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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
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……ずっこい (【三丁目服店】にて)

 …… 


 屯所に戻ってきたカンイチ一行。

 まだ誰も戻っていないようだ。

 歩き疲れたのか暖炉の前でウトウトし始めたキキョウ。キキョウの為に革の敷物と肌掛けを出してやる。カンイチも暖炉の輻射熱でぬくぬく。キキョウの隣でこっくりこっくり。

 

 「カンイチ。そんなところで寝ると風邪ひくぞ?」

 「ん、お? お。そうじゃな、アール。ん? リンドウは?」

 「クマ達のところに行ったよ。カンイチ、行かなくていいの?」

 「そ、そうじゃな。ちと、行ってくるわ」

 

 クマ達を濡れタオルで拭き上げ、クマからブラッシング。隣でリンドウもハナを。

 「どうじゃ? 慣れたか?」

 真剣にシロにブラシを入れるリンドウに静かに問うてみる

 「楽しいよ? それに、ここにいれば絶対強くなれるし!」

 「そうか。強くなったら何すんじゃ?」

 「キキョウを守る」

 「そうじゃなぁ、お兄ちゃんじゃものなぁ」

 「おう! カンイチ兄……俺の名前とか親の事……」

 「うん? 言いたく無けりゃ言わんでええぞ。もう、わしらの子のリンドウじゃで」

 「お、おう! 俺はリンドウだ!」

 「うむ」

 そこに

 「戻りましたぁ、カンイチさん。ん? なんか良い事あったんです?」

 カンイチとリンドウ二人並んでブラッシング。そのカンイチの表情がわずかに綻んでいる様子を見て何か良い事でもあったのかと。

 「いや、何でもないさ。イザーク君。で、そちらこそ何か面白い話は聞けたかのぉ」

 ……

 

 犬と狼、馬達の世話をイザークと熟すカンイチ。リンドウも手伝う。

 馬も広い牧場で悠々できて幸せそうだ。

 「それにしても、親方達、さっぱり見かけないが?」

 「大方、ここでも”宴会”でしょ? ギルドに情報収集行ってるでしょうから?」

 「うん? 行かなくていいのか? イザーク君は?」

 「ま、招待されたらでしょうか? は、ははは……」

 「そうそう! 新たな褌を作ってもらう店、見つけたで! 明日にでもガハルトと行くとええ。話はついてるで。ダンジョン潜る前に欲しかろう?」

 「了解です! そうですねぇ。大分、くたびれてきましたものね。褌」

 「うむ。新しい褌を締めれば気合も入ろうというものぞ! イザーク君!」

 「そんなもんです?」

 「ふぅ……」

 若造には解るまいと溜息を着くカンイチ爺さん

 「な、なんです? カンイチさん!?」

 

 ……

 

 それから一週間。褌の完成待ちと、ダンジョンの情報収集に充てる。ガハルトもアカジンとの毎日の気の入った鍛錬のお陰か『早く潜ろう!』という言葉も出ず、充実した日々を送る。町外への遠征の話も無し。

 ”十手”に関しては特許が受理され、正式にマータイ帝国・アマナシャーゴ方面軍の正式採用の武具となる。とくに体術に重きを置くアカマチ隊とミハイ隊(提督親衛隊)に重宝されることとなる

 

 そして今日。待ちに待った褌の引き渡し日。

 注文したメンバー全員で『三丁目服店』を訪れ検分だ。ドワーフ一家はいない。彼らは独自の文化・様式があるようだ。

 ……

 

 「うむ! 素晴らしい出来じゃな!」

 カンイチも出来立ての越中を手に取り、縫い目等を検分中だ。十分満足のいくものだったのだろう

 「そりゃぁ、あたしゃ、これで長い間、食ってるのだし? 単純な造りだから楽勝だよ!」

 と、大きな胸を張る女将さん。

 「うんうん。よい布じゃな。これは良い。ダンジョンに潜ってる間、もう少し作ってもらうか……で、ガハルト。主は今回もピンクか!」

 「何色でもよかろうが!」

 「ふん! ……アカマチの御仁と一緒じゃぞ?」

 「……ぅぬ!」

 「イザーク君も白じゃないのじゃな……。この! 軟派者め!」

 「え、ええ?」

 「またやってるのかい? カンイチ。ふぅ……。白は少数派だぞ? 下着くらいお洒落したいだろうに?」

 「う、ぐぅ!」

 と、毎度毎度のカンイチ爺さん。少数派と言われて意気消沈

 「そのことだけどね、カンイチさん」

 「ん? ちゃんと前金で払うが?」

 「いや、ウチも特許の権利買ってねぇ。褌を売り出すことにしたんだわ」

 と、女将さん。

 「そ、そりゃぁ……。世話かけたの……その分の費用、ワシの方でだそうか?」

 「いやいや、こっちも商売さね。でねぇ……」

 「カンイチさん、『考案者カンイチ直伝!』 とか、『えっちゅう』とかの名称、使ってもいい? ほら、ウチ、後発だから。なんか、こう、目立つの欲しくて。ちゃんと正しい着け方も紹介するわ」

