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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
メヌーケイへ!
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遅かれ早かれじゃない? (王子問題終結)

 …… 


 「……そうか。……辛いのぉ。オーサガ君」

 「オーサガさん」

 城に上がる前に、カンイチ達に報告に来たオーサガ。第一王子のフウサとその後ろ盾、公爵の死を告げる。併せて、オーサガに宛てて書かれた遺書も示す。

 「い、いえ……」

 「まぁ、どのみち? 遅かれ早かれじゃない? オーサガ君にその気がなくともね。命を狙った方は同じ目にあわされるって、そりゃぁ毎日ビクビクさ。針の筵? オーサガ君が王位に就くころには精神が病んでおかしくなってるかもよ? または酒や女に逃げて体ボロボロ? それにお爺さんが死んだときとか? 後ろ盾が無くなっちゃうでしょ? もう生きた心地はしないって」

 と、アールカエフ。

 「かもしれんが……の」

 「ま、その爺さんも責任感じてたんだろう? やり手と聞くけど、かわいい孫さ。眼も曇ってしまったんだろう。書状に家の安寧を願ってるんだ。ここは王の器量を見せて綺麗に水に流すことだねオーサガ君。何なら家を安寧すると一筆認めてやるのもいいかもね。死んだ当主の意を汲んだんだ。少なくとも恨まれる筋合いは無いってね」

 「はい。アールカエフ様。そうしようと思います」

 「うんうん。お兄さんも”病死”だ。盛大に送ってあげるといいさ」

 「はい……」

 「それにしても……あっという間じゃな。しかも、孫を手に掛けるとは……の」

 「それだけの事さ。王位を狙って敗れたのだし。負けた方はね。余程不憫に思ったのだろう? 捨扶持で生きていく? 結構派手だったというじゃないその王子様は。多少は爺さんから送金があるだろうけど……何時まで続くか。きっと耐えられんだろうさ。”王子”、“次期王”というのでよいしょしていた連中も手のひら返しで離れていってしまう。孤独。そして仕事なんか無理だろ? これも優しさの一つじゃない? ま、本来なら尻を蹴飛ばして共に生きる道を探すのだろうがね。爺さんには時が足りなかった……そう思おうじゃない?」

