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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
フィヤマの日々
37/520

越中

 …… 


 カンイチの歩くスピードが上がる。

 そう! 本日は待ちに待った記念すべき、ノーパン卒業の日だ。

 約束通りであれば、越中ふんどしが出来ていることだろう。

 すぅすぅ、ぷらぷら、寒く落ち着きのない心細い日々も今日、終止符が打たれるはずだ。

 

 ”がらんからん”

 

 勢いよく扉を開けるカンイチ。期待に目を輝かせて!

 「ユーノさん出来ているかのぉ!」

 初っ端からお爺言葉も全開だ!

 「いらしゃいませぇ! あら、カンイチさん。ええ、出来ているわよぉ」

 「おお!」

 ”ばさり”

 カウンターの上に広げられる、越中褌! 手に取り検品していく。

 

 「うぅぅむ。良い布じゃのぉ! 良い手触りじゃ。ユーノさんの裁縫の腕前も上々! 良い出来じゃ!」

 「なんか、お爺ちゃんみたいね。カンイチさんて」

 しまった! 褌の完成が嬉しいあまり、ジジィ言葉全開だった事に気づかされる、カンイチ。

 「……うん。良いようですね。貰っていきますね」

 「くすくす。ええ。ご希望通りで何よりです。ところで、それはどのように使うのです?」

 「うちの故郷の下着でして……」

 さすがにこの場でマッパでの装着は不味かろうと、ズボンの上から装着。

 

 「へぇ。この布一枚でねぇ。でも楽ね。ふむふむ」

 「サイズも関係なし。あ、もちろん極端な体形の人はだめじゃ……ですが」

 「男女兼用でも行けるわね。脱着が楽だから診療所なんかでも……」

 「うむ。それをT字帯というのじゃ」

 などと、小声で独り言ちる。

 T字帯、入院必須アイテムだ。カンイチも地球で何回か世話になったことがある。

 「ねぇ、カンイチさん。これ特許出てなかったら申請しても良いかしら?」

 「うん? 構いませんよ。どうぞご自由に」

 「ご自由にって訳にもいかないわよ。共同提案者ということで。申請通ったら使用料は折半でいい?」

 「お任せしますよ。おっと、半金と出来が良いのでチップです」

 「まいど~~。書類出来たら一回見せるわね。マーサさん所で連絡つく?」

 「はい。それでは試着室借りていいですか?」

 「どぞ~~」

 ……

 早速と試着室を拝借し褌を装着!

 「うむ! ぐっと気分も引き締まるのぉ!」

 一物いちもつの座りの良さを確認しているとカーテンの向こう側に気配が

 「カンイチさん……見せてもらう訳には?」

 と、カーテンの向こうから。

 「ここは……仕方なし……か。どうぞ……」

 少々恥ずかしいが、この世界には無い物。未知の領分、特許やら勉強の為だろうからと許可を出す。

 「では! ”しゃっつ!” なるほど、なるほど。しっかりホールドしてますね……なんか、凛凛しいですね! ふむふむ」

 勢いよくカーテンを開けられ、あちこち触られる。前垂れを引っ張られたり、尻を撫でられたり。こんな別嬪さんにこれ以上触られると。カンイチだって日本国男子! 一部に血液が集中してしまうだろう。

 「も、もうよろしいか」

 「は、はい。ありがとうございます! ……あら、まぁ♡」

 少々手遅れだったようだ……

 「う、うむ」

 すぅと、閉じられるカーテン……

 ……

 

 先ほどの”事故”もなんのその。今にもスキップしそうな軽い足取りのカンイチ。

 座りもよく気持ちが良い。一物も落ち着いたせいか、背筋も自然と伸び、風格さえでている。

 「やはり男子たるもの、越中じゃな!」

 などと独り言。本当にご機嫌だ。

 「そうだ。鍛冶屋に行かねばならんかったな。それにギルドにも顔くらい出さないといかんか……。そしたらまた兎取りに行くか」

 ”ぅおふ!” ”わぅう!”

