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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
334/520

うむ。いい子じゃな (街を行く)

 …… 


 ティーターの言う通り、町の中心部に近づくにつれて様子も何だかどんよりしたものに。多くの冒険者たち、そして路上に広げる小物商。そのような様子で雑多にみえてくる。

 道まで溢れた露店、ダンジョンの産出品だろうか、一目では何かわからないもの――如何わしい品が並ぶ。

 

 「よぉ、兄ちゃん安くしておくよぉ!」

 こちらは怪しい金属塊。さすがにドワーフがいるせいかカンイチ達には声をかけてこない。ということはおそらく偽物だろう

 

 「製鉄屑など売りおって!」 

 と、ダイインドゥが吐き捨てる。

 「それにしても物があふれているのぉ」

 と、カンイチは上機嫌。楽しそうに露店を覗く。

 浮かれるカンイチの前にアールカエフが立ちふさがる

 「はいはい。気持ちは分かるけど先にお宿だ!」

 「お、おう、そうじゃな」

 そのアールカエフの背後から

 『その前に串焼きだな!』

 「俺も食う! 串焼き!」

 「キキョウもぉ! くしやきぃ!」

 「……了解じゃ」

 ……

 

 「それにしても……薄汚い町だなぁ。冒険者が集まると汚くなるのかね? くっさ! ここに滞在するのかぁ、何かげんなり?」

 「声でか! アール母ちゃん、皆に聞こえるぞ? 喧嘩売ってる?」

 リンドウの頭を撫でながら、

 「ええ? 売ってないし? これを良しとしてるんだから、もう既に何も感じないだろ? 脳味噌も同じように腐れてるんだろう?」

 「よくわかんないけど……。それ、悪口だろ? 絶対!」

 と、幼いリンドウに突っ込まれるアールカエフ。

 「そんな事無いよ? ほら、誰も文句言わないだろう? 自覚してるのだよ? リンドウ。こうなっちゃだめだぞ?」

 「? 良く解んないよ?」

 「おいいおい、アールよ。そんなもの真似しちゃいかんぞリンドウ。命がいくらあっても足りんぞ」

 「おう! それならわかるよ! カンイチ兄!」

 「うむ。いい子じゃな」

 「ええ? なんで???」

 「スィーレン様……」

 なんと不憫総な。という目をアールカエフに向けるティーター。

 「まぁ、スィーレン様だし? 子供でも分かってますよ? 騒ぎ、起こさないでくださいね! 指ポロも無しでお願いします!」

 と、ダリオン。

 

 この場にいるのは冒険者。腕っぷしには自信がある。ぎろりと睨んだり、突っかかろうとするも、二人の、しかも帝国の紋章を背負ったエルフにたじろぐ。それでもという連中は仲間が腕を引く。

 随分と高値で売られている喧嘩だと。すっぽりとフードを被っている当のアールカエフはハイエルフ。さらに、高価特売だが。そんな事は知らんと完全に無視する。

 

 「ここが『冒険者ギルド』ですね。ダンジョンの申請もここで行われます」

 「申請?」

 「申請と言っても、未成年以上、名前、種族、従魔の有無の確認程度ですよ。フジ様は特別なので、こっちで適当に申請しておきますね」

 「世話を掛ける……ティーターさん」

 「いえ、で、こちらが……まぁ、冒険者の町ならではといいましょうか? 多くの娼館やら賭博場があります。あまり関係ありませんよね?」

 「わしはの」

 と、隣を歩くイザーク君に視線を向けるカンイチ

 「え? ええぇ? お、俺だって関係無いですって! 変な目で見ないでください!」

 慌てて否定するイザーク君

 「いやの、若いのだから?」

 と、セクハラ爺さん降臨。にやりと笑うカンイチ。

 「カンイチさんだって!」

 「ううん? 別に悪いことでもなかろうよ? イザーク君?」

 「そ、そうですけどぉ……」

 「うんうん。気を付けるんだぞ? イザーク君。そういった場所じゃぁ変な病気も流行ってるだろうし? 大事なところが腐って、ぽろっと落ちちゃっても知らないぞ? うん? バリバリ君なら新しいの生えてくるかもしれないな? ……実験するか! イザーク君!」

 「ぇ……嫌ですよぉ。前提で腐って落ちるのでしょう……? ふぅ、肝に銘じます……。アール様」

 「まぁ、大体の処はアールの言う通りじゃな。死病もあるでな。そうでなくとも、有り金全部ひん剥かれて、裏路地にポイ! なんてのもあろう。近寄らないに越したことは無かろうよ? イザーク君。ふふふ」

 「はいぃ……。ですねぇ……」

 「それにしても……間近で見ると本当にデカいのぉ。この中にダンジョンがのぉ……」

 第一隔壁を見上げるカンイチ一行

 ダンジョンの出入り口を囲むように設置された防壁。形状は上りづらく死角の無いように円筒形になっている。内側は爪等が掛けられないように滑らかに。外側の壁面には上る階段。途中には詰所だろうか、小屋が生えている。

 

 「うわぁ! 高い! 登ってみたいなぁ!」

 「ビビッて、おしっこ漏らしちゃうぞ? リンドウ?」

 「漏らさないし! 怖くねぇし! これくらいの高さ! アール母ちゃん!」

 「じゃぁ、落ちて死んじゃうぞ? リンドウ?」

 「落ちねぇし!」

 何をやってんじゃかと呆れ顔のカンイチ。

 「でも、これ登って来る魔物とかって……こわ」

 と、イザーク

 「まぁ、上って来るのは手足に吸盤が付いてるのやら、ヒルや、ナメクジ、鳥系くらいだろう? 上に乗っかってる大弓バリスタでどうにかなるだろうさ」

 と、ガハルト。確かに城壁の頭頂部、内側に向けられた大弓が数基見ることができる。

 

 「一応、出入り口自体は小さいから巨大な魔物は出てこない……と言うのが通説ですが、ダンジョンですから楽観はできませんね。それにこの城壁を破壊できる力を持った魔物だっているかもしれませんし」

 とダリオン。

 「過去数回、溢れたことがあるそうですよ。その殆どが小規模だったので大した被害は出なかったと伝わっております。が、中には大きな被害も。『ダンジョンは”溢れ”るもの』、危険なものとそう認識させられました。この設備、壁等も”溢れ”る度に補強、対策されてきました。それから各ダンジョンには何某かの備えがされています。野山にある未発見のダンジョンはその限りではありませんが」

 と、ティーター

 「なるほどのぉ。かといって放置は……せんわなぁ」

 「ええ、有意義なものがたくさん取れますしね。ダンジョンも手を変え、品を変えて人を呼び込むでしょう」

 「それに、ある程度入った方が良いとも伝わっております。”溢れ”も人を求めてわざわざ……なんて説もありますし?」

 「そう聞くと本当に生きている建造物じゃぁのぉ」

 「そうですねぇ。もう少し先に軍の屯所がありますので。今日はゆっくりしてくださいませ」

 「じゃぁ、オヤツの串焼き買っていこう!」

 「オヤツかよ……アールよ」

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