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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
いざ! ダンジョンへ! 1
360/520

俺が、オーサガだ (メヌーケイ第三王子)

 …… 


 ダンジョン賊のアジトの一つを殲滅。遅れて帰って来た賊も処分。

 アジトも奇麗さっぱり片付けてから奥の牢部屋に。檻の中には5人の男。うち一人がまだ若い青年。

 「ほう」

 その一番若い青年が王子なのだろうか。この中で一番落ち着いており、その瞳には英知が宿る。みすぼらしい服を着ているが、気品すら感じる。

 

 「すまぬがこのまま、話しをさせていただく。俺は冒険者のガハルトだ。貴殿がメヌーケイ国第三王子か?」

 ガハルトが話しかけるとその青年の前に一人の男が庇うように前に出る。鎧も剣もなし。襤褸を纏うが護衛の騎士だろう。

 「ガハルト殿といったか。私は護衛騎士のシバスと申す。間違いなく、この方はメヌーケイ 「ぶ、無礼者めぇ!」 コーシロ殿?」

 騎士が挨拶、口上の途中に王子の隣に控えていた痩せた男が甲高い声で吠える。場に似つかわしくないひょろひょろ男。付き人だろうか。

 「よい! さがれ! 城の中の狭い世界しか知らぬ愚か者だ。この期に及んでな……。許せ。俺が、第三王子のオーサガだ」

 「お、王子ぃ?」

 牢の中にもかかわらず堂々とした振る舞い

 カンイチの目測通り一番若い青年が王子のようだ

 

 「では、オーサガ殿。貴殿のチームは? 奥にいる二人もか?」

 「これが親衛騎士のシバス信用できる男だ。で、こっちの小者は世話人のコーシロだ。他に5人いたが力及ばず……な」

 王子に小者と言われ、再び肩を落とすコーシロ

 「そちらの二人は別……と?」

 「俺がここに来る前からいたな。捕虜の先輩方といったところだ。で、見たところ、ここに巣くっていた賊の連中を除いたようだが?」

 「ああ。全て除いた。が、本部が別にあるという」

 「そうか。できればここから出してもらいたいが? ガハルト殿」

 「了承しよう。無いとは思うが敵対行動はしてくれるなよ」

 「ああ。もちろんだ。この小者にも言い含めておこう。わかったな。これ以上醜態をさらせば、ここに置いていくぞ」

 「お、王子……」

 ……

 

 「ほう。綺麗さっぱり……よほど良いマジックバッグがあったようだな」

 綺麗に家財道具が消えた元アジトの部屋を見回し頷く王子

 「今、茶の準備をしよう」

 ……

 

 一番広い部屋にガハルト、ダイインドゥ、ディアン。カンイチは一歩下がったところで交渉の様子を伺う

 「で、オーサカ殿、この後は?」

 「ふむ。地上に戻る……の一択になるが……。何も、荷物も金子、武器もなし。シバスと人では進むのもままならぬ。護衛として貴殿らを雇えぬか?」

 「ふむ……」

 「それと、できれば鹵獲品の中に我が国の紋章の入ったマジックバッグがあると思う。こちらで買い取らせては貰えないだろうか。容量は中の上。紋章代を上乗せしてお支払いいたす」

 「うん? 貴殿は此度の失態によって王子の立場も危なかろうに? そんな大金払えるのか?」

 と、ガハルト

 「ぶ、無礼者! 獣人の分際で!」

 と、再び奇声を発するコーシロ。怒りはしないがガハルトも呆れ顔だ。

 「ふぅ。お前は下がれと言っているだろうが……。お前が罵るその獣人に助けられたのだぞ? それともここの交渉を壊したいのか? お前が兄貴の内通者だって事は分かってるんだ。本気でここに置いていくぞ?」

 「そ、そんな事は!」

 「よいから口を閉じておけ。大方、出来の悪い愚かな弟を盗賊の手より救い出した慈悲ある王太子とでもするつもりだったのだろう? で、俺は惨めに兄貴に助けられた愚物、王家のお荷物として塔にでも幽閉か? いや、原因不明の病で死亡……かな?」

 覚悟もろくにない小物故か、核心を突かれて目を見開くコーシロ。

 

