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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
いざ! ダンジョンへ! 1
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何か嬉しい……かも (20階ボス戦)

 …… 


 ボス部屋の造りは10階と同様、フロアに石柱が屹立する。その数10本。サークル状に並んでいる。

 前回同様に入口の扉が閉じ、石柱が輝きだす。現れたのは青ゴブリン10。うち二頭は弓を持つ。ホブゴブリンが3。中央の一体は一回り体が大きい。

 

 『うむ……多いな』

 チラとイザークを見るフジ。

 ”ごくり”つばを飲み込むイザーク。

 『まぁよい。では、参ろうか! イザークよ! ガハルトは弓持ちを仕留めよ! その後、ホブゴブリンとやらを小さい方、2体狩れ! イザークは手前のでかいのに集中だ!』

 「おう! 頑張れよ! イザーク!」

 トンファーを構え、弓持ちに突っ込むガハルト

 「は、はいぃ!」

 

 覚悟を決めたイザーク、右手に盗賊の頭目から得た大振りのナイフ、左手には十手を。それぞれ逆手に握り、ホブゴブリンへと迫る!

 イザークの相手のホブゴブリン、他の個体より一回り大きく、腕も太い。この集団のリーダーか。相手がイザークと知ってか下卑た笑いをその顔に張り付ける

 『うむ!』

 戦場を睥睨するフジ。

 フジから指示が出ているのだろうか、クマ、ハナ、シロは残りのゴブリンへと突進していく!

 敵の陣容を見てすぐさま作戦変更。全部でなく、ホブゴブリン一体にするようだ。確かに全頭を相手にするにはキツイだろう。イザークであってガハルトではない。

 

 「うん? 方針転換かの? それでも少々荷が重くはないかの? フジよ」

 『ふん。茶でも飲んでるがいい』

 ……

 

 ホブゴブリンの武器は木の根っこのような武骨な棍棒。それを力任せにぶぅんぶぅん! と振り回す

 「くっ!」

 入り込む隙を窺うイザーク。

 「ホブブッフッフッフ」 

 嘲るように笑うホブゴブリン・リーダー。その棍棒でぽんぽんと己の手のひらを叩き弄ぶ。

 「ブゥゥ! ブッフゥ!」

 イザークの表情を見てか、歯を剥き威嚇する。

 『こんな時こそ落ち着け!』

 「は、はい! ふ、ふぅうぅ……」

 笑いながらブンブンと棍棒を振り回す。

 ダンジョンの魔物にも感情があるのだろうか。その眼球がイザークの表情をみて醜い顔がいやらしく歪む。目の前の人間をどういたぶって殺そうかと。

 「ブッフッフ、ブフゥ!」

 顎を突き出し威嚇するホブゴブリン。その時に威嚇を込めてか適当に振られる棍棒。その隙を見逃さず、

 「せい!」

 棍棒をかいくぐり、一気に懐に! 

 「ほう。いい踏み込みだの」

 「うむ。カンイチとの日頃の鍛錬が生きておるの」

 敷物を敷き、お茶を飲みながら戦闘観戦。ドワーフ一家も。

 「ホブゥ!」

 棍棒を慌てて引き戻す。

 が、イザークの姿はそこには無く、背後へと走り抜ける。そして、腿裏をナイフで切りつける。

 「ホォブ!」

 その後も細かくヒット&アウェイで細かく切り込むイザーク

 「う~ん。まだ少し、力が足りんか。筋までは届かんか」

 トンファーを振り回しながらカンイチ達のもとへと戻るガハルト。既に、ゴブリン、ホブゴブリンの頭を叩き割ってきたようだ。

 「じゃのぉ。ゴブリンあたりからやらせるべきだったな。フジ」

 『フン! 侮るな。見ているがいい』

 ゴブリンを屠り、喰らったクマ達も戻ることなく

 ”ぅおーーーーん!” ”ぅわーーーーん!” ”ぅをーーーーん!”

 イザークを囲み鼓舞する!

