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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
いざ! ダンジョンへ! 1
344/520

此処を降りればダンジョンだ! (ダンジョンへ!)

 …… 


 ダンジョン入口の前の広場。

 わいわいと多くの人が集まる。客引きならぬ、メンバーに入ろうと交渉している者、また、臨時のメンバーを求める者、霊薬ポーションや、松明などを販売する者。ゴタゴタした人の集まりに一本の道ができる。

 誰もがカンイチのチームを見て道を空ける。売り込んでいた案内人ガイド達さえも。

 

 「さすが、ガハルトさんの強面じゃなぁ。皆、避けよる、避け寄る」

 くっくっくと笑う、カンイチ。

 

 先頭を歩くのはガハルト。ギロリギロリと、周囲を圧しながら歩く。

 ガハルトとしては威圧している訳ではないのだが、楽しみのあまり目は見開き、充血。口元はうっすらと笑う。その表情、子供なら泣き出し、高齢者ならひっくり返るかもしれない。何せ、荒事専門の冒険者が道を空けるのだから。

 

 「ほっとけ! で、親方、地図等は任せられるか?」

 「ほんむ。承ろう。ミスリールとの。古い地図もギルド漁って借りてきたで。なぁに今も昔も大して変わらんじゃろ?」

 「ほぅ。『鍛冶師ギルド』のか? 何階分まであるんだ? 親方?」

 「確か、40階くらいまでだったか? ミスリールよ?」

 「うん。42階だったと思うよ? ガハルトさん」

 「ええ! 本当ですか! 親方!」

 「そいつは驚いた……」

 と、イザーク、ガハルト。冒険者の二人が声を上げる。

 「うん? どうしたんじゃ? イザーク君? ガハルト?」

 「いやな、一応、公式の最高到達点が47階だったとな」

 「ええ、カンイチさん。そんな深い所まで売っていませんでしたよ? ギルドで売ってる地図は25階くらいだったかなぁ?」

 「ほほぅ」

 「ま、ワシらは仲間以外には見せんでなぁ。ほれ、採掘個所も載ってるでの。金回りも良いでマジックバッグ持ちも多いだろうからそれくらいには行けるのだろうよ?」

 「そうだな。ドワーフの親方衆は金持ってるものな。が、びっくりだな!」

 「だから、今回の攻略で得た情報はギルドへと持って行くが?」

 「ああ、任せるわ親方。『鍛冶師ギルド』には借りしかないでな。すこしでも返せればの」

 「ああ、カンイチの言う通りだ。是非とも俺たちの手で追加の情報を多く載せたいものよ!」

 「おうおう。期待してるぞ! はっはっはっはっは」

 ……


 「で、ガハルトよ……。何処から入るんじゃ? ダンジョンとやらは?」

 カンイチは地面にぽっかりと穴でも空いてると思ったが、そういった場所は見当たらない。

 こじんまりとした普通の家のような造りの建物が二つ並んでいる。

 「こっちの建屋だ。そっちの建物は休憩小屋だ。日中なら診療所も兼ねている」

 「ほう」

 普通の家のような造りの建物に。

 入口は開け放たれており、そこにも歩哨が二人。

 

 適当に挨拶をして中へ。建物の中は壁は一切なく、地下鉄の入り口のように石造りの祠があり、下へと続く穴が口を空ける。そこには順番待ちのチームが何組か。

 「此処を降りればダンジョンだ! 気を引き締めろよ!」

 「おう!」

 ……


 【黄金洞窟】攻略

 

 1日目 1階

 

 「ほ~~ん。結構、明るいもんじゃなぁ」

 人生初めて、人を喰うという、生きた建造物。ダンジョンというものに踏み込んだカンイチ。

 興味深くあたりに目を向ける。

 電灯やら蝋燭は一切ない。無いが、床や壁、天井までもが薄っすらと光を放っている。月明かりよりも明るい。

 「どうだ? カンイチ、イザークよ。ランタン要るか?」

 と、ガハルト。

 人族であるカンイチとイザーク以外は夜目が利く。

 「これなら大丈夫だ。が、あまり先は見えんぞ?」

 「ならいい。何か来たら知らせる」

 「大丈夫だよ師匠、オレがここにくるまで撃ち落とすから」

 何とも頼もしいものよとアーバレストを肩に担ぐミスリールを見やる。

 「どうする? ガハルト殿。しばらくは人も多かろう? 最短距離で抜けるか?」

 「そうだな。親方。宝箱も戦いも期待できんだろう。確かボスは10階だったな」

 「ふんむ。たしか”関所”と呼ばれる場所じゃったかの」

 『関所? ダンジョンにかの?」

 「うむ。カンイチよ。ボス部屋ともいわれとるの。そこを越えられねば先にはいけん」

 「ほ~~ん。関所……のぉ」

 「そんなもんだ。俺たちなら余裕だろうさ。そこまで急ごう。親方」

 「了解じゃ。こっちじゃ!」

 ……

 「それにしても……結構人が多いのぉ」

 直ぐに人の集団に追いつく。皆、同じ場所を目指しているのだろう。既に渋滞している。

 「仕方あるまいよ。カンイチ。皆、目指す場所は一緒じゃ」

 「そうじゃなぁ」

 「10階程度のボス部屋なら、順番待ちの行列ができてるだろうさ」

 「本当か? ガハルト。……面倒くさいのぉ」

 「ま、3階くらいまではこんな感じさ。そのあたりから採取組もいるから多少はバラけるだろう?」

 「了解じゃ。うん? 随分と大人しいのぉ、アールよ?」

 「はぁふぅうぃ……。ぅうん? 暇すぎて眠くなってきたよぉ。カンイチぃ。本当にここってば風がないねぇ」

 「微かにあるようじゃが?」

 「人の動きのせいだろう? はぁふぅ。眠……ぅ」

 ……

 

 「こりゃぁ、大変じゃな? ちぃとも動かんの」

 あれから、小一時間も経っただろうか。ピタリと止まった列、カンイチ達の後ろにも人が並ぶ

 手持ち無沙汰のカンイチ。クマのブラッシングを始める。アールカエフはシロに抱き着いて昼寝中だ。困り顔のシロ

 「う~む。おかしいな。こんなに進まないことは無いはずだがな……」

 言葉は穏やかだが、ぶんぶんと揺れる尻尾は苛立ちを表しているガハルト

 「なんか、湧いたのでしょうか? ガハルトさん?」

 「湧く?」

 「はい。イレギュラー湧き? でしたっけガハルトさん?」

 「ああ。稀に普段目にしない魔物が湧くことがあってな。ほれ、入口の看板に注意喚起されていただろ?」

 「ん? スライムやら、ごーれむ? やらって奴か?」

 「そそ。それですよ。カンイチさん」

 「厄介なことに、大抵、下の方の階のが湧くから強いんだわ」

 「ほ~~ん。じゃぁ、そいつがやられるまでこのままかのぉ」

 「まぁなぁ。力の無い奴は諦めてとっとと退いてくれりゃぁ良いんだがな」

 『お爺、干し肉くれ』

 「おうさ」

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