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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
フィヤマの日々
35/520

アールカエフ

 ……


 「どれどれ、っと、”魔導コンロ”ねぇ。……今は小さいのしかないなぁ。一口の……ポットの湯を沸かすくらいのしか。それでいい?」

 ガラクタから発掘した店主と商談を始める。

 「うん? 丁度いい。ポットで湯を沸かすのに使うのじゃからな。いくらじゃ?」

 不思議そうな顔でカンイチの顔を見る店主。

 

 「キミ、随分と若く見えるけど、お爺さん? エルフにゃ見えないけど……人族だよね? それと、ここ、変な店だけど、魔道具。そこそこするよ? お金あるの?」

 「あ……。私は、カンイチと言います。これでも”銀”ランク? の冒険者……です」

 今更ながらに若者言葉に矯正。本当に今更だが。

 「ふ~ん。キミがねぇ。本当に中身は年寄?」

 柔らかく笑い、妙に納得顔の店主。何かを感じ取ったのだろうか。

 「そうかもしれませんね」

 

 ――妙な雰囲気の御仁じゃなぁ。他種族じゃといっていたの。えるふ? じゃったか。ま、嫌な気はせんがの。

 と、人間以外の”人”との遭遇を楽しむカンイチ。しかも、髪が緑とは。

 

 「ふふふ。僕の名前は、スーィレン=アールカエィフィルークトゥス――ま、エルフってとっても長いのよ。名前が。先祖の名前も入るしぃ。僕のことはアールカエフ、いや、アールとでも呼んでくれ」

 何やら店? 建物の中から四角い物体を持ってきた主人。

 「じゃぁ、魔力はどうする? 週に一回は込めないとダメなんだよ」

 「魔力――と聞くが燃料みたいなものかの?」

 「うん。そういう認識でいいよ? 魔法使いやら、魔力の多い人に頼んで入れてもらうんだよ?」

 「小耳に聞いたのじゃが、自分で込めることは?」

 確か、受付嬢らの情報によると”魔力”自体がとても高価と聞く。それが自分でできるのならばと。

 「キミは魔法使いかい? そうは見えないけどぉ? ふぅむ。ま、いいや。実験してみよう! この先っぽ。それが”魔石”だよ。そこに触れてみ」

 

 ”魔導コンロ”と言われる四角い箱を取り出し、横部を開ける。そこから、銀の棒を引き出す。先端にガーネットに似た、小豆大の赤い宝石がはめ込まれてた。

 

 「ここに触れればいいのかのぉ? ”魔力充電!”……なんてな」

 赤い石に人差し指で触れるも、何にも変化がなかった

 「ははは。お茶目だねぇ、キミぃ……ん?」

 ばつが悪そうに指を放すカンイチ。その時、

 「お? おおお! おぅ?」

 カンイチの指先から、静電気が走るように小さな雷がガーネットに吸い込まれていく。

 「おお?! すごいねぇ! うんうん。質、量ともに問題なしだ! 十分魔法使いの資質があるよ! キミぃ!」

 「い、いえ。で、何時までやれば?」

 「ほら、石が輝いてきたろ、そうしたら上がりだ。で、」

 宝石のついていた棒を元の場所に戻し、蓋を閉める。

 「こっちが上ね。で、これがスイッチ。入り、切り。やってみ?」

 ”かちり!”

 「火は出ないのかの」

 「ああ。でも、熱くなるから火傷注意ね! 金属製のポットが良いね。陶器のだと熱の伝わりが悪いからね」

 「了解した。で、お幾らですか?」

 「そうだなぁ~~。金貨、5枚 (高い!) と、言いたいところだが、魔石代でいいよ。金貨2枚ね。助けてもらったし。それにぃ、なんかキミとは、長い付き合いになりそうだし?」