 「おう! ありがとな! クマぁ! よぉし!」

 「ほう。案外元気じゃな。イザーク君」

 「が、長くは持たんぞ。相手はダンジョンの魔物だ。少しずつだが回復してるようにも見える。出血が止まっているな」

 ガハルトの指摘通り、最初の方に付けた傷が塞がっている。

 「ま、ここはフジに任せておけばよかろう」

 真面目なイザークらしい地道な作業。的確に右手首、右膝裏、右脇を狙う。

 「ホブゥ!? ブゥ?」

 ガクリと右ひざをつくホブゴブリン・リーダー。ダメージの蓄積で肥えた身体を支える限界を超えたらしい。

 「せぇえぃ!」

 ここぞと気合いを入れナイフで突きに行くイザーク

 予測していたかのように振り返りもせず、イザークの顔も見る事無く、声の方にブンと棍棒を振り抜くホブゴブリン。

 にんまりと笑うが、手ごたえはない。

 撲殺を確信していた顔に驚愕の表情が張り付く。その目に映るもの、肉薄するイザーク。かわそうにも踏ん張りがきかない足、迎撃しようにも引き戻せない右手、そして喉に!

 

 状況をよく観察していたイザーク。棍棒が来るのを予想し、飛び込もうとする体を必死に抑えやり過ごした。棍棒が通過すると同時に、肉薄! 大型ナイフをその喉に突き立てる! 体重も乗せて!

 相手の右手に攻撃を集中させていたのも大きい。ダメージで引き戻しの打撃も思うように打てなかったのだろう。

 「ホ、ホブゥ……?」

 溶けるように消えていくホブゴブリン・リーダー。その顔に驚きの表情を張り付けたまま。こんなチビの人間にやられるとはと

 

 「ふぅ……」

 緊張の糸が切れたのだろう。どさりと尻を突くイザーク

 『うむ。よくやったな。イザーク』

 イザークに労いの言葉をかけるフジ。流石この群の頭である。

 「そ、そうでしょうか……」

 「うむ。中々泥臭くて良かったぞ。イザーク君。良く見えてるようじゃったでな」

 と、カンイチもまた声をかける

 「その辺りは、カンイチさんのお陰ですよ。鍛錬の時、しつこいほど言われましたから」

 「身になってるようで結構、結構。うん? そんなにしつこかったかの?」

 「ええ。感謝してます。カンイチさん」

 「そかの」

 「ああ! 相性の悪い相手だったが上出来だ。最後、良く止まれたな!」

 ぱん! とイザークの肩を叩くガハルト

 「は、ははは……何か嬉しい……かも」

 カンイチ、そして金の冒険者、雲の上の存在のガハルトに褒められた。悪い気はしない。

 ぐっとこぶしを握るイザーク。

 「お! 師匠、宝箱出たぞ! 今度は少し豪華だよ?」

 「ほう? そうかの? お茶箱……っと、またアールに叱られるの。ほれ、イザーク君への褒美やも知れん。開けてみるといい」

 「おっと! 先に罠と鍵のチェックだ!」

 ……

 一息入れて宝箱を開ける。

 中には一本の短剣。イザークが鞘から引き抜くと恐ろしく薄く、弧を描く美しい刀身。その繊細で薄い刃、僅かに冷気を放ち、周囲の水分が結露する。

 「わわ! き、奇麗ですねぇ……これ……ま、魔剣?」

 「うん? かもしれんな。すげえな。恐ろしく斬れそうだな。脆そうにも見えるが……」

 と、イザークの肩口から覗き込むガハルト。

 「生身の相手用じゃなぁ。首の器官をばっさりだの。それに使いこなすには更なる鍛練がいるじゃろうのぉ。骨に当てんように振らねばな」

 「……ですね」

 寂しげに鞘に納めるイザーク。

 「なに、しょんぼりしてるんじゃ? イザーク君。鍛練あるのみじゃろが!」

 「え! こ、これ俺が貰って良いの?」

 ぱぁと、表情が明るくなるイザーク。そして他のメンバーの顔を見渡す

 「いいんじゃない? 別に? 師匠の言う通り使いこなすのにはかなりの鍛錬がいるぞ?」

 「うむ。挑戦してみるとええじゃろう」

 と、ダイインドゥも頷く。

 「は、はい! ありがとうございます!」

 「お! 門が開いたぞ? 皆の衆! 先に進もうではないか! 良かったね! イザーク君!」

 「は、はい!」

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