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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
338/520

それではよろしく頼むの (褌をもとめて……)

 ……


 ”褌”凄惨の拠点、第二の『ユーノ服店』を得るためにわざわざ、商人ギルドに顔を出したカンイチ。

 そこで紹介された『三丁目仕立て屋』にやってきた。


 「……で、それはどんなのですか? カンイチさん? 今、身につけています?」

 と、迫るご婦人方。実際の”装着”具合をみようという腹だ。

 カンイチもまた仕方なし、百聞は一見に如かずと、ズボンを下ろそうと手を掛ける

 

 「えい!」

 

 と、応じたのはアールカエフ。

 そしてストンと降ろされたリンドウのズボン。ディアンが作った褌があらわる。

 「何すんだよ! アール母ちゃん!」

 「お兄ぃ! ぱんついっちょ! ひゃはは!」

 「おいおい、アールよ……」

 女将さんだけならともかく別嬪さんが気に入らないのか、リンドウを生贄に差し出すアールカエフ

 

 「どぅ? 参考にならないかい? これじゃ?」

 とリンドウの褌姿を披露する。 

 「あらあら。くすくす。なるほど。こうやって着けるのね。……前後ろ逆だわ。ははは」

 「あら、まぁ! ほんとうだねぇ。ちゃんと教えてもらわないとねぇ」

 「ぎゃ、逆じゃと? ……前垂れが尻に行ってるのかの?」

 「ええ。その辺も錯綜してるのかしら。ほら、獣人さんだと尻尾あるし」

 「ユーノさんには尻尾出す穴、別にこさえてもらってるぞ?」

 「うん、うん。良く出来てるわねぇ。なるほど……」

 ガハルトの褌を参考に尻尾を出す加工もしてある。ふんふんと尻尾を振るリンドウ。

 その辺りも丁寧に観察する母娘。

 「ディアン母ちゃんに作ってもらったんだぞ!」

 と、褌一丁で胸を張るリンドウ。中々に大物だ。

 カンイチも、そうじゃ! と”収納”から、ユーノさんに貰った特許の申請書の写しの束を引っ張り出し、女将さんと娘さんに見せる。

 「うんうん。これは仕様書ねぇ。どれどれ……。ふぅ~ん。基準の大きさがあるのねぇ」

 うむうむと大きく頷くカンイチ。越中じゃ! と。が、さすがに体が大きい獣人族には別途大きなモノが必要と付け足す。

 仕様書にはちゃんと着け方も載っている。見落としたのか、反対の方が都合が良いのかはわからない。が、カンイチに言わせば邪道だと。

 「なるほどぉ。診療所かぁ。納得」

 丁寧に読み進める女将と娘。

 「うん。カンイチさんの言う通り、綿が良いわねぇ。これは。なるべく刺激が無いものを……」

 何やら作業が始まったらしい。女将さんは奥に布地を取りに。娘さんは仕様書をさらに読み熟していく。

 

 「なぁ、アール母ちゃん、もうズボンはいていいか?」

 「うん。ご苦労様。リンドウ。紐、結べるかい?」

 「おう! 大丈夫だ! アール母ちゃん」

 「そうだ、私、トキね。よろしく!」

 「うむ。改めて、カンイチじゃ。でじゃ……」

 恥ずかしながらも、少々くたびれた褌(もちろん洗濯済み)をとりだし、商談。

 とりあえず反物一本分の試作を依頼。アールカエフ、子供達も違う色の生地で試作発注。ティーターも一口乗るようだ。

 白じゃないのは気に食わない。文句も言いたいが、多勢に無勢……口を閉じるカンイチ。

 

 本家の、『ユーノ服店』の仕事、丁寧に縫製された褌を見て驚く親子。親子が入手した『ツナー中央服店』の物は並べて見れば縫製が甘い粗悪品と容易にわかる。これではそう長く使うことはできないだろう。

 

 「それではよろしく頼むの」

 後は任せたと店を出ようと……

 「うぅん? 素材、染も元々、色々あるみたいね……ユーノさんのところも?」

 と、仕様書の中に書かれている素材の一覧表に気づいたようだ。

 「うん? ああ、カンイチの信念みたいな? まぁ、綿の白用意すれば文句ないよ? 後は好きにやってもらって? ねぇ? カンイチ?」

 「……納得いかんがの。ま、わしは白さえあればええで。お願いする」

 「ふふふ。了解! お任せくださいませ!」

 ……

 

 注文を終え、店の外に。

 仕様書は預けて来た。完成は一週間。その間に仲間も来るように差し向けるから対応して欲しいと申し送りをしておく。

 

 「よぉし! これで褌問題も解消じゃな! 楽しみじゃぁなぁ!」

 これでダンジョンに潜る時には新たな褌で。気もより引き締まろうというもの

 「そうだ! カンイチ! あの青トゥローに襲われてた布商人の荷物、買い取ってもらえばよかったね?」

 「うむ……わしも考えたが、恐らく知り合いじゃろ? 何となくのぉ……」

 服屋と布屋だ。この町に向かっていたのだろうし。無関係ということも無いだろう。人死にも出ている。少々気が引ける

 「ふぅん。関係ないと思うけどねぇ。名前書いてないだろ? ま、良いでしょ。じゃぁ、お昼?」

 「まだ早かろう? 串焼きだって摘まんだじゃろうよ? 少し町を見て回ろうか。人も多いで、掏摸なんかにも注意じゃぞ」

 ……


 【アロクゴーナ】にあるレストランの名は『リンギーネ』。路地を入った場所にひっそりと。隠れ家的レストランといった外見。が、中は別物。ここも景観を損ねぬように城壁のように連なった建物、10数軒分が中で繋がっており、大きなレストランとなっていた。宿泊も可能。所謂、オーベルジュだ。

 

 「これはこれは。よくお出で下さいました。アールカエフ様。この店を預かる支配人のダンジェロと申します」

 恭しく腰を折るダンジェロ。支配人自らの挨拶、VIP待遇もいつもの風景。

 「やぁ! お世話になるよ? ダンジェロ殿! 早速、昼食を摂りたいのだけれども?」

 「はい。ご案内させていただきます! アールカエフ様。ところで……不躾ではございますが、途中仕留めてきた獲物や、毛長猪の在庫、ありませんでしょうか? 余剰があれば是非に……」

 ギルドの中ではすっかり珍しい獲物を大量に持ち込む一団として浸透しているらしい。

 『うむ? 疑いはせぬが、ここの料理の腕次第……と言ったところか? ダンジェロとやら』

 意味深にニヤリと笑うフジ。

 そのフジを凝視する支配人。今にも目玉が転がり落ちそうだ。これもいつもの風景

 

 「は、ははっ! お任せくださいませ! 魔獣様!」

 『うむ。期待しておるぞ』

 鷹揚に頷くフジ

 「まったく……」

 「まぁ、良いじゃない。当分世話にもなるんだし? ダンジョンに挑戦する間、この町は僕たちの拠点になるんだろう? 従って付き合いも長くなろうってものだよ?」

 『うむ。お爺! エルフ殿の言うとおりだな。――が! ここは食事処、納得のいく味を提供してもらわんことにはな。わかっているであろう? タンジェロとやら?」

 「ははっ――! もちろんでございますとも! こちらとて望むところ! 必ずや満足していただきますとも! 我が店の自慢の料理! ご賞味くださいませ!」

 『うむ! よく言った!』

 「うむ! 楽しませてもらおう! ねぇ、カンイチ!」

 「……やれやれ」

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