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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
メヌーケイへ!
387/520

はいはい。茶番はそこまで (王都一歩手前)

 …… 


 王都より四方に伸びる街道。その街道と内環状道の交差点には中規模の宿場町になっている。

 そのまま東進すれば王都だが、今回はあえて北に進路をとる。第一王子派の襲撃を躱すためだ。今までそれらしい者とは出会っていないが念の入れようだ。

 

 「ほう、良く出来ているのぉ。この環状道は」

 石材を加工したブロックが敷き詰められた街道。その踏み心地を楽しむカンイチ。これなら雨の時でも馬車の車輪がはまることは無いと。

 「ええ、わが国の自慢ですよ。麦の輸送の時なんか大型馬車が何台も行き来するんですよ! 満杯にのせて。ですから、石畳。排水もしっかり考えられています」

 余程の自慢なのだろう。オーサガの顔も上気する

 「さぞかし、税金はお高いんじゃないのぉ? オーサガ君?」

 と、アールカエフ

 「……」

 「……。さて、どうかの? ま、見える”使い方”であれば農民たちも納得できようさ?」

 何も水を差さんでもと。カンイチが言えるのはこれくらい

 「そうですね……サヴァなんか偉そうにふんぞり返った役人が来て……取るだけ取って……」

 思いだしたのだろう。オーサガ君とは逆にどんよりと沈むイザーク君

 「なんかごめん。イザーク……?」

 オーサガはサヴァとは全く関係ないのだがイザークの落ち込みように思わず頭をぺこりと下げる。

 「いえ……は、ははは……」

 「ほら、イザーク! しけた顔するな! こういう時こそ体を動かせ!」

 「え、ええ! ガハルトさん!」

 ”ぅおん!” ”ぅわん!” ”うをん!”

 イザークを慰めるように吠えるクマ達

 「だよな! 走るぞぉ! クマぁ!」

 ダダダ! と犬達を連れ駆けていくイザーク君

 「うん? もう立派な”魔獣使い”だな。イザークの奴」

 「……そこじゃぁなかろうよ。ガハルト……」

 『うん? どうした? お爺。野営の準備か?』

 「そうじゃな……少し早いが、そうせようか」


 ……

 

 大きな宿場町。途中の農村そのいずれにも寄らず、目立たぬように粛々と進む馬車。

 その気になれば王都に飛び込める場所でひっそりと野営。明日の朝一で王都に入るつもりだ。

 

 「明日には王都に入れそうだな。皆さん、ここまで護衛ありがとうございました」

 「おいおい。未だ油断はできんぞ。オーサガ王子。王都に入り、王に一報を入れるまではな」

 「そうですね。ガハルト殿の言う通り。より気を引き締めんとな!」

 「それでしたら、メイセン様(オーサガの母方の祖父・隠居)にお知らせしましょうか」

 と、護衛騎士のシバス。 

 「う~~ん……爺さんかぁ。確かに爺さんがいれば話は早い……がな」

 「ここまで己の力で来たのです。お認めになられると思いますよ。オーサガ様」

 「うん。そうかな」

 認めてくれる……。その言葉に照れるオーサガ。

 「んじゃ、朝一で僕とカンイチとで呼んでこようか? そのメイセン君とやらを?」

 「い、いえ、わざわざアールカエフ様に……。それに、かえって大騒ぎに?」

 「うむ。オーサガ君の言う通りじゃぞ。アールよ。……待機じゃな」

 「ええ! だって、面白そうじゃん!」

 「おい。他所のお家の事情もあろうに。それを面白そうじゃというのもの」

 不謹慎じゃ! と諫めるカンイチ。

 『うむ。我も征こう。久方ぶりの串焼きだな。お爺』

 「駄目じゃろ。フジよ。ヌシが来ると話がややこしくなるで」

 『何がややこしいことあるか! 串焼きを食う。それだけではないか?』

 「そうだ! そうだ! 呼んでくるだけだろ?」

 「……じゃぁ、イザーク君に 「殺されちゃうかもしれないぞ! ころっと?」 ……」

 「え? ええ? 俺ぇ? ここでも死亡確定ですか? アール様ぁ!」

 「じゃぁ、ガハルトにも行ってもらえばよかろうが」

 「……そんなに僕と一緒に行くのが嫌なのかい? 久しぶりに二人っきりなのに……およよ……」

 と、泣き崩れる? アールカエフ。まぁ、お芝居だが。

 「うぐぅ! そ、そんな事はない……ぞ。わ、わしだって……わしだって……」

 「だろう! カンイチ!」

 ギュッと、カンイチの左腕に抱きつくアールカエフ

 ”ぱん! ぱん!”

 そこに手を叩きながらイザークが話に割り込む。無表情で。

 「……はいはい。茶番はそこまで。俺とガハルトさんで行ってきますよ。オーサガさん、書状お願いしますね」

 と、バッサリ。

 「お、おう? イザーク?」

 いいのか? イザーク? アールカエフ様を蔑ろにして。そんな視線を向けるオーサガ君

 「くっくっく」

 何時もの風景と、笑うガハルト

 「茶番ていうなぁ! イザーク君! 僕が行きたいのだけど?」

 「どのみち入るのでしょう? お土産買って来ますから……。フジ様も行きます?」

 『うむ。征こう!』

 「聞けいぃ! 僕の話をぉ! 何でフジ殿は良いのさ!」

 「そうだ! アールカエフ様をお出迎えに……というのはどうでしょう? 軍が動いたとしても不思議じゃないでしょ?」

 「……ほう? なるほど。アール様ならよい目くらましにもなろうな。ナイスだイザーク! その策、採用だ!」

 「確かにのぉ。うんむ。言い考えじゃな」

 「うむむ……確かにナイスアイデアだ! イザーク君! だけどさぁ!」

 「留守番お願いしますね。アール様!」

 「むぅ」

 「ま、お迎えが来るまで待機じゃな。アールよ」

 ぽんぽんとアールカエフの頭を撫でるカンイチ。

 その様子を見ていたオーサガ王子がボソリ。

 「……結構大物だな。イザークって……。なぁ、シバス」

 「は、はい。オーサガ様……」

 

 ……

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