なんだろうか? 良い王とは (駆け上がる!)
……
「うんむ! ええものを見たのぉ! イザーク君!」
「ええ! カンイチさん!」
夕食時、再び、ミスリールの話で何故か盛り上がる二人
「止めておくれよぉ。師匠、恥ずかしいって!」
「いやぁ、見事じゃった! のぉ! 親方!」
「うんむ! ワシの自慢の娘じゃ!」
今晩は御祝儀で少しだが”酒”も出ている。
ダイインドゥも鼻高々なのだろう。何時にもましてご機嫌だ。
娘が褒められてるのだ。それは悪い気はしない。
「それで、カンイチよ。今後の予定は? 秘密裏に出にゃぁならんだろう?」
「わしらは別に構わんだろう? オーザカ君とシバス殿を隠せや。後はスピードだわなぁ。賊らの関係者がアジトを訪れて引き返す……皆、明日からは休憩は最低限で駆けあがるぞ」
「おう!」
「了解!」
「よろしく頼む!」
「ああ、任せとけ。地上に出たらティーター殿に迎えに来てもらおう。で、一旦屯所に。でじゃ、アカジン殿達とも相談じゃな」
「ううん? 帝国にバレていいのか?」
「考えたんじゃが、ダンジョンから審査なしで出るのは不可能。それこそ、ティーター殿や、ダリオン殿の力を借りんとの。相手の店やらアジトに乗り込むのはもちろん、その、ヒラキとやらが町から出られないように手を回してもらう。こっちはアカジン殿の範疇じゃろ? どのみち、内緒でダンジョンから出られなんだら後手に回ろうよ?」
「ふむ。カンイチの言い分もわかる。で、オーサガ君? 今回の件に帝国の影は無いのかい?」
「さすがはアールカエフ様。……ある。かもしらぬ。なにせ、兄貴たちの方が俺より御しやすいだろう? 特に一番上のなんか、帝国にしたら万々歳だろうさ。おだてて、帝国侯爵の位もやるって言われたら、国をそっくり渡しかねん」
「帝国が黒幕という訳か?」
「まぁ、実際そうだろ。でも、恐らくは辿れないよ? 最初の一言……その兄貴君の耳に囁けばいい。王城にも密偵が多く入ってるだろうし? そいつらを使ってね。後は兄貴君が勝手に動くだろう?」
「内政干渉じゃな」
「そりゃぁ、するさ! 当たり前だろうに? 軍だって派遣してるんだぞ? 決まってるじゃん?」
「その通りですね。俺だって別に帝国に逆らいたいわけじゃぁないし? 話せば理解してくれると思うのだけど……ね」
「そんな奴なら王様の命は危険じゃないの? オーサガさん?」
と、イザーク
「王太子が指名されないうちは大丈夫だろうさ。いま、父王が死んだら、第二王子が有力株だかんなぁ。軍部が付いているのならともかく、奴は公式な継承権を得るまでは動けまいよ」
「はぁ、やだやだ。ね、カンイチさん」
「まぁのぉ。が、最も被害をこうむるのは国民じゃな」
「ええ。そのとおりです」
「ま、そこんとこが判ってるのならいいや。精々頑張ってくれたまい? オーサガ君!」
「ええ! ここまでお膳立て頂いたのです! 必ずや!」
「うん? これって、ワシらも内政干渉になるのかの?」
「なる訳ないじゃん? 応援だよ? 応援? 僕が出て行って魔法で城でもふっ飛ばして王様脅せばそうなるかもだけどぉ? 名前も出すつもりもないよ? 今はオーサガ君の部隊だ。ま、チョロチョロしてる、帝国の諜報部くらいには釘を刺すけど?」
「ほ~~ん」
第一王子を失脚させようと動くわしらはどう違うのさだと、悩むカンイチ。
「いいんだって。そんなに悩むなって、カンイチ。面白そうじゃん?」
「……アールだってわしらと変わらんじゃろ」
