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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
外国へ!
333/520

なぜ、俺に聞かん? カンイチ? (アロクゴーナの町)

 …… 


 ガハルトの傷も霊薬やアールカエフの操る魔法で癒え、盗賊に襲撃されても何ら問題ないレベルに回復

 【アティゴナ】の町を出て二週間。その間も農村に寄って野菜を仕入れたり、ついでの害獣駆除。街道わきで採取をしたりと充実した時を過ごす。

 アマナシャーゴ国は治安がいいのか、盗賊に襲われることも無く順調に進む。帝国への玄関口、商人のキャラバン隊も沢山の腕利きの冒険者が護衛を請け負ってるせいだろうか。

 【剣の山脈】への備えにも力を入れていることが治安にも貢献してるのだろう。

 

 そして……

 「うわわわぁ! 大きい! すげぇ!」

 器用に幌馬車の屋根の上に乗っかっていたリンドウが声を上げる。フジを真似てか最近のリンドウのお気に入りの場所だ。見晴らしも良い。

 『これ、暴れるな。落ちるぞ』

 と、隣で寝そべっているフジに窘められる

 「うむ。今まで見て来た構造物、最大じゃな。立派な壁じゃの! お城か? 見事なもんじゃ」

 カンイチも目を細める。

 

 無理もない。前方に高さ20mはあろう壁に囲まれた巨大な町が姿を現す。【アロクゴーナ】に到着したようだ。そびえる鉄の門。が、大門は閉じており、横の小さい鉄門が開いている。そこで入町審査が行われているのだろう。人の列が伸びる。

 

 「うむ? 何で外側の壁に階段が付いておるんじゃ?」

 カンイチの指摘の通り、城壁には手すりのある梯子が幾筋も。これでは上って来いと言ってるようなモノだ。

 「ええ、カンイチ様、この城壁は”内側の脅威”に備えたものとなっています。『ダンジョンが溢れる』時の備えとして」

 「ほぉう? ダンジョンも溢れるのかのぉ?」

 

 【剣の山脈】から溢れるとは散々聞かされてきたが、まさかダンジョンもと驚くカンイチ。

 

 「はい。ダンジョンの入り口近くにも、もう一枚同様の壁がありますよ。まずその壁を越えてくることは無いでしょうが……」

 「ダンジョンも大変じゃな……。ということは……閉められた時……中の住民は……?」

 溢れた時。ダンジョンの備えと聞く壁。ということは、逃げ遅れた連中の運命は。最小限の犠牲、ダンジョンと共に生きるということなのだろうか。その辺りがどうしても心配になるカンイチ。

 

 「じゃぁ、宿は鍛冶師ギルドで紹介してもらうという事でええか? カンイチ?」

 「そうさなぁ。頼めるか? 親方」

 滞在先を相談していると、ティーターが一歩前に。

 「カンイチ様、私どもで手配していますが?」

 「……う~ん。帝国に世話になるのものぉ」

 「良いんじゃない? 別に? 子守だって派遣してくれてるのだし?」

 「おいおい、アールよ」

 「はい。是非に。軍の宿舎の方に用意しております。牧場も軍のものを使えるようにしておりますし。広くていいですよ。馬番も沢山いますし」

 「軍……か。ええのか? 極秘じゃろ?」

 「? 別にみられて困るものも無いですし? 情報収集の後、潜られるのでしょう?」

 「いいじゃん。世話になろうさ? カンイチ。広いっていうし? 気に入らなかったら演習場のわきに野営セット並べればいいじゃん?」

 「……そうじゃな。では、ティーターさん、世話になります」

 「はい!」


 ここでもティーター、ダリオンの特権発動。

 貴族用の門を待ち時間、審査なしで通り抜ける。

 

 「うわぁ! すげぇ! 壁に家が生えてるぞ! イザーク兄!」

 リンドウの指さす方。城壁の内側、壁面に確かに家のようなものが張り付き等間隔でずらっと並んでいる。

 「本当だ。それにしても随分と住みづらそうな家ですねぇ」

 とイザーク。

 「いえ、あれは『最後の避難所』です。万が一ダンジョンが溢れた場合、入口の第一隔壁が防いでる間は第二隔壁、先ほどの門も開いていますが、第一隔壁を抜かれた場合、強制的に第二隔壁も閉じられます。その際に逃げ込む唯一の場所です。後は、状況を見ながら屋根から救出となるのです」

 と、ティーターが説明。

 「ですが、半分近くの避難所が、帝国やらの馬鹿貴族が別荘だと不法占拠していますけどね」

 と、ダリオンが忌々しく吐き捨てる

 「困った連中だね。いっそのこと叩き落としてやれば?」

 「い、いえ、スィーレン様、一応は避難場ですし?」

 「ええ。それにさぞかし物資も豊富に蓄えられている事でしょう? ですが、その時に避難してくる人々を閉め出せば……スィーレン様のおっしゃるように下に叩き落とすのもアリですね」

 「うんうん。賛成! いいと思うよ? ほんと、貴族バカと煙は高いところが好きだねぇ」 

 「ほんと、馬鹿らしいなぁ。で、いつからダンジョンに潜るんだ? カンイチ?」

 と、ディアン。

 「そうさなぁ、情報集めてからか? のぉ、親方?」

 「うむ。ギルドに挨拶もしたいでなぁ。1週間くらい先か……のぉ」

 「なぜ、俺に聞かん? カンイチ?」

 ブスッとした表情で詰め寄るガハルト。くすくす笑うアールカエフとイザーク

 「さて? どうせ明日からというのじゃろ、ガハルトは」

 「さすがにそうは言わんぞ? ダンジョンに入るのには申請等もあるからな」

 「お? おお? ちゃんとしておるの。じゃ、そっち方面は任せるで。情報収集と併せてお願いする」

 「おう! 任せておけ!」 

 ……

 

 「本当に”備え”に重点を置いた町だね」

 町の中を中心に向かって行くカンイチ一行。

 中心部と思われるところにそびえる城壁。塔のようにも見える地の城壁が第一隔壁。

 第一隔壁を中心に波紋のように綺麗に並ぶ家。家々の隙間も埋められあたかも城壁のようだ。

 中央を走る大通りも直線ではなく何カ所か屈折している。

 

 「この作りじゃと、外周部の方が一等地なんじゃろうのぉ。外に逃げやすいで」

 「はい。中心部は警備軍の屯所。ギルド、冒険者の利用する宿屋、それと、産出品の仲買人、商店等が密集していますよ。少々治安が悪いですけど」

 と、ティーター

 「ほう。面白いのぉ。ダンジョンのある町か」

 興味津々のカンイチ。あちこちに視線を送る

 「とうとうアロクゴーナの町かぁ! ダンジョンかぁ。凄いなぁ」

 と、歓声を上げるイザーク。

 「おいおい、イザークよ。まだ町に入ったばかりだぞ?」

 「だって、ガハルトさん……まさか来れるとは思わなかったなぁ。なんか、泣きそう?」

 「まぁ、わからぬでもないがな。はっはっは」

 「よかったね! イザーク君!」

 「は、はい、アール様! やっぱ、ダンジョン、憧れでしたし、俺!」

 「そう? 調子こいてコロッと死んじゃわないようにね!」

 「は? はいぃ……りょうかいですぅ……」

 「おい」

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