表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
いざ! ダンジョンへ! 1
370/520

親父! こ、これが!? (採掘ポイント)

 …… 


 「『御免状』かぁ。俺が雇った”案内人ガイド”は何も言っていなかったぞ」

 「……そりゃぁ、当たり前でしょうに。オーザカさん。……グルですって。そもそもがオーザカさんを罠にハメるためなんだし?」

 と、イザーク。

 「オーザカ様……」

 残念そうに主人を見つめるシバス

 「わ、わかっていたわ、シバス! 戯言だ! ……そんな目で見るな!」

 「で、何で、王子様であろうお方がわざわざダンジョンに? 腕試し?」

 「うん? ああ、そんなものだ。武を示すためにな」

 「じゃぁ、ご兄弟、皆? 王族も大変ですねぇ」

 「いや、点数稼ぎ? といったところか。どうしても長子が後継者に近いだろう? 俺なんか三男だもの。マイナススタートさ。ウチの内情は、なんの力もないくせに、屑のくせして是が非でも王になりたい長兄のフーサ。第一夫人の実家の公爵家とその傘下の貴族家が押してるな。次兄の、俺の実兄のサンコウは詩に生きるなんてアホな事を抜かす腰抜けだ。自ら継承争いから降りたが、父王が一番後継者にしたいってそれを許さない。ある意味可哀そうなヤツだ。父王とお気楽貴族らが押してるな。んで、そんな二人には任せられない、俺! ってな訳だ。特に長子のフーサのアホは絶対に嫌だな。国が傾く」

 「うん? オーサガさんの後ろ盾? 応援は?」

 「はい、一応、公爵家と、軍部の一部が。オーサガ様は若い兵には人気ありますから」

 「そこよ! 未だ中立だと抜かし、己たちの動向次第で王座が決まると思っている、日和ったアホ貴族どもや、未だどっちつかずな軍部の連中。特にその軍部を動かすのなら俺のクソジジィに力を示さねばな!」

 「……大変ですねぇ。ということは、フーサ王子や、サンコウ王子はダンジョンには入らない……と」

 「ああ、両方とも、剣術はからきしだかんな。国民にも知れている。わざわざ出てくることもあるまいさ。いや、サンコウの兄貴はのこのこ出てくるかもなぁ。で、そのままどこぞに出奔。己の詩才で生きていくなんていってな。で、そこらで野垂れ死にだろう。周りがおだててるだけで詩才なんかあるもんか」

 「少々言い過ぎです。オーサガ様は一昨年成人に。ようやっと力を示す機会を。が、このような性格でしょう? で、口先だけでなければ力を示せといわれ、自らダンジョンに……本当に短慮で」

 「おい……」

 「おい。ではありません。おかげで敵に付け入る隙を与えてしまったのでしょうに? ですが、まさか、ヒラキがフーサ様の子飼いだとは思いませんでしたが……」

 「ぅぐ! ジジィにしごかれて根に持ってたんだろ!」

 「……違うと思いますよ。まぁ、これに懲りてもう少し、態度を改めませんと」

 「うぐ。わ、わかっておるわ。それに只、いきがっていた事もな。何も無いし、何もできなかった。それに今、ここに置いてもらって色々と学ばせてもらっている。ここでは、王子でも貴族でもない只の……いや、武器も碌に使えぬ見習いだ」

 「それはようございました。見習いのオーサガ様。ここには多くの学びがあるでしょう」

 「……うるさいわ」

 「しっかし、貴族も大変ですねぇ」

 「……まあな」


 ……


 暫く進む。

 ピタリと立ち止まるダイインドゥ

 「どうしたんじゃ? 親方? 敵か?」

 「ちと、時間ええか?」

 と、縋るような目を向けるダイインドゥ。コクリと頷くカンイチ。何事かと

 「すまんの! ほれ! ミスリール! これが、『採掘ポイント』じゃ!」

 壁に僅かに走る亀裂を指差すダイインドゥ。

 「お? おお! 親父! こ、これが!?」

 膝を突き、顔を近づけ採掘ポイントを観察するミスリール。

 「ほ~~ん。良く見つけたのぉ。さすがは親方。でも亀裂などどこにでも……あれ?」

 カンイチが見る範囲、毛の一筋程も傷がない壁が続く。

 「そうじゃ! カンイチ、古く見えてもダンジョンの壁にはヒビなんぞない! なにせ、不壊じゃからな! 傷ひとつつけることは出来ん!」

 「ほぅ。おもしろいのぉ。そういうカラクリか」

 「ん? でも、師匠なら壁に穴開けられそうだね……鶴嘴で……」

 「確かにの……後で試しに叩いてみるか?」

 「で、師匠、掘って良いかい?」

 「ああ、もちろんじゃ! その為に来たんじゃろ! 存分に掘るとええ!」

 「すまんの! よぉく見るんじゃ……そうすりゃぁ、何処を打つか教えてくれるじゃろう」

 「お、おう! ……オ、オレに見えるかな……親父?」

 「うんむ。ワシの自慢の娘じゃで!」

 「ああ。オレには見えないがな。お前なら問題ないだろう」

 と、ミスリールの肩に手を置く母親ディアン

 「うむ。わしらは休憩しようかの。じっくり向き合うとええ」

 「そうだな。茶にしようか」

 

 それから壁と睨みあう事暫し。

 おもむろに鶴嘴を振りかぶるミスリール!

 ”かーーん!” ”かーーん!” ”かーーん!” ”かーーん!” ”かーーん!”

 休むことなく振り下ろされる鶴嘴。同じ軌道、同じ個所を捉える。

 大きな火花と共に、

 ”ころり” ”からん” ”かちん”……

 と、こぶし大の三つの金属塊と親指程の二つの色のついた宝石が現れる

 「うんむぅ! み、見事じゃ! ワシ以上の掘り手じゃ!」

 「ふ、ふぅぅ。親父? 本当?」

 余程の集中だったのだろう。採掘ポイントが消えると同時に尻を床に突くミスリール。

 「うんむ、うんむ。鍛冶と金属カネについては嘘は言わん! ワシの目測ではもうちょい右……であったが……。ほれ」 

 そう言って、一つの金属塊を手に取るダイインドゥ。

 「こ、これって?」

 「うむ。ミスリルじゃ! こんな浅いところでのぉ。よぉやったの!」

 「う、うん!」

 「おめでとうございます! ミスリールさん! ”ぐすり”」

 感動に打ち震えているイザーク。熱いものもこみあげているようだ。もちろん……

 「うむ、”ずびぃ!” うむ。ようやったのぉ”ずびび”ミスリールよぉ」

 涙もろいカンイチ爺さんは爆泣きだ、身体も若返ったせいか、涙の量も鼻水も半端ない

 「あ、ありがと……イザーク、師匠……」

 その表情を見て言葉が途切れるミスリール

 鶴嘴を左手に握ったまま立ちつくす。嬉しさもどっかに行ってしまったようだ。

 「ほら、ほら、カンイチ! ミスリール君もドン引きだぞ! ほら、イザーク君も! まったく君達は!」

 二人の腰のベルトをひっ掴み、ズルズルと引き摺り掃けていくアールカエフ

 「そじゃ、それらは記念に持っているとええ……」

 ずるずると引き摺られながら声をかけるカンイチ。少々格好悪い

 「あ、ありがとう?」

 「お、俺も探しますよーー! 採掘ポイントぉ」

 「お、おう。イザーク。頼むな……」

 ずるずるずるずる……。そのまま退場。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