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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
いざ! ダンジョンへ! 1
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罰当たりな奴もいるんじゃな (動く死体)

 …… 


 2日目 地下4階 日付をまたいで下層、野営地を求め攻略中


 「ふぅ……。ちぃとも代わり映えしないのぉ……どこを見ても壁じゃなぁ」

 辺りはうっすらと光るレンガ壁。狭い通路、低い天井。否でも応でも気が沈む。

 「カンイチよ……言っただろうに。ずっとこんな感じだぞ」

 「人も全然見ないのぉ」

 「例のスケルトンのお陰だろうさ。並んでた連中は今日は潜るまい。追いつかれないうちに進むぞ」

 「確かこの階にもスライムが湧いてると。油断大敵ですよ! カンイチさん!」

 「おう! そうじゃの! イザーク君」

 「飽きたかの。カンイチ?」

 「うん? 親方、こうもやることがないとのぉ」

 壁際をチョロチョロ動くオオネズミや、偶に現れるチスイトリも難なくクマ達に狩られていく。カンイチは犬達の調子を見ながらついていくのみ。魔力自体を摂取してるせいかクマ達も疲れ知らずだ。

 

 「ま、その内に忙しくもなろうさ」

 『ん? 腐臭……。臭うな。……何か居るぞ』

 「腐臭? 警戒せよう!」

 ……

 「む!?」

 フジのいう通り、カンイチの鼻にも腐敗臭が届けられる。顔をしかめる一同。

 「ああ。コイツは冒険者の成れの果てだな。元が人、それに腐肉。フジ様、クマ達を退かせてくだされ」

 『うむ。そうしよう』

 革鎧を纏った、左手の無い死体。顔は目が無く、蠟のように白い。あちこちには、乾いた血の跡が。腐っているのだろうがダンジョン故か、ウジは集ってはいない。

 糸で吊られた操り人形のように、よたよたと歩を進める。裸足のせいか音はしない

 

 「これがミスリールのいう動く死体か……」

 「くさ! くっさぁ! カンイチ君! ほら! 見ていないでさっさとぶっ放したまえ! 検証だ!」

 と、死体を指さすアールカエフ。

 アールカエフの言葉に従い、散弾銃を構え、動く死体に発砲する

 

 ”ずばぁん!”

 

 散弾を食らった屍、体表に無数の穴をあけ、淡い光と共にその場に崩れ落ちる。肉は解け、骨となり、その骨も塵に……そして、身につけていたボロボロの皮鎧、剣の鞘、布袋、下着などが残る

 「うむ! やはり【神器】! こういったモノには効果抜群だな!」

 結果に満足するアールカエフ 

 「南無……。冒険者の成れの果てと言ったが?」

 「ああ。ダンジョンで倒れた連中だな。地上まで運ばれれば、ああはならんが……余程、余裕がないとそのまま放置だ。ダンジョンの呪いで動くと言われてるがな。そして、見捨てた連中、生者を襲うと。ほれ、ドロップ品とは違い、身につけていたもの、全て残るだろう?」

 その残りかすを棒で突くガハルト。

 「何やってんじゃ?」

 「金目のものや、ギルド証があればな……。”ごそごそ” あったあった。ギルド証。こいつを持って行けば金になる」

 「そうじゃな……帰りを待ってる者もいよう……」

 「そういう事だ。ここは遊びじゃぁないからな」

 「うん! 死ぬな! イザーク君!」

 「……またですか? アール様……。その気はありませんよ……俺」

 「待ってる人も……いないけど? ね? イザーク君?」

 「うっくぅ! ア、アール様ぁ」

 「おいおい。アールよ……」

 「くっくっく。でだ、ついでだ。この動く死体にも二種類あってな。今、遭遇したのは死体そのものだ。臭いもある。で、もう一つが、ダンジョンが作り出したもの、所謂、ダンジョンモンスターだ。こちらは見た目だけだな。臭いは無い……と言われているが、遭ったことがないからな。何とも言えん」

 「ワシが【アモヒゴーナ】のダンジョンで会敵したのは臭いが無かったのぉ。見た目はチトあれじゃったがの」

 と、ダイインドゥの補足が入る。生物と魔素の違いか。

 「なるほどの……死体を動かしているのと、魔物……か?」

 「ああ。長年徘徊してればそのままスケルトンになるとも言われてるな。因みに、地上にいるのは前者だ。怪しい”呪い”を使って死体を動かす呪術師というのがいてな。そいつを倒せば配下の”動く死体”は只の屍に戻る」

 「罰当たりな奴もいるんじゃな……」

 「高位のアンデッド……リッチィやらの魔物もそういう術、使うと伝わってるよ? 『不死の軍団』ってね。もう、一回死んでるからねぇ。中央の【幸福の地】にわんさか居るそうだよ? それがいつか……溢れるといわれてるね。人を殺しながらの侵略。その死体も隊列に加わり際限なく膨れ上がる……ってね」

 アールカエフの言葉に背筋が凍る。

 人が寸土を巡り、争いによって穢した、最も安全と謂われた土地。【幸福の地】……何とも皮肉な事か。

 「……言葉もないわい」

 「ま、油断なくいこうさ。チームじゃったらまだ、”動く死体”が残こっとるかもしれんでな。カンイチよ。神器であれば供養にもなろうさ」

 「そうじゃな。で、アールよ、あんでっど? って、なんじゃ?」

 「アンデット? ああ、『死を超えたもの』なんて偉そうに言われてるが、所詮、死にぞこないのカスだなカス。自分に死なない呪いやら、魔法、反魂薬やらで、己の腐れた身体に己の捻じれた魂を括りつけてる輩だな。何が楽しいのやら」

 「……そ、そうかの? そんな奴らもいるのじゃな」

 「ま、僕も寿命を延ばそうと足掻いていたから、そんなのと似たようなものだけどね」

 「……そんな事無かろうさ」

 

 

 2日目 地下5階 日付をまたいで進行中

 

 「ふぅ。やっとこ5階じゃの。ここらで休憩するかのぉ。地図で言うと……この南角の部屋を使おうと思ってる」

 「おう! 親方に任せる。ただ歩いてるだけじゃから、そう疲れてはおらんがのぉ」

 「でも、カンイチ、ゆっくりと温かい食事が摂りたいなぁ」

 「うむ。そうせようか」

 ダイインドゥの案内でダンジョンを進む。休憩場を求めて。

 「うむ。本当にバッグ等が無いと進めんな。水場とかないのかの?」

 「だろう? 持てるだけ持って、しかも、帰りの行程まで考えないといかん」

 「う~む。この地図によると35階まで降りて行けば水場があるようじゃがな。今はどうなってるかはわからんがのぉ」

 「35階か……。遠い……遠いのぉ」

 命の水。それを得るのにはこの暗がりを35階まで降りていかねばならない。大きなマジックバッグや”収納”がないと到底、降りてはいけないだろう。

 「食料もな。カンイチ様様だな!」

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