 「……ううむ」

 「アールカエフ様。この後、城に上がります……」

 「うん。気をしっかりね。オーサガ君。前提条件で君はまったく悪くない。ね! 野心だって結構! 結構! ん? ダリオン君も行くのかい?」

 「は? なんで私が?」

 黙って成り行きを見守っていたダリオン。いきなりのアールカエフの無茶ぶりに声を上げる。

 「君はわざわざここまで『証人』として来たのではないのかね? じゃぁ何しに来たんだい? ダリオン君?」

 「私はスィーレン様の監視です!」

 「なら丁度いい。ここまでの経緯。第三者の証人としてもってこいだろう。帝国サイドだから信用もあるし? ほら、行ってきたまえ」

 「いやです!」

 「はぁ? ファロフィアナ君のお許しがないと何もできないのかい? そんなんで生きてて楽しいかい? オーサガ君の対極、野心のみならず自我もない……操り人形だねぇ」

 「くっ……」

 「ま、それが仕事じゃろうに? あまり無理を言うものじゃぁないぞ? アールよ」

 「は? まぁ、カンイチがそいういうのならそうかもねぇ。僕には真似できそうにないや」

 はぁ~~~~やれやれ。とこれ見よがしに肩をすくめるアールカエフ

 「わ、わかりましたよ。経緯の説明……だけですよ!」

 「そうこなくっちゃ! 一歩前進だね! ダリオン君! うんむ! 君が行ってる間、僕も大人しくしていよう? 安心して行って来てくれたまい?」

 疑いのジト目で対抗するダリオン。そんな事はお構いなし。鼻歌交じりのアールカエフ

 「ほら、ほら。行った、行った!」

 「大人しくしていてくださいね! スィーレン様!」

 オーサガとダリオンを見送る。

 ……

 「さて……と。五月蠅いのがいなくなったし? 町に遊びに行くかぁ! カンイチぃ!」

 「駄目じゃろ……約束ぐらい守れ」

 「は? 本気? ……そもそも、僕らの監視だぞ? ダリオン君は。謂わば敵みたいなもんだぞ? カンイチ君わかっているのかい?」

 「……敵? まぁ、そうともいえるがな。今は世話になってる方が多かろう?」

 「もう。あまり油断してくれるなよ? カンイチ君! 皆もね。特にイザーク君! 鼻の下伸ばしてるといきなり首飛ばされちゃうぞ? エルフなんてぇのは、エルフ族以外何とも思っていないしね。よぉく肝に銘じてくれたまえ!」

 「そうだな。アール様の言う通りだな。引締めよう」

 「そうですね……普段だったら会話すらできない方々ですし……」

 そもそもが若造冒険者のイザークにとってエルフ族は雲の上の存在だ。ただでさえ数が少ないし、アールカエフの言う通り、エルフ至上主義、人族なんて何とも思っていない。

 最初の頃はカンイチにすら口をきこうともしなかった連中だ。

 「じゃがリンドウやらキキョウ預けてる時点で……」

 「そりゃぁ、別問題だよ? そっちは僕との貸し借りだし?」

 「……よくわからんが? ……難しいの」

 「簡単に言うと人との約束なんか約束にすらならないって事さ。見届け人のエルフ立会人付けて書類に残すなら別だけどね。特に人族と獣人族なんかはね。親方達ドワーフ族は長く生きるし、同じ精霊様を祀ってるからそうでもないけど? それでも昔はあまり仲は良くなかったそうだけどね。魔導炉できるまでは木を大量に切ってたろ。鍛冶するのに。で、エルフは木を護る……って立ち位置だったからね」

 「そうかよ……うん? さっきはエルフ同士の約束になるのだろうに?」

 「僕はハイエルフだしぃ。肉食エルフだし? 並エルフとは別。関係ないさ?」

 「……本当かよ……。随分と都合がええの。しかも、並かよ」

 同じエルフでもこれだと少々呆れるカンイチ。

 「ま、僕が言うのも何だけど? そんなもんだって。結局は力?」

 「何処も一緒じゃな……まぁ、今回は大人しくしておこうさ。で、昨日はここに世話になったが、改めて宿を探そうかのぉ。どうじゃ? 親方?」

 「そうじゃなぁ。その前にここにはどれくらいいるつもりじゃ?」

 「そうさなぁ。結構な強行軍だったで一月位か? オーサガ君の件も早く落ち着きそうだでな」

 「俺はここでも構わんが。気の入った稽古ができるしな!」

 今朝から早速と、メイセン、バナック両氏と手合わせをしたガハルト。騎士団の猛者たちも次々と名乗り出て久しぶりに気の入った練習ができて大変満足だ

 「俺も。ここなら軍の牧場も使えるし。庭も広いし?」

 イザークもまたナイフ使いやオーサガと一緒に鍛練。オーサガも身を護るためにと十手術習得に重きを置いている。フジもまた広い庭が気に入ったようでテラスでごろん。クマ達も伸び伸びでき、軍の牧場も近いからイザークとしては言うことなしだ。

 「ワシらだけで外に宿取ってもええぞ?」

 「そうだなぁ。公爵様の処だとちょこちょこ出入するのも気が引けるしな。ギルドにも顔出さないとだし?」

 「うんうん」

 ドワーフ一家は窮屈というより酒だろう

 「そうさなぁ。自由にするか。わしらも外に宿取るか……アール?」

 「いいねぇ! 二人でしっぽりと……♡」

 「……ダメでしょ。騒ぎになるし。ダリオン様だってついていきますよ?」

 「……いたな。ダリオン君。いっそのこと排除する?」

 「……ダメじゃろ」

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