 「うん? そんな事か? 構わんぞ? トキさんや。勝手にやってもらっての」

 「ありがとぅ! 使い捨ての安い生地で診療所の患者用のも作ることにしてるの!」

 「うむ。そりゃぁ、いい事だと思う。そうじゃ、こういった靴は作れんかの?」

 「見せて?」

 「……少々年季が入ってるで……アール。”洗浄”を……」

 「変なところで気を使うんだな。カンイチは……ま、いいよ。”洗浄”っと!」

 「は? ……エ、エルフ様?」

 今更ながらだが、アールカエフがハイエルフだと知れる

 「あれ? 知らなかった? ま、よろしく。これで良いかい? カンイチ?」

 「それで、これ……じゃが?」

 少々、小汚い”地下足袋”を渡されるまま手にするトキ。未だにアールカエフに驚き、放心中だ。

 が、さすが裁縫を生業にしているだけある。布製の地下足袋を手にした瞬間、目の色が変わる。隅々まで、ひっくり返して見たり。縫い目、底に張ってある革、樹脂等を触り、確かめる

 

 「これは……。良く出来てるわね……ユーノさんて本当に腕がいいわね……。私も負けてられないわ!」

 「どれ。私にも見せてご覧。……。……うむうむ。樹脂と……この革は王蛙キングフロックだねぇ。なるほどねぇ。防水と刺突に優れた良い靴だねぇ。この金具も面白い」

 「む……。そういえばカエルの革が無いの……」

 フィヤマでは必要な時に好きなだけ狩れたので素材としては持っていない。肉も人気だった。

 「う~~ん。もう少し暖かくなるとこの辺りでも取れるよ。【剣の山脈】の麓に広がる湿原で」

 「うむ……狙ってみるか……ま、ダンジョンにどれだけ居るかわからんが……」

 「こっちで革屋の在庫聞いてみようか? この辺りも冒険者は沢山いるからねぇ。在庫もあるだろさ」

 「それもそうじゃな。何も自分で獲らんでも」

 「そうよな。靴は欲しいから頼むとするか。もう、これ以外は履けぬ」

 と、地下足袋を偉く気に入っているガハルト。何も履いていないような自由度のある靴だ。良く地を掴む

 「俺も!」

 と、イザーク

 「俺も!」

 と、リンドウも続く

 「うん? リンドウは大きくなったらのぉ。今、成長期じゃで、地下足袋ができあがるころには大きくなって足が入らんぞ?」

 「そう? じゃ、しょうがないかぁ。ま、俺、裸足でも構わないけど?」

 と、残念ながらも、最近までほぼ裸足だったリンドウ

 今は既製品の布の靴。底は滑り止めの樹脂が塗ってあるものだ

 「ふふふ。そうね。直ぐに入らなくなっちゃうからね。それじゃ、皆さん、寸法とらせて。あ、そうそう! 母さん!」

 「ああ、ガハルトさん、一応、上がってるよ。当ててみて」

 と、店の奥から真新しい”ツナギ”をだす女将さん。色はダークグレー一色。ダンジョンを意識したものか

 「要望通り、ここに革を張ったよ。少し厚ぼったいがね」

 「うむ。要望通りだ」

 「あとこっちは私なりに工夫してみたんだが。肩のあたりを余裕を持たせて……」

 と、女将さんから工夫ヶ所の説明を大人しく聞き入るガハルト。カンイチも隣に行って聞く。

 その工夫。長年、服を作って来た女将さんなりの理にかなうものだ。

 「了解した。では早速試着してみよう!」

 従来の物を模倣したツナギ、女将さんの新しい機能を取り入れたツナギの両方をもって試着室に向かうガハルト。その背に、

 「……何時の間に。ガハルトまだ予備があろう?」

 「いや、ディアン殿に頼んであちこち当て布してもらってるんだ。ほれ、俺は接近戦だろ? どうしてもな」

 「そうか? わしも作ってもらおうかのぉ」

 ……

 

 「うむ! 女将さん、改良型の方をあと5着。内、3着を緑の斑模様に」

 肩を回しながら新しいツナギで登場。ガハルトの表情がツナギの出来の良さを表している。

 「はい。毎度どうも!」

 「俺も作ってもらおうかな……ねぇ、カンイチさん?」

 と、カンイチに視線を向けると……

 「うん?」

 すでにトキに寸法を採ってもらっているカンイチ。抜け駆けだ。

 「……ずっこい」

 「ううん? 一緒に寸法採ってなかったのかよ。イザーク君?」

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