やはり外の方がええのぉ! (地上へ!)
……
20日目 地下6階
途中、案内人二人に引率された女ばかりのチームに遭遇。人数も多い。皆、一応は剣をぶら下げていたが
「どう見たって、娼婦……だな。ありゃぁ」
と、ディアン
「……あれで、ボス部屋、突破する気でしょうか?」
「いや、人数も増えればボスも増える。わしらは気が付かなんだが、ボス部屋のところに賊の仲間がいたのかもわからんの。こういった女どもを下に通すためののぉ」
「ふぅ~ん。ま、もうボス部屋の前のお迎えはこないだろう。そこで引き返しか? ご苦労なこった」
と、ガハルト
お迎えに行きたくとも、カンイチ達の手によってすでに盗賊団は壊滅している
「そうじゃなぁ。ま、今もわざわざ娼婦を下ろすんじゃ。事が明るみになっていないって事じゃな」
「いえてるな。何とか間に合いそうだな。が、油断せずに急ぐぞ!」
「おう!」
21日目 地下1階 出口付近
23階から、強行軍。5日で一階までたどり着いた
「クマ達のお陰で思ったよりずっと楽できましたね」
「だね! イザーク君の言う通りだ。出たらゆっくり休ませてやろう! クマ! ハナ! シロ! ご苦労様! フジ殿もね!」
”おぅん!” ”わおん!” ”ぅをふ!”
『うむ。エルフ殿も風のない中、よく頑張ったな』
「ほら! カンイチ! こういう気配りだよ? 見習いたまえぃ!」
「……では、出ようかの。オーサガ君、シバス殿。フードを」
「はい」
「カンイチィ~~! 聞いているのかい? カンイチぃ~~!」
……
「やっと外かぁ! ふぅううぅぅ~~! やはり外の方がええのぉ!」
第一隔壁で囲まれてるとはいえ、見上げれば空が見える。地上に出て来たのだ。
「うんむ! 狭いダンジョンは息苦しかったよ! やぁやぁ! お待たせ? ただいま!」
虚空に手を振るアールカエフ。そこに精霊がいるのだろうか、と、誰もが思った時、
”びゆぅぅぅぅ~~”
気持ちのよい風が吹き抜ける。ダンジョン内で忘れていた、風の感覚を思い出させてくれるように
「気持ちいいのぉ……ええ風じゃ……」
「ああ! だろう! 精霊様の労をねぎらう癒しの風さ。気持ちが良いだろう! ふふふ」
舞うように手を振り踊るアールカエフ。精霊も喜んでいるのか、服の裾もふわり、ふわりと風で踊る。
「やはり、アールは風とともにいる方が美しいのぉ……」
風と戯れるアールカエフを見てぼそり
「うん? 惚れ直したかい! カンイチ!」
「お、おぅ……」
はっと、我に返り言い淀む。中身は大日本帝国男子? 少々恥かしい。
「そんな事よりも、さっさと出ましょう! 日が暮れて門閉まっちゃいますよ!」
「そ、そんな事って! イ、イザーク君! ひどいよぉ。カンイチぃ」
”ぅおふ!”
クマも抗議を一吠え入れる。まだ仕事が残ってるぞと。
「あら、クマもイザーク君の味方かい? じゃぁ、しょうがないか? いくかぁ」
……
「門衛君。すまないけど、屯所のアカジン君と、諜報部のダリオン君かティーター君を至急、呼んでくれないかい?」
判定石のある屯所に詰めている衛兵に直談判するアールカエフ。
「は? そんなこと……。ア、アールカエフ様? も、もうお戻りで?」
アカジン隊長ならともかくも、諜報部のエルフを呼び出す? そんなことできるか! と、怒鳴りつけようと、無理を言う声の主を見て固まる。翡翠色の髪、尖った耳の持ち主。エルフとしては珍しくダンジョンに潜っている変わり者だ。パタパタと身支度を整える門衛隊長。
屯所の掲示板には 『ハイエルフのアールカエフ様、ダンジョンへ。無礼の無いように。帰還の折りには本部に急ぎ報告を!』 と、大きく張り紙が。
「うん。ちょっと野暮用があってね。できれば早くお願いしたいのだけれども? 日が落ちたら、門、閉まっちゃうでしょ?」
「は、はい! 只今! アカジン隊長に伝令をだせ!」
「はっ――!」
「しばしお待ちを」
「よろしく~~」
……
「お待たせしました。スィーレン様。随分とお元気そうで? ご無事で何よりですね」
と、言葉とは裏腹に迷惑そうな感情がありありとでているダリオン。
「もう、ダリオン……。無事の御帰還、おめでとうございます。それにしては少々お早いですね」
こちらは、歓迎、喜びの表情のティーター。
「ダリオン君! まぁ、いいけどさぁ。表向きでも可愛い顔してないと! それじゃぁ長生きできないよ? ほら! この僕を見習ったらどうだい?」
「「「はぁ?」」」
驚愕の声を上げる三人……。確かに”長生き”の実績はあるが。
「……うむ。ダリオン君は良い。ティーター君も、まぁ許そう……。おい! カンイチぃ!」
「あ、い、いや、すまん……いや、しかし?」
と、首を傾げるカンイチ
「しかし? じゃぁ、なぁーーい!」
「そうじゃ、ティーター殿、子供らは?」
「ご心配なく。元気にしておりますよ」
「ありがとう」
深々と頭を下げるカンイチ。プンスカ怒っているアールカエフを放置して。
「で、スィーレン様、何の御用で? 私、これでも結構、忙しいのですけれど。スィーレン様と違って」
「一言多い! ダリオン君! アカジン君もご苦労様!」
「はっ――! して、私にご用とは?」
「うんうん。場所移そう。このまま、そっと外に出してもらいたいのだけど? 少々訳ありでね」
「はぁ? また面倒ごとです? スィーレン様?」
「しかし、それは……」
と、アカジン。
「お願い!」
そこへ、
「アカジン殿……初日の挨拶以来ですが……」
「うん? 貴殿は……確かシバス殿? ……なるほど。判りました。こちらへ」
アカジンを先頭に、二人のエルフに守られ、ダンジョンの大扉を抜ける。
門衛にはアカジンの方から詮索無用と申しつけて。そのまま、軍の屯所へ移動する。
……
「それで一体、何事でしょう? 解るようにお願いします。スィーレン様」
と、その道中にダリオンがアールカエフに問う。
「うん。部屋に着いたらね!」
「ぅうん? アールもリンドウたちのところに行ってて良いぞ?」
「いや、出るよ。僕も」
「お、俺も。クマ達、放してきたら合流します」
と、イザーク
「ワシらは休憩させていただこうかの」
「だな。そういった話は良く解らねぇし?」
「うんうん。馬の世話してるわ」
こちらはドワーフ一家。早々に離脱宣言だ。酒樽が彼らを待ってるのだろう。
……