「ふふふ。ファロフィアナ君がどう動くか……さてさて」
「ファロフィアナ様……が?」
帝国の諜報部を統べるハイエルフ。その名を聞いて身構えるオーサガ
「安心したまえ! オーサガ君! そっちは僕に任しておきたまえ!」
「は、はい? アールカエフ様」
「お心強いお言葉。主に代わって御礼を」
「うむ! 任したまい?」
「大丈夫か? アールよ……」
「ふふん! あんな小娘に後れはとらないさ! はっはっは!」
「さすが、アールカエフ様……あのファロフィアナ様を……」
「うん? 僕が婆さんって言いたいのかい? オーサガ君? ふふふ……」
「い、いえ! そんなことは!」
「脅すな……。じゃぁ、皆の衆、明日から頼むぞ」
17日目 地下23階
起床後、最短ルートで地上を目指すカンイチ一行。
会敵する魔物はクマ達に即、除かれ、スピードが落ちることは無い
休憩時間。
犬達を褒め、戯れるイザーク。その傍らにオーサガ
「イザークって、やっぱり狼使いか?」
「え? 一応、目指してるけど、まだまだですよ。皆、カンイチさんの従魔ですし」
「それで農民と言ってるのか? あのカンイチさんは……」
「まぁ、変ってるけど……。畑を荒らす害獣駆除は必要じゃろう! って」
「そりゃぁ、そうだけど。お、俺も、触って良いか?」
「あ、クマなら」
おっかなびっくり手を伸ばすオーサガ
「クマ、さ、触らせてもらうぞ……。わ、わ、思ったより毛、柔らかいなぁ」
「でしょ。首の周り、かいてやると喜びますよ」
「おう!」
……
「いいなぁ。俺も狼使い目指そうかな……」
年相応。青年の目でクマをモフるオーサガ
「オーサガさんが目指すのは王様でしょうに?」
「……いいだろうに。イザーク。少しくらい夢見たって」
「まぁ、王様になったら取り組めば? 王様だって、休憩や休日だってあるんでしょう?」
「……そうよなぁ。息している間は王! なんていうけどさぁ。父王だってほとんど役人に任せっきりだしなぁ。うん? それが嫌で俺は王を目指してるのに? う~~ん」
「じゃぁ、なってみてから考えれば? 思った以上に暇かもよ?」
「……王を何だと思ってるのだ。ぅうん? イザークよ?」
「オーサガさんには悪いけどぉ。そんなのわからないって。はっきり言えば、農民にしたら一生懸命作った穀物をごっそりと勝手に持って行く役人、領主の親玉くらいの認識だよ?」
「うぐぅ! い、痛いところを……」
笑いをこらえるシバス。
「役人やら公共工事でしたっけ? そういったものに金がかかるのもわかりますよ。でも、目に見えてじゃないと農民にはわかりませんて? ま、期待していますよ。オーサガさん! いい王様になってくださいね」
「う~~ん……いい王様かぁ。……なんだろうか? 良い王とは」
「さぁ? 俺に聞かれたって知りませんよ」
「う~~ん」
自問するオーサガ。
その様子を好ましく見るシバス
「よぉし! そろそろ出発するぞぉ!」
ガハルトの出立の合図
「よし! 行くか! クマ! オーサガさん、行きますよ!」
「お、おう!」
「ふふふ。オーサガ様。見習いの時間はもう暫くあるでしょう。よく見て、聞くことですね」
「あ、ああ」
食事、給水休憩をはさみながら駆け上がる。野営時の夜番にしてもクマ達に任せ全員で就寝。盗賊のところで手に入れた『通路封鎖用の壁』を設置して。何時の間にやら、『表札』と呼び出しベルはついている。
ボス部屋に関しては帰りはスルー。階段上るだけのお手軽さだ。待ち時間も無し。そして




