言葉はありがたいが、この機会にあちこち見て回ろうと思っての。ここも、もう少し暖かければいうことないのじゃがのぉ……やはり菜っ葉作りがしたいでなぁ」

 残念! そう顔にくっきりと書いてあるカンイチ。傍らを歩くガハルトは何時、カンイチが頷くか冷や冷やものだ。まだまだ冒険がしたい。ダンジョン然り! 魔物との戦い然り!

 そんなガハルトの様子に笑いをこらえるのは御者台のドワーフ母娘と、リツの轡を取るアールカエフ。

 「そうそう! メイセン君! ウチの料理人兼農民を引き抜くのは止めてくれないかい? 油断も隙もない!」

 「料理人兼農民……でございますか? アールカエフ様?」

 「そうだよ? その為にあちらこちらと畑を求めて放浪の旅の途中さ。それに、イザーク君の作る香草スープ、特に『毒蛇の滋養スープ』は絶品だよ!」

 「ほほぅ。美食家であられるアールカエフ様がそこまでおっしゃる逸品であれば馳走になりたかったな」

 「残念だけどこの辺り寒いから蛇いないんだよ? ま、機会があれば? ううん?」

 ざざざ! と、行く先を塞ぐように兵が現れた。

 が、囲むでなく、奇麗に整列をする。そして、

 「皆様。本当に世話になった」

 現れたのは近衛長のシバスと大将軍のバナックを引き連れたオーサガ王太子

 「見送りになんぞ来なくともええと言ったじゃろうに? オーサガ君」

 「ええ、変な噂が……」

 が、イザークは王太子ではない友との再会を喜んでいる。

 「ふん! 言いたい奴には言わせておけばいいさ! 本当に顔も碌に出さずに申し訳なかった」

 「いえ。メイセン様、バナック様より王太子様の様子はお聞きしていましたから」

 「すまんな。イザーク……でだ、ここに……いや、何でもない。道中気をつけてな! 皆さんも!」

 ここに……残れ。と続けたかったのだろう。が、言葉を切る。

 「ええ、オーサガ王太子様もお元気で」

 「うむ。また寄らせてもらうで」

 「オーサガ君! 達者でね!」

 「オーサガ王太子、お見送り感謝いたしますぞ! メイセン殿、バナック将軍。世話になりました。感謝を」

 「うむ。こちらこそ世話になった。ガハルト殿!」

 「ああ、ウチの若のにもいい刺激になった。感謝する! 敬礼!」

 ”ザザッ!”

 「では!」

 ”ガラガラガラガラガラガラ……”

 軍の最敬礼、そして友に送られて王都ホーズキの町を出る。

 

 ……


 「うん? 残ってもいいぞ? イザークよ」

 「は? 冗談でしょう? 俺は”冒険料理人”目指すんです!」

 「なんだそりゃぁ。折角お貴族様になれるチャンスだったのにな。騎士は一代限りだが、男爵はずっとだぞ? 勿体なかったな!」

 ”ぱっかぱっか”とリツを操りガハルトの近くにやって来たアールカエフ。

 「いいの! イザーク君は【カンイチ村】の村人一号なんだから。ねぇ、フジ殿!」

 『うむ。今後の我が人界での生活予定が狂ってしまうではないか』

 フジは本気でイザークの子孫の世話になるつもりのようだ。

 「そうですよ! お貴族様なんか御免ですよ」

 「くっくっく そうか!」

 「で、カンイチさん。帰りは町とか寄っていくの? 小麦は足りるけど?」

 メヌーケイ国から大量にいただいて来た。当分……どころか、数年は困らないだろう……

 「うむ。穀物の備蓄はかなりあるでな。が、折角だし見分を広げるのもええじゃろうさ」

 「おうおう。蒸留酒も沢山もらえたでなぁ! 王子様には感謝じゃわい!」

 「ああ! アンタ! 余計なお節介もたまにはいいもんだねぇ!」

 「母ちゃん、台無し……」

 こちらはダイインドゥ一家。

 穀倉地帯で有名。それは、穀物を用いた酒類においても有名、一大産地となっている。

 カンイチの収納には数十樽の酒が。ダイインドゥ一家のマジックバッグにも当然入っている。

 

 因みに、今まで入手した多くのマジックバッグ。必要な者に適当に分けられることに。

 とはいっても、あれだけ欲していた貴重なマジックバッグ。これだけ数あると逆に困る。カンイチとアールカエフはそもそも要らないし。一人で二個、三個と持つものでもない。既存の物より容量の大きいものと交換したり、ポーチタイプは装備入れ専用にしたりと贅沢な運用がなされる。イザーク君さえ腰のポーチ、肩掛け鞄はマジックバッグだ。

 共通財産として買い物用や、穀物用、金貨用、採掘時の鉱石用と色々割り振ってはみたが……。

 余っても今後、使うかもわからないから売ることは無い。何せ、数が少ない貴重な品。金があっても買えるものではない。ダンジョンの出物だ。と、いう訳で結局、カンイチ預かり、”収納”へ死蔵されることに。

 

 そうそう、ガハルトが最初に使っていたポーチは、今やオーサガ君の腰に。ダンジョン攻略の分配のつもりだったが受け取らなかったため、酒のお礼という事で譲渡されている。アールカエフお手製の回復薬と毒消し薬をいれて。貴族の毒気も抜ける優れものだ。

 これもまた、内外にはダンジョンからの生還、賊の殲滅と併せて”マジックバッグの入手”とオーサガ王太子の功績として発表されることとなる。

 

 本来であれば余ったバッグは金子に変えて分配というのが当たり前だが、マジックバッグと同時に手に入る”盗賊のお宝”も潤沢だ。そちらもガハルトに言わせれば『そんなにいらん! 何に使うんだ?』てな塩梅だ。

 イザーク君のポーチにも常に金貨、100枚は入っている。

 ダイインドゥの【鍛冶師ギルド】の口座に多めに入れたりしているが……

 『カンイチが死んじゃったら、辺り一面、金ピカだねぇ』とは、アールカエフの言葉だ。

 それでも、広大な土地を得るためにはまだまだ足りないと張り切るカンイチ爺さん。はたして誰に払うつもりなのだろうか。

 他の連中は冒険やダンジョンで得る事のできる闘いやら採掘が目的なのでそのことを告げる者はいない


 「……町やら村に寄れば野菜も買えるじゃろうし。美味い物との出会いもあるだろうさ。イザーク君の嫁さんも? んん? オーサガ君に妹いるって言ってたじゃろが?」

 「……カンイチさん本気で言っています?」

 「うん?」

 「おいおい。カンイチよ。オーサガの妹ということは王国の姫だぞ。姫。さすがに平民にはくれんぞ?」

 「……そうじゃった……。お姫様じゃったな……すまん、イザーク君」

 「いえ、いいですけどぉ……別に……」

 「なら、残って貴族になれば良かっただろうに? イザーク」

 と、続くディアン。面白がってるのは明白だ。

 「もう! その話は終わり! ディアンさん、面白がってるでしょ?」

 「ま、町は寄って行こうさ。王様の書きつけもあるで大丈夫じゃろうよ」

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