 クマとハナも賛成! と相槌を打つように吠える。

 ……


 ここがハンスさんお勧めの”冒険者”と衛兵の御用達の鍛冶屋だ。

 日用品の包丁やハサミ等はあるが、剣やら武具製品らしきものは見当たらない。

 「はて?」

 武具類はもちろん店内にはある。外から見えない所にあるためだ。

 代わりに入口には 『研ぎ直しします!』 『整備します!』 『オーダーメイド承ります』 『ギルド割引あり』 と、賑やかなポップが店先を飾る。

 

 「ここかのぉ」

 ”がらんがらんがら!”

 「いらっしゃい! お客さん何の御用で? 研ぎですか?」

 

 鍛冶は男の仕事と思っていたが、なるほど、店先のポップはのせいか。出てきたのは小学生くらいの身長の女の子。ちりちりの天然パーマ? まさか、炉で焦がしたわけではないだろう。青い大きな瞳の可愛い少女だ。

 

 「うん? お嬢ちゃんが研ぎかい? 危ないぞ」

 「お嬢ちゃんだって? これでも、お兄ちゃんよりずっと年上だぞ!」

 「な、なんと……100歳超えとるのか?」

 と、思わず口をつく

 「はぁ? 何言ってんだ? 俺は32だ。兄ちゃんだってせいぜいが14~15だろ? なんだよ100って?」 

 「そ、そうじゃな。鍛冶もやるのかの?」

 設定は一五歳だったと思いだす。流石に一〇〇はない。今のカンイチはピチピチの好青年だ。

 「オレはまだ見習いだよ。親父ぃ! 親父ぃ!」

 「なんじゃぁ! 騒々しい!」

 

 店の奥から、樽に手足が生えたようなずんぐりむっくりの人影が。陽光で露わになる表情。浅黒い皮膚に年輪のように皺が刻まれ、三つ編みの立派な髭。所謂、ドワーフ族と呼ばれる人種だ。

 

 「なんじゃ? うん? 坊主はドワーフ族は初めてかの?」

 そんなに年じゃないように見えるが、立派な爺さん言葉である。ともすれば……

 「うむ。初めてじゃ。ハンスさんからここで剣の注文ができると聞いたのじゃが?」

 「うむ。もちろん受け賜るがの。ふぅむ。良い面構えじゃ。良かろう。どんなもんが欲しいのじゃ」

 「一応、図に起こしたが、短剣の類か? 刺突に主を置きたいのじゃが」

 その紙には二式銃剣。三十年式より短いものだ。

 「ほぅ。ふむ。面白いのぉ。別に柄になるようなもんも作るかの?」

 「いや、そちらはもう準備してある」

 「ふむ」

 カンイチの用意した図面を広げ、あれやこれや。つられてか、爺さん言葉も全開だ。

 

 「ちょ、ちょっと待ってよ。随分ジジィ臭いな! お客さん! 親父と爺ちゃんの会話みたいだったぞ?」

 はっ! と我に返るカンイチ。方言よろしく店のオヤジさんの爺さん言葉に引っ張られたことに気づく。

 「そうかのぉ。ワシは、ダイインドゥという。坊主は?」

 「ワシ……私は、カンイチと言います。出来れば鍛造で二振りお願いしたいのだが」

 「うむ。了承した。材は鋼で良いかの」

 「他にも?」

 「うむ。希少金属やら、黒鋼、魔鋼、心鉱、聖銀、ミスリル銀……。聖銀以外なら金で揃うがの」

 「なるほど……とりあえずは一振りないことには仕事にならないから。鋼でお願いします」

 「うむ。承ろう。一週間。二振りで二週間じゃな」

 「お願いします」

 

 一応、冒険者の”銀”ということを明かし、そういった仕事で鉱石などが入手できないかと聞く。

 なんでも、『魔の坑道』というのがあるそうで、長年『不死山』を中心とした濃密な魔力に晒されてるおかげで色々と変わった鉱石が採れるという。もちろんその場で好きにふるまえる武が必要ではあるが。

 ちなみに娘の名前は、ミスリールというそうだ。ミスリル銀が名の由来だ。

 冒険であちこち往ったとき、余裕があれば落ちてる武具なども拾ってこいと。武具の芯材が生きており、鍛冶に使えるかもしれないと。暫く談笑した後、お茶を呼ばれて店を出る。

 ……

 

 「じゃ、リストさん所でも顔出すか……のぉ」

 

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