 「世知辛いのぉ。後継者問題か……」

 と、ぼそりと漏らすカンイチ。

 「オ、オーサガ様といえ、言い過ぎでございますぞぉ! であれば、なぜ、私も牢に?」

 「う~ん。そこよ……な。わからぬ」

 「大方、ずっと一緒に行動していたとして、後である事無い事吹聴する負の情報源スピーカーにでもなるのでしょう!」

 侮蔑の目を、同僚に向けるシバス。元から疑ってみていたようだ

 「うん? なるほどな。シバスの言う通りかもわからんな。その辺りはどうか? コーシロ」

 「そ、そんな事はありませぬ! なんと恐ろしいことを! シバス殿!」

 両手をばたつかせ必死に無罪を主張するコーシロ。そこに

 「ヒラキ隊長らも生きてるかもしれませぬ。案内人、運搬人、冒険者共の交渉もコーシロ殿がすべて」

 「ふむ。かもわからんな」

 腕を組み考え込む王子。

 「王子、悪いがそちらの内情は我らには関係ない」

 と、ガハルトがぴしゃり。

 こういうドロドロした話が好きなのか。身を乗り出して聞いていたディアンががっくりと肩を落とす。今、面白いところなのにと。

 

 「ふふふ、それもそうだ。無様なところを見せたな。……どうだろうか。本気で雇われてはくれぬか? 地上までの護衛! できればメヌーケイ王都まで! 面白い劇も見せられよう? 馬鹿兄貴の策をひっくり返し、失脚させる。俺が王太子へと登る! で、この借り、王位に着いた時の出世払いで受けてくれぬか!」

 「おいおい……」

 冗談だろうと、現実的思考を持つ女性のディアンは呆れ顔。

 が反対に、浪漫を求める漢共は

 「面白い……のぉ」

 と、ダイインドゥ

 「くっくっく……貴殿にその器があると?」

 「ある!」

 牢の中にもかかわらず、きっぱりと言い放つオーサが王子。 

 「はっはっはっはっは! だそうだ! カンイチ!」

 「確かに応援したくなる御仁ではあるがな。じゃが、いいのかよ、ガハルトよ。やっとこ来たダンジョンそっちのけでメヌーケイとやらまで行くのかの?」

 「俺はかまわんぞ。こいつは面白そうだしな! それに、……メヌーケイは帝国の属国だが、大陸でも最も畑の多い農業先進国だぞ」

 と、ぼそりと。ちゃんとカンイチの耳に届くように囁くガハルト

 「よぉし! 行こう! メヌーケイに!」

 農業先進国と聞いて即決! 二つ返事だ。

 ガハルトもカンイチの扱いのツボを心得ている。

 「おいおい、カンイチ……本気か?」

 諦めるも、一応、なだめるように声をかけるディアン。

 「ほっほっほ。畑貰えるかもわからんぞ。カンイチよ」

 とダイインドゥ。

 どうやらオーサガの次期王位奪取の計画に乗るようだ。

 貸し? そんな物は期待していない。面白そううだからと。

 

 「カンイチ殿?」

 「おう。うちのチームのリーダーだ」

 「ガハルト殿ではないのか?」

 後ろに立っていた青年、まだ少年の面影が残る。見習いだと思っていたオーサガ。

 「ああ。どうしても交渉事となると侮られるからな」

 「わしがカンイチだ。よろしく、オーサガ殿」

 「助力かたじけない、カンイチ殿」

 「わしらは城までじゃぞ?」

 「もちろん。仕上げは俺がやらねばな!」

 なかなかに好感が持てる漢だと、右手を差し出す

 「それでは、よろしく頼む! カンイチ殿!」

 「おう!」

 ぐっと握手。協定締結だ。

 それを忌々しく見るコーシロ。ここまで来ると愛想笑いの仮面もはがれる

 「で、そこの御仁はどうするのじゃ?」

 「うん? そうだな。連れては歩けぬ……な。寝首を掻かれるのもつまらぬ」

 「! は! お、お慈悲を! お慈悲をぉ!」

 己の未来が見えたのだろう。土下座し、必死に助命を乞うコーシロ。

 「慈悲? 俺の命を狙っておいてそれはあるまいよ? 最後の奉公だ。知り得たこと、命令の出処やら、今回の襲撃のカラクリなどもすべて書け。そうすればお前の命一つで勘弁してやる。家族、一族の命は保障しよう」

 「……」

 「じゃぁ、今日はここで野営か。しっかり夜番立てんとな。賊の仲間が来るかもしれん」

 ……

 

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