 「はぁ? そうですか?」

 「うんうん。こういう勘は良く当たるんだよ。僕は。また埋まってるかもしれないから、偶に見に来てくれると嬉しいなぁ。カンイチ君」

 「はぁ。しかし、魔石って高いんですねぇ」

 「まぁねぇ。魔物狩るの大変だろう? それに、ギルドのお姉ちゃんとかお偉いさんの給料だって経費として、どかっ! と乗っかってるんだ。うん? ……そうだ! カンイチ君は”銀”だろ? ギルドに卸さないで、”魔石”僕の家に直接持ってきなよ」

 「いいのか? そんなことしたら……」

 「あ、言葉が少なかった。キミの為の魔道具を作る原料にね。もちろん横流しはしない。そりゃ、研究を兼ねるから、使うし、割れたり、消えたりするよ? ”魔石”自体、消耗品だしぃ?」

 「ワシ……私の為の? それじゃ、アールさんには旨味が無いんじゃ?」

 「成功報酬でいいよ。素材の提供なんかもしてくれると助かる。何よりも自由に研究ができる! 君の腕次第だが、ちまちま、せこせこ”魔石”使わなくて済む! そして魔力の補給も期待できる! ね!」

 「はぁ」

 良いように話が進む。

 

 ――ふむ、魔道具か……。このポットのように生活が豊かになるやもしれぬの。基本、電化製品は無いのじゃし。

 

 「うんうん。モノになれば、”特許”申請してお金も入って来るし? こんなの欲しい! というのがあれば相談に乗るよ?」

 「扇風機……風起こし器とかって作れるかの?」

 「ほう? どんなものだい」

 

 紙によくある、扇風機。もちろん、カバー無しの。

 「なるほど……スクリューの推進力で風をか。ありそうでなかったなぁ。うん」

 

 ――スクリューあるんだのぉ。ということは船外機のついた船があるんじゃな。その割には魚はちいとも売っていないのぉ

 と。思考が横路に逸れるカンイチ。日本人、やはり魚が食いたい。

 「ふむふむ。小型化し、……ブレードは鉄はダメだな。重くて燃費も悪いし、危険だわ。指が飛ぶな。木なり紙……うん! ドラゴンフライの羽なんかも良いな! 軽くしなやかだ。ふむふむ……」

 「アールさんや?」

 「うん! 造ろう! カンイチ君! 材料の手配は頼むよ! それとアールでいいよ。アールで!」

 「では、アール、それって依頼かの?」

 「は? 水臭いなぁ。カンイチ! 共同事業と言ってほしいなぁ。あ! 僕も名前で呼ばせてもらうよ?」

 「はぁ。そりゃぁ構わんがの」

 

 その後、魔石が獲れる魔物の種類やら、羽根の材料になりそうな大きなトンボの生息地、後は蛙だか、蜥蜴だかの生息地マップを渡される。どうにも共同事業者となったようだ。カンイチは素材採取係として。

 

 「僕はねぇ、魔道具で生活を豊かにすることが夢なんだよ。うん? 誰のって? もちろん僕のに決まってるじゃん。ついでにカンイチのも?」

 

 ――ずいぶんとまぁ、欲求に素直な方じゃの。が、人の為やらと言う輩に比べればずっと信用できるわい。耳に良いことしか言わないのは政治家と、詐欺師位なモノじゃからのぉ。

 こっちの世界ではまだ友人も少ないカンイチ。己の利益にもなりそうだし、了承の意を告げる。

 アールカエフとは長い付き合いになりそうだ。と。 

 

 「うんうん。君なら了承してくれると思ったよ! カンイチ! 新たな魔道具と富の為にがんばろーー!」

 「うん。アール、明後日くらいから活動を開始するから。それ以降だが?」

 両手を握られ、ブンブン上下に振られる。同盟締結だ。

 「うんうん! 期待してるよぉ! カンイチ! よぉし! 少し片づけるか! なんだい? カンイチ! 手伝いたいのかい! 歓迎しよう!」

 ま、暇だし良いかと、手伝うことにしたカンイチであった。

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